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第0-3回 初回相談

初回相談の進め方
おひとりさま・おふたりさま終活相談の面談実務

相談受付から面談冒頭説明・本人意思確認・業務カテゴリ振り分け・受任可否判断・他士業連携・面談記録まで、初回面談の全フローを解説します。

対象:新人行政書士読了目安:約25分ケーススタディ7例・確認テスト15問

1. この回の到達目標

  • 初回相談の流れを組み立てられる 予約受付〜事前確認〜ヒアリング〜整理〜次回案内まで進行できる
  • 本人から直接意思を確認できる 親族や支援者の話に流されず、本人の言葉を確認・記録できる
  • 相談内容を業務カテゴリへ振り分けられる 遺言・死後事務委任・任意後見・財産管理・見守り・相続・墓じまい・身元保証等へ分類できる
  • 受任可否を判断できる 行政書士として関与できる範囲・他士業連携すべき範囲・受任保留すべき範囲を判断できる
  • 初回相談で結論を急がない 税務・登記・医療・紛争・ペット飼育引受など、初回で断定してはいけない事項を避けられる
  • 次回までの準備資料を案内できる 戸籍・不動産資料・預貯金・保険証券・医療介護資料等を具体的に案内できる
  • 面談記録を残せる 本人発言・説明内容・未確認事項・次回宿題・他士業連携の必要性を記録できる
  • 金銭トラブルを予防できる 初回相談料・実費・預り金の区別を説明し、必要時には預り証を発行できる
  • 成年後見申立ての限界を説明できる 行政書士は申立書類の作成そのものを業として行えず、事実整理・添付資料収集・基礎資料整理にとどまることを説明できる
前回(0-2)との接続 前回は行政書士が関与できる業務と他士業へ連携すべき業務の線引きを学びました。今回はその線引きを前提に、相談者の不安・希望を整理し、どの業務につなげるかを判断します。

2. 業務が必要になる実務場面

終活相談では、相談者自身も何を頼めばよいか分かっていないことが多くあります。代表的な相談フレーズと、実務上の論点・つながる業務を整理します。

  • 死後のことが不安 → 死後事務委任契約、葬儀・納骨支援、住居整理支援
  • 財産を誰に渡すか決めたい(推定相続人・遺留分・税務) → 遺言書作成支援、相続人調査、財産目録作成
  • 認知症が不安(判断能力低下後の代理・財産管理) → 任意後見契約、財産管理等委任契約、見守り契約
  • 親族に頼れない(緊急連絡・身元保証・入院) → 身元保証関連支援、入院・施設入所支援、死後事務委任
  • 家をどうするか不安(空き家・売却・登記・税務) → 空き家・不動産処分支援、司法書士・税理士・宅建業者連携
  • 墓や納骨が不安 → 墓じまい・改葬許可申請支援、永代供養先選定支援
  • ペットを残すのが不安(飼育引受先・飼育費・保護団体) → ペットのための遺言・信託等作成支援、飼育引受先との合意書作成支援
初回相談の目的 初回相談の目的は、すぐに契約を取ることではありません。相談者の不安を実務上の課題へ分解し、対応順序を設計することです。

3. 基本知識:初回相談の考え方

3-1. 初回相談は「契約前の診断」である

図解1|初回相談の5つの目的

  1. 相談者が誰かを確認する(本人か、家族・支援者か。利益相反がないかを確認)
  2. 本人の意思を確認する(親族や支援者の意向が本人の意思とは限らない)
  3. 相談内容を整理する(生活・判断能力・財産承継・死後・医療・住まい・ペット等の7分類で整理)
  4. 行政書士が対応できる範囲か判断する(業務範囲・他士業連携・受任保留を判断)
  5. 次回までの準備資料を案内する(戸籍・財産・医療資料・ペット情報等)

3-2. 初回相談で最も重要なのは「本人の発言」

遺言・任意後見・死後事務委任・財産管理・ペットのための遺言等はすべて本人の意思に基づきます。誰が同席していても必ず本人に直接確認します。

本人発言の記録例(抜粋)
  • 「兄弟には頼りたくありません。葬儀と納骨は友人のAさんにお願いしたいです。」
  • 「甥には財産を渡したくありません。世話をしてくれたBさんに残したいです。」
  • 「延命治療は望みません。ただ、痛みを取る治療はしてほしいです。」
  • 「猫のミーを保健所に連れて行かれるのは絶対に嫌です。団体か友人に頼みたいです。」

3-3. 初回相談で安易に結論を出してはいけない事項

  • 「遺言だけ作れば大丈夫」→ 死後事務・税務・登記・葬儀・納骨が残る可能性。課題を分解して必要業務を判断
  • 「相続税はかからないと思います」→ 税務判断は税理士領域。財産資料整理後に税理士へ確認
  • 「親族には知らせなくて大丈夫」→ 死後実務上、親族連絡が必要または強く求められる場面が多い。通知方針を慎重に整理
  • 「病院の同意も代わりにできます」→ 包括的代理権は認められていない。医療意思表示文書と医療機関連携を検討
  • 「相続登記もこちらでできます」→ 登記申請代理は司法書士領域。司法書士へ連携
  • 「揉めてもこちらでまとめます」→ 紛争交渉は弁護士領域。弁護士へ連携
  • 「ペットはこちらで預かります」→ 第一種動物取扱業(保管業等)に該当し得る。飼育引受先との合意書作成・遺言・信託等の設計支援に限定
  • 「成年後見の申立ても全部こちらでできます」→ 申立書類の作成そのものを業として行えない。事実整理・添付資料収集支援にとどめ、申立書作成・提出代理は司法書士・弁護士へ

4. 実務の進め方(初回相談の標準フロー)

図解2|初回相談の標準フロー
① 相談受付
電話・メール・フォーム受付。相談者名・本人との関係・相談概要・緊急性・同席予定者・紛争有無・ペット有無・成年後見申立の有無を確認
② 事前準備
相談票・ヒアリングシート・本人確認書類案内・職域説明資料・他士業紹介先候補・資料預り証・個人情報説明・ペット関連確認欄を準備
③ 面談冒頭説明
業務範囲の説明(行政書士が書類作成・手続支援として関与できる範囲と、弁護士・司法書士・税理士等へつなぐ範囲)、ペット直接飼育・申立書類作成を業として行わないことの説明
④ ヒアリング
本人意思確認 → 家族・親族関係 → 生活・医療介護状況 → 財産・住まい概要 → 死後の希望 → ペット・デジタル・家財・墓の確認
⑤ 整理・判断
業務カテゴリ分類 → 行政書士対応範囲・他士業連携範囲の説明 → 受任可否の内部検討 → 親族通知方針整理
⑥ 次回案内
準備資料一覧を案内。実費を預かった場合は預り証を発行。面談当日中に面談記録を作成
⑦ 見積・提案
資料確認後、業務内容・報酬・実費・行政書士が行わない範囲を書面で確認してから受任

受付時に確認すべき主な項目

  • 相談者と本人の関係 本人意思確認の要否・利益相反リスク
  • 緊急性(入院・施設入所・判断能力低下・死亡直前等) 対応優先度の判断
  • 同席予定者・紛争の有無 利益相反確認・弁護士連携の要否
  • ペットの有無 飼育引受先・合意書・遺言等の検討準備
  • 成年後見申立ての有無 行政書士の限界と司法書士・弁護士連携の判断
  • 初回で実費を預ける希望 預り証・正式受任前の整理

面談冒頭の標準説明文例

本日は、まずご事情をお聞きし、どのような準備が必要かを整理します。行政書士として関与できるものには、遺言書作成支援・死後事務委任契約・任意後見契約・財産管理契約・見守り契約・相続人調査・財産目録作成・各種行政手続支援などがあります。相手方との交渉・相続登記・相続税申告・不動産仲介・医療判断・裁判所提出書類の作成を業として行うことは別の専門職の領域です。ペットの将来に関するご相談では、行政書士がペットを直接預かるのではなく、飼育引受先との合意書作成や遺言・信託等の仕組み作りを支援します。

本人から直接確認する主な質問

  • 「今日はどのようなことで相談に来られましたか」(相談目的の理解確認)
  • 「一番心配なことは何ですか」(主たる不安)
  • 「誰に頼りたいですか」「頼りたくない・知らせたくない方はいますか」(受任者候補・親族トラブル予防)
  • 「亡くなった後、何をしてほしいですか」「財産を誰に残したいですか」(死後事務・遺言設計)
  • 「判断能力が落ちたとき、誰に手続を頼みたいですか」(任意後見・財産管理候補)
  • 「ペットについて、将来どうしたいですか」(飼育引受先・費用原資・合意書)

相談者が何を希望しているか分からない場合の7分類

図解3|相談内容を整理する7分類
①生前の生活見守り、財産管理、福祉制度
②判断能力低下任意後見、財産管理等委任契約
③財産承継遺言、生前贈与、信託
④死後対応死後事務委任契約
⑤医療・介護医療意思表示、施設入所支援
⑥住まい・墓空き家、墓じまい、家財処分
⑦ペット・デジタルペットのための遺言・信託等、デジタル終活

5. ヒアリング項目(初回相談用シート)

以下はA〜Gの主要カテゴリです。詳細記録は各回を参照してください。

A. 基本情報(相談日・方法・本人情報・同席者・紹介者・緊急連絡先・預り金有無)

B. 本人意思確認(主要質問)

  • 「今日は何を相談したいですか」(相談目的)
  • 「一番心配なことは何ですか」(主たる不安)
  • 「誰に頼りたいですか」「頼りたくない方、知らせたくない方はいますか」
  • 「亡くなった後、何をしてほしいですか」「財産を誰に残したいですか」
  • 「延命治療や介護について希望はありますか」
  • 「ペットを誰に託したいですか。費用はどう考えていますか」

C. 家族・親族関係(要注意の発言と注意点)

  • 「子どもはいません」→ 兄弟姉妹・甥姪が相続人になる可能性
  • 「親族はいません」→ 戸籍上は存在する可能性
  • 「内縁の夫に全部任せています」→ 法定相続人でない可能性
  • 「前妻の子とは関係ありません」→ 相続人である可能性
  • 「友人に全部任せたい」→ 遺言・死後事務・任意代理の設計が必要
  • 「親族には絶対に知らせないでほしい」→ 死後実務上、親族連絡が必要または強く求められる場面が多いため慎重に整理

D. 財産状況(概要のみ。詳細評価は不要)

預貯金・不動産・有価証券・保険・年金、借入・保証債務、デジタル資産(ネット銀行・暗号資産・サブスク)、ペットの将来費用(飼育費・医療費・引受先への費用)を確認します。

財産確認時の注意 税額・評価額・節税効果は初回で断定しません。不動産・相続税・贈与税が関係する場合は税理士へ連携します。ペットに関する費用は「行政書士がペットを預かる費用」として扱ってはいけません。

E. 住まい・生活状況

現在の住まい(持ち家・賃貸・施設・病院)、同居者の有無、今後の予定(施設入所・入院・転居)、家財処分・形見分け希望、ペット同居の有無と世話をする人を確認します。

F. 医療・介護状況

持病・通院先・服薬・介護認定・ケアマネ・入院施設入所予定・医療意思(延命治療・緩和ケア)・身元保証の有無を確認します。

成年後見制度に関する相談 判断能力低下が疑われる場合は、初回だけで抱え込まず、地域包括支援センター・司法書士・弁護士等へつなぐことが重要です。任意後見は公正証書で契約し、任意後見監督人が選任されて初めて効力が生じます。

G. 死後の希望(葬儀・遺体引取り・納骨・ペット・デジタル契約・親族通知)

「親族に知らせたくない」希望への対応 法律上当然に通知義務が生じるとは限りませんが、遺体引取り・火葬・相続手続・家財処分等の死後実務上、親族連絡が必要または強く求められる場面が多くあります。実務上必要となり得る連絡と本人の希望を分けて整理します。

おひとりさま特有の追加ヒアリング

  • 緊急時の連絡先/倒れたときに自宅へ入れる人の有無(孤独死対策)
  • 葬儀・家財処分の費用原資/ペットの飼育引受先は決まっているか

おふたりさま特有の追加ヒアリング

  • 法律上の配偶者か・事実婚・同性パートナー関係か(相続権の有無に直結)
  • 一方が亡くなった後の残された方の生活・住まい名義/判断能力が落ちたときの手続担当者
  • 双方の親族との関係・連絡方針はどうするか
事実婚・同性パートナーの場合 法定相続権がないケースがあります。遺言が必要になる可能性が高く、死後事務委任契約や任意代理契約も検討が必要です。

6. 判断フロー:業務カテゴリ振り分け・受任可否

6-1. 相談内容を業務カテゴリへ振り分けるフロー

図解4|業務カテゴリ振り分けフロー
本人の不安・希望を聞く
  • 財産を誰に残すか 遺言書作成支援・相続人調査・財産目録作成
  • 死後の葬儀・納骨・家財 死後事務委任契約・葬儀納骨支援・住居整理
  • 認知症・判断能力低下 任意後見・財産管理等委任・見守り契約
  • 成年後見申立て 事実整理・添付資料収集支援のみ。申立書作成・提出代理は司法書士・弁護士へ
  • ペットが不安 ペットのための遺言・信託等作成支援・飼育引受先との合意書作成支援
  • 何を頼めばよいか分からない エンディングノート作成支援・全体設計面談

6-2. 遺言が必要なケースの見分け方

  • 子どもがいない夫婦(配偶者だけでなく親・兄弟姉妹が相続人になる可能性)
  • 事実婚・同性パートナーに財産を残したい(法定相続人でない可能性)
  • 友人・世話人・団体に財産を残したい(遺言がないと承継できない)
  • ペットの飼育費用を残したい(負担付遺贈・信託等の検討が必要)
  • 相続人に財産を渡したくない(遺留分等に注意しながら設計)
  • 推定相続人が不明(相続人調査が必要)

6-3. 遺言と死後事務委任の違い(対照図)

図解5|遺言と死後事務委任の役割の違い
遺言書
  • 財産を誰に承継させるかを定める(相続・遺贈が中心)
  • 遺言執行者を指定できる
  • ペットの飼育費用を遺贈・信託等で設計できる
死後事務委任契約
  • 葬儀・納骨・行政手続・家財処分等の事務を委任する(死後の実務対応が中心)
  • 死後事務受任者を定める
  • ペットの引渡し・関係先連絡を死後事務として整理できる

※ 財産承継は遺言で、死後事務対応は死後事務委任契約で役割を分けて設計するのが基本です。

6-4. 受任しない・保留する判断フロー

本人意思を直接確認できるか
できる → 次へ
できない → 受任保留
本人の判断能力に強い疑義があるか
ない → 次へ
ある → 受任保留。医療・福祉・後見相談へ
相談者と本人の利益が対立しているか
なし → 次へ
あり → 受任不可または慎重対応(詳細は0-7)
紛争・交渉が中心か
いいえ → 次へ
はい → 弁護士紹介
税務・登記・医療・不動産仲介が中心か
いいえ → 次へ
はい → 各専門職へ連携
成年後見申立書類の作成そのものを求められているか
いいえ → 次へ
はい → 行政書士業務として不可。司法書士・弁護士へ
ペットの直接預かり・継続飼育を求められているか
いいえ → 行政書士業務として受任検討
はい → 受任不可。登録業者・保護団体等へ連携

7. 作成・確認する書類

初回相談で作成・確認する主な書類

  • 相談受付票 相談経路・概要(電話・メール受付時に作成)
  • 初回相談票 本人情報・相談内容・家族関係・財産概要(面談中に使用)
  • 本人意思確認メモ 本人の発言をできるだけ原文に近く記録
  • 同席者確認票 氏名・関係・利害を確認(親族・支援者同席時に必須)
  • 資料預り証 原本・写し・実費預り金の管理
  • ペット関係整理メモ 引受先・費用・動物病院等(行政書士は直接飼育しない旨を記録)
  • 親族通知方針メモ 死後の通知希望と実務上必要となり得る連絡を整理
  • 後見申立て周辺資料整理メモ 事実関係・添付資料を整理(申立書類作成そのものは業として行わない)

次回までに準備してもらう資料(共通)

本人確認書類・印鑑登録証明書(任意後見契約締結時に必須)・住民票・戸籍謄本・財産一覧(不動産登記事項証明書・固定資産税納税通知書・通帳写し・保険証券)・葬儀納骨希望メモ・ペット情報(飼育引受先候補・動物病院資料)

8. 文例・記載例

受任を保留する場合

本日の内容だけでは、すぐに契約書作成へ進むのは慎重にした方がよいと思います。本人の意思確認・親族関係・財産内容・他士業確認がまだ不足しているためです。次回までに資料を準備いただき、改めて受任範囲を確認してから進めましょう。

税理士連携を案内する場合

財産資料の整理は行政書士として支援できます。ただし、相続税の課否・税額・特例適用の判断は税理士の領域です。税理士へ確認しながら進めることをお勧めします。

ペットの相談を受けた場合

行政書士が直接ペットを預かって飼育するのではなく、飼育引受先や保護団体との合意内容を整理し、遺言や信託等で飼育費用を確保する仕組みを検討します。有償で反復継続して動物を預かる行為は第一種動物取扱業(保管業等)に該当し得るため、飼育自体は登録業者・保護団体・引受者と調整します。

親族に知らせたくないと言われた場合

本人の希望は記録します。ただし、遺体引取り・火葬・相続手続・家財処分等の死後実務上、親族への連絡が事実上必要または強く求められる場面が多くあります。「一切知らせません」と安易に約束すると死後に大きなトラブルになります。どの場面で誰に何を知らせるか、慎重に整理しましょう。

成年後見申立てを相談された場合

行政書士が申立書類の作成そのものを業として行うことはできません。行政書士としては、事実整理・添付資料の収集支援・財産目録等の基礎資料整理にとどまります。申立書の作成支援や提出代理が必要な場合は、司法書士または弁護士へ連携します。

同席者が話し過ぎる場合

ご説明ありがとうございます。遺言や契約はご本人の意思に基づいて進める必要がありますので、まずはご本人に直接お聞きします。後ほどご家族からも補足を伺います。

実費・預り金を求められた場合

正式受任前に実費をお預かりする場合は、金額・目的・精算方法を明確にし、その場で預り証を発行します。報酬・実費・預り金は正式受任時に書面で確認してから進めます。

9. 他士業・関係機関との連携

  • 弁護士 相続人間の争い・遺留分・使い込み・親族からの抗議・施設業者との紛争・離檀料交渉
  • 司法書士 相続登記・不動産名義変更・後見申立書類の作成支援や提出代理・民事信託登記
  • 税理士 相続税・贈与税・不動産譲渡所得税・配偶者控除・小規模宅地等の特例
  • ケアマネジャー 介護サービス・施設入所・ケアプラン
  • 地域包括支援センター 認知症疑い・虐待・セルフネグレクト・身寄りなし高齢者
  • 医療機関 判断能力・診断書・医療意思表示・入退院調整
  • 宅建業者 自宅売却・賃貸・空き家処分・不動産査定
  • 動物病院・保護団体・登録動物取扱業者 ペットの飼育引受先・医療情報・保管・譲渡等の実務調整
司法書士への連携(後見申立て) 行政書士は申立書類の作成そのものを業として行えないため、申立書の作成支援や提出代理が必要な場合は司法書士・弁護士へ連携します。行政書士は事実整理・添付資料の収集支援・財産目録等の基礎資料整理にとどめます。

10. 新人が間違えやすいポイント

  • 結論を急いですぐ文案を作成 → 推定相続人・財産・税務・遺留分・判断能力が未確認のまま進む危険
  • 親族の話だけで進める → 本人意思未確認。利益相反・財産侵害リスク(本人と直接面談が必須)
  • 同席者の前でデリケートな質問をする → 本人が本音を言えない。本人単独の面談時間を設ける
  • 税務・登記・医療判断を軽く答える → 税理士・司法書士・医療機関の領域に踏み込む危険
  • 預り金・報酬を曖昧にする → 金銭トラブル(行政書士には報酬額の掲示義務あり)。必ず預り証を発行
  • 面談記録を後回しにする → 本人発言・未確認事項が曖昧になる(当日中に作成)
  • 「ペットを預かります」と説明する → 第一種動物取扱業(保管業等)に該当し得る。飼育引受先との合意書作成・遺言・信託等の設計支援に限定
  • 「親族に一切知らせない」と約束する → 遺体引取り・火葬・相続手続等の死後実務上、連絡が必要な場面が多い
  • 「成年後見申立ても全部できる」と説明する → 申立書類の作成そのものを業として行えない。申立書作成・提出代理は司法書士・弁護士へ

11. トラブル予防策

「未確定事項」を必ず明示する

未確認事項の記録例
  • 推定相続人:戸籍未確認。本人申告では兄1名、甥2名
  • 税務:相続税申告要否未確認。税理士連携予定
  • 親族通知:本人は兄へ知らせたくない意向。死後実務上の連絡要否は未確認
  • ペット:猫1匹あり。飼育引受先未確定。行政書士は直接飼育しない旨説明済み
  • 後見申立て:必要性あり。行政書士は申立書類作成を業として行わず、司法書士・弁護士連携予定
  • 預り金:本日は預りなし/戸籍取得実費として〇円預り、預り証発行済み

本人発言と同席者発言を分けて記録する

記録例(発言者を明記)

本人発言:「葬儀は簡単でよい。兄には知らせなくてもよい。」
長女発言:「兄には知らせた方がよいと思う。」
当職説明:「法律上当然に通知義務が生じるとは限らないが、相続関係・死後事務内容によって、実務上親族連絡が必要または強く求められる場面がある。現時点では断定しない。」
本人発言:「猫はAさんに頼みたい。」
当職説明:「Aさんの同意・飼育費用・動物病院情報・合意書の内容を確認する。行政書士が猫を直接預かる業務ではない。」
長男発言:「後見申立ての書類も全部作ってほしい。」
当職説明:「行政書士は申立書類の作成そのものを業として行うことはできない。事実整理・添付資料の収集支援・基礎資料整理にとどめ、申立書作成支援や提出代理は司法書士・弁護士へ連携する。」

初回相談直後の内部整理(確認事項)

  • 本人意思は確認できたか
  • 同席者の影響はなかったか
  • 判断能力に疑義はないか
  • 利益相反はないか・紛争性はないか
  • 行政書士業務として受任可能か
  • 成年後見申立書類の作成そのものを求められていないか
  • ペットの直接飼育・保管を求められていないか
  • 親族通知の方針に危険な約束が含まれていないか
  • 実費・預り金の扱いは記録化されているか

12. ケーススタディ(7事例)

ケース1 友人に死後のことを頼みたい(78歳女性・単身)

夫は死亡・子はいない・兄弟とは20年以上連絡なし。近所の友人Aに葬儀・納骨・家財処分・役所手続を頼みたい。預金約1,200万円・自宅マンション・猫1匹。

友人Aへの死後対応依頼→死後事務委任契約 / 財産承継→遺言書作成支援 / 猫の飼育引受先→ペットのための遺言・信託等作成支援・合意書作成支援 / 自宅マンション→空き家・不動産処分支援・司法書士・宅建業者連携 / 兄弟姉妹確認→相続人調査 / 認知症不安→任意後見・見守り契約

初回説明の要点 Aさんの同意・費用原資・猫の飼育引受先・兄弟姉妹が相続人になる可能性を確認。猫は行政書士が直接預からず、飼育引受先や保護団体との合意内容を整理し遺言・信託等で費用を確保する方法を検討。兄弟への通知は死後実務上必要になり得ることを慎重に整理。
ケース2 おふたりさま夫婦・子どもなし(70代夫婦)

夫名義の自宅に居住。夫死亡後、妻が安心して住み続けられるようにしたい。夫の兄弟とは疎遠。

説明の要点 子のいない場合、配偶者だけでなく兄弟姉妹・甥姪が相続人になる可能性があります。妻が自宅に住み続けられるよう遺言書の作成が必要。相続税・登記確認のため税理士・司法書士と連携する可能性があります。
ケース3 親族が本人を連れてきたが本人がほとんど話さない(80代女性)

長女が80代母を連れて来所。「母の財産管理と遺言をお願いしたい」と相談。母はほとんど発言せず、長女がすべて答える。

本人意思:未確認/判断能力:要確認/利益相反:長女が受益者になる可能性あり/遺言・財産管理:本人理解が確認できるまで進めない。

対応文例 ご家族から事情を伺うことはできますが、遺言や財産管理契約はご本人の意思が必要です。今日はすぐに書類作成へ進まず、次回、ご本人と落ち着いてお話しする機会を設けましょう。判断能力に不安がある場合は医療機関や地域包括支援センターとも連携が必要です。
ケース4 施設入所前に全部整理したい(82歳男性・妻死亡・子なし)

施設入所→入院・介護施設入所支援、自宅売却→空き家・不動産処分支援・宅建業者連携、登記→司法書士連携、譲渡所得税→税理士連携、葬儀・納骨→死後事務委任、判断能力低下→任意後見・財産管理・見守り。

初回ポイント「家を売れば大丈夫」と初回で判断してはいけません。本人意思・判断能力・売却権限・税務・登記・施設契約・死後対応を分けて確認します。
ケース5 何をすればいいか分からない(75歳女性・独身・親族疎遠)
財産・判断能力・死後・住まい・墓・ペットに分けて確認し、必要なものから順番に進めます。エンディングノート作成支援を入口にして遺言・死後事務・任意後見へつなげます。
ケース6 ペットを残して死ぬのが心配・「行政書士に預かってほしい」(80歳男性・独身・犬1匹)
対応の要点 行政書士が犬を直接預かって飼育する業務はできません(第一種動物取扱業・保管業等に該当し得るため登録が必要)。ただし、飼育引受先や保護団体との合意書作成や、遺言・信託等で飼育費用を確保する仕組みを検討することはできます。まずは飼育引受先の候補・犬の情報・必要費用を整理しましょう。
ケース7 成年後見申立てを「全部頼みたい」(長男からの相談)

父の認知症が進み、預金管理や施設契約ができない。「成年後見の申立ても行政書士に全部頼みたい」との相談。

申立書類作成・提出代理→司法書士・弁護士連携(行政書士業務として不可)/添付資料収集・財産資料整理→行政書士が支援可能/親族対立→弁護士連携/医師診断書→医療機関連携。

行政書士は申立書類の作成そのものを業として行えません。行政書士としては、事実整理・添付資料収集支援・財産資料整理にとどまります。申立書の作成支援や提出代理が必要な場合は、司法書士または弁護士へ連携します。

13. 実務チェックリスト

初回相談前チェック

  • 相談者と本人の関係を確認した
  • 緊急性を確認した
  • 同席者を確認した
  • 相談票・ヒアリングシートを準備した
  • 資料預り証を準備した
  • ペット相談用の説明を準備した(行政書士は直接飼育しない)
  • 成年後見申立て用の対応範囲説明を準備した
  • 初回相談料・実費・預り金の説明を準備した

初回相談中チェック

  • 面談冒頭で業務範囲を説明した
  • 本人の意思を直接確認した
  • 本人の発言を記録した
  • 同席者の氏名・関係を記録した
  • 親族へ知らせたい・知らせたくない希望を確認した
  • 死後実務上親族連絡が必要となり得る場面を説明した
  • ペットの有無・飼育引受先候補を確認した
  • 行政書士がペットを直接預からないことを説明した
  • 後見申立てに関し行政書士の限界を説明した
  • 実費や預り金を受け取った場合、預り証を発行した
  • 初回で断定できない事項を説明した
  • 次回までの資料を案内した

初回相談後チェック

  • 面談記録を当日中に作成した
  • 本人発言と同席者発言を分けて記録した
  • 未確認事項を整理した
  • 他士業連携が必要な事項を整理した
  • 受任可能・保留・不可を検討した
  • 親族通知方針を記録した
  • ペット関連の直接飼育・保管を受任しないことを記録した
  • 後見申立てに関し行政書士は申立書類作成を業として行わないことを記録した
  • 預り金の精算・管理状況を確認した

14. 確認テスト(全15問)

問1
初回相談の目的は、すぐに契約書を作成することである。正しいか。
誤り。本人意思・家族関係・財産・医療介護・死後希望を確認したうえで、行政書士として関与できる範囲と他士業連携が必要な範囲を判断する場である。
問2
親族が「本人はこうしたいと言っています」と説明した場合、本人確認を省略してよいか。
省略してはいけない。遺言・死後事務委任・任意後見・財産管理契約などは本人意思が基礎となるため、必ず本人から直接確認する。
問3
相談者が「友人に死後のことを全部頼みたい」と言った場合、初回相談で何を確認すべきか。
本人意思・友人の同意・費用原資・財産承継の方法・推定相続人・親族の関係・葬儀・納骨・家財処分・ペット・デジタル契約・不動産の有無を確認する。
問4
「遺言が必要なケース」として典型的なものを3つ挙げなさい。
①子どもがいない夫婦(兄弟姉妹が相続人になる可能性)、②事実婚・同性パートナーに財産を残したい場合(法定相続人でない)、③友人や団体に財産を残したい場合(遺言がないと承継できない)。
問5
死後事務委任契約が必要になりやすい場面を3つ挙げなさい。
①身寄りがない場合、②親族と疎遠・葬儀納骨家財処分を頼む人がいない場合、③賃貸住宅の明渡しやペットの引受先を決めたい場合。
問6
任意後見契約を検討すべき初回相談の兆候を3つ挙げなさい。
①認知症になった後が不安、②頼れる親族がいない・頼みたくない、③将来の施設入所・入院手続・財産管理が心配。
問7
初回相談で「相続税はかからないと思います」と回答してよいか。
回答してはいけない。相続税の課税判断・税額計算・特例適用は税理士領域。行政書士は財産資料を整理し税理士へ連携する。
問8
同席者が本人の代わりに話し続ける場合、どう対応すべきか。
同席者の説明は補足として聞きつつ本人に直接質問する。必要に応じて本人単独の面談時間を設け、意思が確認できない場合は受任を保留する。
問9
初回相談後に必ず作成すべき記録は何か。
面談記録・本人意思確認メモ・同席者確認・職域判断メモ・未確認事項・次回準備資料一覧・他士業連携記録など。面談当日中に作成する。
問10
初回相談で受任しない方がよい場合を3つ挙げなさい。
①本人意思が確認できない、②判断能力に強い疑義がある、③相談者と本人の利益が対立している。その他、紛争交渉が中心・行政書士業務外が中心・違法目的が疑われる場合なども含む。
問11
ペットを残して亡くなることを心配している相談者から「行政書士が直接ペットを預かってほしい」と言われた。どう対応すべきか。
受けてはいけない。有償で反復継続して動物を預かる行為は第一種動物取扱業(保管業等)に該当し得るため登録が必要。行政書士はペットのための遺言・信託等作成支援・飼育引受先との合意書作成支援に限定する。
問12
任意後見契約は、契約書を作成したらすぐに効力が生じるか。
生じない。公正証書で締結し、本人の判断能力低下後、任意後見監督人が家庭裁判所で選任されて初めて効力が生じる。本人以外の申立てには原則として本人の同意が必要(意思表示できない状況にあるときはこの限りでない)。
問13
本人が「親族には絶対に知らせないでほしい」と希望した場合、行政書士は「一切知らせません」と約束してよいか。
約束してはいけない。遺体引取り・火葬・相続手続・賃貸借終了・家財処分等の死後実務上、親族への連絡が事実上必要または強く求められる場面が多い。通知方針を慎重に整理する。
問14
初回相談で戸籍取得の実費を預かった。何をすべきか。
金額・目的・精算方法を明確にし、その場で預り証を発行する。正式受任時は報酬・実費・預り金の区別を書面で確認する。
問15
成年後見申立てについて、行政書士は何を支援でき、何をしてはいけないか。
申立書類の作成そのものを業として行うことはできない。事実整理・添付資料収集支援・基礎資料整理にとどめ、申立書の作成支援や提出代理は司法書士・弁護士へ連携する。

15. 次回への接続

今回の要点 初回相談は、契約を取る場ではなく、本人の意思と状況を整理し、行政書士が書類作成および手続支援として進められる範囲と、他士業・関係機関へつなぐ範囲を見極める場である。

次回「0-4 本人確認の実務」では、本人確認書類の確認方法・代理人・親族・支援者が来所した場合の対応・オンライン相談時の本人確認・高齢者搾取を防ぐ実務を扱います。

初回面談で必ず記録すること 本人の発言・同席者の発言・未確認事項・他士業連携の必要性・親族通知方針・金銭授受・ペットに関する関与範囲(直接飼育しない旨)・成年後見申立てに関する限界(申立書類作成を業として行わない旨)。おひとりさま・おふたりさま終活では「誰に頼るか」「誰に知らせるか」「死後に誰が実行するか」が紛争や実行不能に直結するため、初回で安易に結論を出さない。

行政書士実務マニュアル|おひとりさま・おふたりさま終活業務シリーズ 第0-3回

本記事は教育・研修目的で作成されています。個別の案件については必ず最新の法令・ガイドライン・専門家の判断を確認してください。

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相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

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