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終活実務マニュアル|0-2

行政書士が関与できる業務・できない業務
終活業務における職域判断・他士業連携マニュアル

終活相談を受けたとき、何を担い何をつなぐか。非弁・税理士法・司法書士法・宅建業法の境界線を整理します。

新人行政書士向け おひとりさま・おふたりさま対応 他士業連携チェックリスト付き

 

📌 前回(0-1)との接続

前回0-1で学んだとおり、終活業務は「生前支援・判断能力低下対策・死亡後対応・財産承継・生活支援・墓供養住まい対応」にまたがります。本回では行政書士がどこまで関与できるかを判断する「職域の線引き」を扱います。

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この回の到達目標

新人行政書士が、終活相談を受けたときに、次の判断を自力でできる状態を目指します。

到達目標 実務でできるようになること
行政書士業務の範囲を説明できる 遺言書作成支援、死後事務委任契約、任意後見契約支援、財産管理等委任契約、見守り契約、親族関係調査、財産目録作成、行政手続支援などを整理して説明できる
受任してよい案件を判断できる 書類作成・事実整理・手続支援として扱える案件か、紛争・税務・登記・医療判断・不動産仲介等が含まれる案件かを見分けられる
他士業へつなげる判断ができる 弁護士、司法書士、税理士、社会福祉士、ケアマネジャー、地域包括支援センター、医療機関、不動産業者へ連携するタイミングを判断できる
非弁・司法書士法・税理士法・宅建業法違反を避けられる 相談、説明、書類作成、代理、交渉、判断の違いを区別できる
業務範囲を記録化できる 「どこまで行政書士が対応し、どこから他士業へ紹介・連携したか」を面談記録、業務範囲確認書、紹介記録に残せる
おひとりさま・おふたりさま特有のリスクに対応できる 頼れる親族がいない、事実婚・同性パートナー、死後事務、身元保証、医療・福祉連携、ペット・墓・家財処分などを職域内外に分けて整理できる
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この業務が必要になる実務場面

終活相談では、相談者が最初から「これは行政書士に依頼できる業務ですか」と整理して来ることはほとんどありません。実際には次のような相談から始まります。

  • 「身寄りがないので、死んだ後のことを全部お願いしたい」
  • 「遺言を書きたいが、兄弟と揉めそう」
  • 「施設に入るので、家を売りたい」
  • 「相続税がかかるか知りたい」
  • 「亡くなった後、預金を解約して葬儀代を払ってほしい」
  • 「判断能力が落ちたときに備えたい」
  • 「相続登記もまとめてお願いしたい」
  • 「入院時の身元保証人になってほしい」
  • 「ペットの引取り先も決めておきたい」

このとき新人が最初に行うべきことは、相談内容を業務カテゴリに分解することです。「死後のことを全部お願いしたい」という相談は次のように分解します。

相談内容 実務上の分解 行政書士の関与
葬儀をしてほしい 死後事務委任契約、葬儀社との事前調整 契約書作成、希望内容整理、葬儀社との事務連絡は可
納骨先を決めたい 納骨先選定、寺院・霊園との確認 希望整理・契約内容確認・改葬許可申請支援は可
預金で葬儀代を払ってほしい 死後事務委任、遺言、遺言執行、金融機関連携 契約設計・書類作成は可。相続人との争い・金融機関対応で限界あり
親族と揉めたくない 推定相続人確認、説明方針、紛争予防 予防的整理は可。交渉・紛争対応は弁護士
相続税が心配 財産概要の整理、税理士連携 財産資料整理は可。税額判断・申告要否判断は税理士
家を処分したい 不動産調査、売却意向整理、空き家資料整理 資料整理は可。仲介・価格査定・媒介は宅建業者。登記は司法書士
ペットを託したい ペット飼育承継、費用原資、引受先契約 希望整理、契約書作成支援は可。紛争時は弁護士
💡 初動の鉄則

「できる/できない」を一言で断つのではなく、相談者の希望を分解し、行政書士が担える部分を明確にし、担えない部分は適切な専門職へつなぐことが重要です。

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基本知識

3-1. 行政書士が終活業務で担える基本業務

領域 内容 終活業務での例
権利義務に関する書類 権利の発生・変更・消滅を目的とする意思表示を内容とする書類 遺産分割協議書、死後事務委任契約書、財産管理等委任契約書、見守り契約書など
事実証明に関する書類 社会生活上の事実を証明する資料 相続関係説明図、財産目録、親族関係整理表、ヒアリング記録
官公署提出書類 官公署へ提出する書類 改葬許可申請、各種証明書取得支援、行政窓口手続支援
⛔ 行政書士が単独で行うべきでない行為
  • 相手方と争うこと・一方当事者の代理として交渉すること
  • 税額や申告要否を判断すること
  • 登記申請を代理すること
  • 不動産売買・賃貸の媒介をすること
  • 医療行為の同意を包括的に代行すると説明すること
  • 介護計画・福祉的支援方針を専門職に代わって判断すること

3-2. 「相談を受けること」と「代理交渉すること」の違い

行政書士は、相談者から事情を聞き、事実を整理し、制度の一般説明を行い、争いのない範囲で書類を作成することはできます。しかし、相手方との条件交渉・説得・譲歩要求・請求・紛争解決の代理はできません。

行為 可否 注意点
相談者から事情を聞く/選択肢を整理する 事実確認、希望整理、制度の一般説明は可
契約書案・協議書案を作成する 当事者間に争いがないことが前提
相手方に書類案を送る 原則慎重 事実連絡の範囲に限定。内容調整・条件提示・合意形成に関与すると非弁リスク
相手方に譲歩を迫る/金額・条件を交渉する 不可 非弁リスク。弁護士へ連携
「法的に勝てる」と判断する 不可 法律事件の鑑定・紛争助言に近づく
「税金はこの額です」と判断する 不可 税理士へ連携
相続登記を申請代理する 不可 司法書士へ連携
不動産の買主を探し媒介する 不可 宅建業者へ連携
医療同意を包括的に代行する 不可 医療機関・福祉職と慎重に連携

「私は、事実関係とご希望を整理し、争いがない前提で必要書類を作成することはできます。一方で、相手方との交渉・法的紛争の代理・税額判断・登記申請代理・不動産仲介・医療判断は、弁護士・税理士・司法書士・宅建業者・医療機関の領域になります。」

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行政書士ができること・できないこと一覧

業務場面 行政書士ができること できないこと・注意点 連携先
初回終活相談 希望整理、課題分類、制度の一般説明、必要書類案内 紛争の勝敗判断、相手方への交渉方針決定 弁護士等
遺言書作成支援 推定相続人・財産の整理、文案作成支援、公証役場調整 遺留分紛争の交渉、相続人への説得、税務効果の断定 弁護士、税理士
遺言執行 遺言執行者としての就任、財産目録作成、相続人通知 相続人間紛争の代理、登記申請代理、税務申告 弁護士、司法書士、税理士
死後事務委任 契約書作成、葬儀・納骨・行政手続・家財処分等の整理 相続財産の分配判断、相続人との紛争処理 弁護士、葬儀社、寺院等
任意後見契約 本人意思整理、契約設計、公証役場調整支援 医学的判断、包括的医療同意、紛争処理 公証役場、医療機関、福祉職
法定後見申立支援 戸籍、住民票、診断書、財産資料等の収集・整理、関係機関との事務連絡 裁判所提出書類作成は原則として司法書士・弁護士の業務領域 司法書士、弁護士、地域包括
財産管理等委任契約 契約書作成、管理範囲の明確化、報告方法設計 投資判断、税務判断、利益相反取引 税理士、弁護士、金融機関
見守り契約 定期連絡、訪問記録、異変時の連絡体制整備 介護サービス提供、医療判断、緊急搬送判断の代替 ケアマネ、地域包括、医療機関
身元保証・身元引受 契約内容確認、緊急連絡先整理、施設提出書類支援、保証範囲・責任の限定の明確化 医療同意、債務保証の無限定引受 弁護士、社会福祉士
尊厳死宣言・医療意思表示 本人意思の文書化支援、家族・医療機関への共有方法整理 医療行為の同意・拒否の代理判断 医師、医療ソーシャルワーカー
相続人調査 戸籍収集、相続関係説明図作成 相続人間の利害調整・相続放棄申述代理 弁護士、司法書士
財産調査 財産目録作成、資料整理、残高証明取得支援 税務評価、相続税試算の断定 税理士
相続手続 遺産分割協議書作成、金融機関手続支援 争いのある遺産分割交渉、相続登記申請代理、相続税申告 弁護士、司法書士、税理士
空き家・不動産処分 権利関係資料整理、業者紹介、行政手続支援 売買媒介、価格査定、重要事項説明、登記申請 宅建業者、司法書士
墓じまい・改葬 改葬許可申請支援、必要書類確認、自治体・寺院調整 親族間対立の代理交渉、離檀料紛争交渉 弁護士、寺院、自治体
デジタル終活 アカウント整理表、希望整理、承継・削除方針の文書化 不正アクセス、本人確認を欠くログイン代行 弁護士、IT事業者
ペット終活 ペット飼育承継契約、費用原資整理、引受先確認 引受先との紛争交渉、動物医療判断 弁護士、動物病院
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実務の進め方

初回相談での基本手順(5ステップ)

1
相談者の立場を確認する
「誰のための相談か」を最初に確認。本人・親族・施設職員・ケアマネ・パートナーによって確認事項が異なる。親族主導で本人意思が不明な場合は受任しない。
2
相談内容を分類する
①書類作成 ②事実調査・資料整理 ③行政手続支援 ④他士業独占業務 ⑤医療・福祉・介護の専門判断 ⑥紛争・交渉・権利対立 の6カテゴリに分ける。
3
紛争性を確認する
「相手を説得してほしい」「遺産の取り分で揉めている」「遺留分を請求したい」などの発言が出たら非弁リスクを疑い、弁護士連携を検討する。
4
独占業務を切り分ける
紛争交渉→弁護士 / 相続登記→司法書士 / 税務→税理士 / 不動産仲介→宅建業者 / 医療判断→医師 / 裁判所提出書類→司法書士・弁護士
5
受任できる範囲を明文化する
業務範囲確認書・委任契約書に含む業務・含まない業務を明記する。相手方への連絡が事実連絡に限定されること、合意形成・条件調整を行わないことも記載する。
6

ヒアリング項目

6-1. 職域判断のための基本ヒアリング

項目 質問例 判断ポイント
相談者の立場 「ご本人のご相談ですか。ご家族としてのご相談ですか。」 本人意思確認が必要
本人の状況 「ご本人は現在ご自身で判断できますか。」 意思能力・後見検討
希望内容 「最終的に何を実現したいですか。」 書類作成か交渉か
相手方の有無 「意見が違う方はいますか。」 紛争性確認
税金の不安 「税額の試算や申告の要否まで知りたいですか。」 税理士連携
不動産処分 「売却先探しや価格査定も希望しますか。」 宅建業者連携
登記 「名義変更、相続登記などはありますか。」 司法書士連携
身元保証 「施設や病院から保証人を求められていますか。」 保証範囲・医療同意・費用負担に注意
死後事務 「葬儀・納骨・家財処分・ペット・デジタル契約の希望はありますか。」 契約設計・費用原資確認
パートナー関係 「法律上の配偶者以外に財産や死後事務を託したい方はいますか。」 遺言・契約設計が重要

6-2. 非弁リスク確認質問(必須)

⚠ 次の質問は必ず入れること
  • すでに相手方と揉めていますか
  • 相手方から請求・抗議・内容証明・訴状・調停申立書などを受けていますか
  • こちらから相手方に請求したい金銭や権利がありますか
  • 相手方に条件を飲ませたい・譲歩させたいという希望がありますか
  • 遺産分割・遺留分・使い込み・寄与分・特別受益について意見対立がありますか
  • 墓じまい・納骨・葬儀方法について親族間で対立がありますか
  • 身元保証・施設費・医療費・家財処分費について誰が負担するか争いがありますか

1つでも「はい」があれば、行政書士単独で進めず、受任前に他士業連携を検討します。

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判断フロー

受任可否の基本フロー

相談を受ける
本人または正当な相談者かを確認する
本人意思を直接確認できるか
できない場合:原則保留。本人確認・意思確認へ
書類作成・事実整理・行政手続支援か
いいえの場合:他士業・専門機関連携へ
相手方との争い・対立・交渉があるか
ある場合:弁護士連携
登記申請代理 / 税額判断 / 不動産媒介 / 医療判断が必要か
必要な場合:司法書士・税理士・宅建業者・医療福祉専門職へそれぞれ連携 / 不要の場合:行政書士業務として範囲を限定して受任

7-2. 遺産分割協議書と紛争案件の線引き

状況 行政書士対応 理由
相続人全員が合意済み 協議書作成可 合意内容の文書化
取得割合で揉めている 不可。弁護士連携 利害対立
寄与分・特別受益で揉めている 不可。弁護士連携 法的主張の対立
使い込みを疑っている 不可。弁護士連携 請求・責任追及
遺留分侵害額請求をしたい 不可。弁護士連携 請求交渉
相続人の一人が認知症 後見・利益相反確認 家裁・司法書士・弁護士・福祉機関連携
不動産の名義変更・税務特例の適用 協議書作成は可。登記・税務は連携 登記は司法書士、税務評価・特例適用は税理士へ確認
配偶者控除・小規模宅地等の特例が関係 協議書作成前に税理士連携 分割内容が税務結果に影響する
8

作成・確認する書類

書類 目的 作成・確認のポイント
初回相談票 相談内容の分類 相談者、本人、関係者、希望、緊急性を記録
職域判断チェックシート 受任可否判断 弁護士・司法書士・税理士等の連携要否
業務範囲確認書 越権防止 含む業務・含まない業務を明記
他士業紹介記録 紹介・連携の証跡 紹介日時、紹介先、理由、本人同意
面談記録 トラブル予防 発言、説明内容、未決事項を記録
受任契約書 業務内容・報酬の明確化 代理権限・報酬・実費・解除・免責
紛争性確認メモ 非弁リスク管理 対立の有無・請求の有無・弁護士紹介の要否
税務・登記・医療福祉連携メモ 各領域の切り分け 各専門職へ確認すべき事項を記録

業務範囲確認書の記載例

第1条 本業務の内容
当職は、依頼者の終活に関する希望内容を整理し、必要書類の作成・資料収集・事実関係の整理・官公署手続支援・関係機関との事務連絡を行う。

第2条 本業務に含まれない事項
紛争交渉・訴訟調停代理・登記申請代理・税務申告・税額計算・税務相談・不動産媒介・医療判断・介護サービス計画の作成は含まれない。

第3条 他士業等との連携
弁護士・司法書士・税理士・宅地建物取引業者・医療機関・社会福祉士・ケアマネジャー等の関与が必要な場合、依頼者に説明し同意を得たうえで連携または紹介を行う。

第4条 紛争発生時の取扱い
当事者間に意見対立・請求・抗議・紛争が発生した場合、対応可能な範囲を再確認し、必要に応じて業務を中止または弁護士への相談を勧める。

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文例・記載例

初回相談時の説明文例

当職は行政書士として、遺言書作成支援、死後事務委任契約、任意後見契約、財産管理契約、相続関係説明図、財産目録、各種行政手続書類などの作成支援を行うことができます。一方で、相手方との交渉、紛争対応、訴訟、相続登記、相続税申告、不動産売買仲介、医療判断は行政書士単独では行えません。必要な場合は、弁護士、司法書士、税理士、不動産業者、医療・福祉専門職と連携して進めます。

紛争が見えたときの説明文例

お話を伺う限り、相続人間で取得割合について意見の対立がある状態です。合意済みの内容を文書化することはできますが、一方の代理人として他の相続人と交渉することはできません。弁護士に相談し、交渉の進め方を確認することをお勧めします。

相続登記が含まれる場合

遺産分割協議書の作成支援は行政書士として対応できます。ただし、不動産の名義変更(相続登記)の申請代理は司法書士の業務です。協議書作成後、登記が必要な段階で司法書士と連携します。

相続税が気になる場合

財産目録を作成し、預貯金、不動産、有価証券、保険などの概要を整理することはできます。ただし、相続税がかかるかどうか、税額がいくらか、どの特例を使えるかといった判断は税理士業務です。特に、不動産、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、二次相続が関係する場合は、遺産分割協議書を完成させる前に税理士へ確認することをお勧めします。

不動産売却が含まれる場合

固定資産税通知書、権利証、登記事項証明書などの資料整理は支援できます。ただし、買主探し、価格査定、売買・賃貸の媒介、重要事項説明は宅建業者の業務です。不動産処分を進める場合は宅建業者・司法書士と連携します。

親族から本人抜きで依頼された場合

終活に関する契約や遺言は、ご本人の意思が最も重要です。ご親族から事情を伺うことはできますが、ご本人の意思確認ができないまま作成を進めることはできません。まずはご本人と直接面談し、ご本人の言葉で希望を確認させてください。

身元保証・身元引受を相談された場合

入院や施設入所で求められる身元保証は、緊急連絡、費用支払、退去時対応、遺体引取りなどが含まれることがあります。行政書士として契約内容の整理・確認は支援できますが、医療同意や高額な債務保証を当然に引き受けることはできません。

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他士業・関係機関との連携

終活業務における他士業連携マップ

本人(おひとりさま・おふたりさま)
 
行政書士|全体整理・書類・意思確認・記録
 
弁護士
紛争交渉・訴訟・遺留分・使い込み・権利擁護
司法書士
相続登記・不動産登記・裁判所提出書類
税理士
相続税・贈与税・所得税・税務相談
医療・福祉
医療判断・介護支援・後見相談
宅建業者
売買・賃貸仲介・査定・重要事項説明
公証役場
公正証書遺言・任意後見・尊厳死宣言

10-2. 弁護士に連携すべき場面

  • 相続人間の争い(遺産分割割合・使い込み・寄与分・特別受益・遺留分)
  • 相手方への請求(金銭返還請求、損害賠償請求)
  • 代理交渉の希望
  • 成年後見をめぐる対立・後見人候補者争い
  • 施設・病院との紛争・事故対応
  • 親族による財産侵害(預金引出し、虐待疑い)
  • 死後事務をめぐる対立(葬儀・遺骨・遺品処分)
  • 身元保証契約トラブル(過大請求・契約解除)

10-4. 税理士に連携すべき場面

⚠ 税理士法の境界線

税務代理・税務書類作成・税務相談は税理士業務であり、税理士以外が業として行うと税理士法違反となります。行政書士ができるのは財産資料を整理し税理士に渡せる形にするところまでです。不動産・各種控除・特例・二次相続が関係する場合は協議書作成前に税理士へ確認します。

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新人が間違えやすいポイント

① 「親切心」で交渉してしまう
失敗例
相続人Aから依頼され、相続人Bに電話して「Aさんの案で合意してください」と説得した。→ 非弁リスク
正しい対応
「合意内容が固まった後の協議書作成は可能ですが、取得割合の調整や説得は弁護士へご相談ください」と説明する。
② 「相続税はかからなそう」と言う
失敗例
財産をざっと聞いて「基礎控除内なので相続税は大丈夫です」と回答した。→ 税理士法違反リスク
正しい対応
「税務上の判断は税理士の領域です。私は財産資料を整理し、税理士に確認できる状態にします」と説明する。
③ 相続登記まで「まとめてできます」と言う
失敗例
遺産分割協議書作成とあわせて、法務局への相続登記申請も請け負った。→ 司法書士法違反
正しい対応
遺産分割協議書作成後は司法書士へ引き継ぐ。
④ 不動産会社のように売主・買主をつなぐ
失敗例
空き家相談で買主候補を探し、売買価格の調整をして報酬を得た。→ 宅建業法違反リスク
正しい対応
不動産業者を紹介し、行政書士は相続関係・行政手続・書類整理に留める。
⑤ 医療同意を安易に引き受ける
失敗例
身寄りがない本人との契約で「入院時の手術同意もすべて代わりにします」と説明した。
正しい対応
本人の医療意思表示を文書化し、医療機関・任意後見人予定者と共有する設計にする。実際の医療判断は医療機関と相談する。
⑥ 本人ではなく親族の意向で進める
失敗例
長男から「母の遺言を作りたい」と依頼され、母と十分に面談せずに文案を作成した。
正しい対応
本人と単独面談し、本人の言葉で希望を確認する。必要に応じて本人だけの確認時間を設ける。
⑦ 法定後見申立書を行政書士が作れると誤解する
失敗例
家庭裁判所に提出する成年後見申立書一式を行政書士業務として作成した。
正しい対応
戸籍・財産資料等の収集整理などの周辺事務に限定し、申立書類は司法書士または弁護士へ連携する。
⑧ 税理士確認前に遺産分割協議書を完成させる
失敗例
全員が合意していたため、不動産をすべて配偶者が取得する協議書を作成。後日、二次相続や特例の関係で税務上不利だったことが判明した。
正しい対応
不動産・相続税・各種特例・二次相続が関係する場合は、協議書作成前に税理士へ連携する。
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トラブル予防策

12-1. 受任前に必ず行う5つの確認

  • 本人確認
  • 本人意思確認
  • 判断能力の確認
  • 利益相反の確認
  • 職域逸脱リスクの確認

12-5. 相続税・登記・紛争の三点確認

確認事項 確認内容 連携先
紛争 相続人間で意見対立があるか 弁護士
登記 不動産の名義変更が必要か 司法書士
税務 相続税、特例、二次相続が関係するか 税理士
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ケーススタディ

CASE 1

遺言を書きたいが、兄弟と揉めそう

相談内容
70代女性。配偶者・子なし。長年世話をしてくれた姪に全財産を渡したい。兄から「勝手なことをするな」と言われている。
行政書士の対応
  • 本人と単独面談し、本人意思を記録する
  • 推定相続人を戸籍で確認し、財産目録を作成する
  • 公正証書遺言を推奨する
  • 兄への連絡や説得は行わない
  • 兄から抗議が具体化している場合は弁護士連携
  • 不動産や税務が関係する場合は司法書士・税理士への連携可能性を説明する
✅ 説明文例

遺言書作成の支援は可能です。ただし、お兄様を説得したり、将来の紛争について代理交渉することはできません。抗議や請求が具体化している場合は、弁護士と連携して進めます。

CASE 2

相続人全員が合意している遺産分割

相談内容
父が死亡。相続人は母と子2人。自宅は母、預金は母と子で分けることで全員合意済み。相続税は不明。不動産あり。
行政書士の対応
  • 相続人全員の合意状況を確認し、反対者がいないことを記録
  • 不動産登記は司法書士へ引き継ぎ
  • 配偶者控除・小規模宅地等の特例・二次相続が関係する場合は、協議書作成の前に税理士へ連携し、税務上の不利益が生じない分割案を確認する
  • 税理士確認後、合意内容を再確認して協議書を作成する
✅ 説明文例

合意されている内容を遺産分割協議書にすることは可能です。ただし不動産があり相続税や各種特例が関係する可能性があります。協議書完成前に税理士へ確認してから文案を確定するのが安全です。登記は司法書士へ連携します。

CASE 3

相続人の一人が「納得しない」と言っている

相談内容
長男が来所。「弟が遺産分割に応じない。先生から連絡して説得してほしい。」
⛔ 行政書士単独受任不可。弁護士連携。

一方相続人の代理として他の相続人に協議参加や譲歩を求めることは、紛争交渉に該当するリスクが高い。

私から弟様に条件を提示して説得することはできません。遺産分割について意見が対立しているため弁護士にご相談ください。戸籍や財産資料の整理については対応可能な範囲で進めます。

CASE 4

おひとりさまの死後事務委任

相談内容
80代男性。配偶者・子なし。兄弟とは疎遠。葬儀、納骨、家財処分、役所手続、ペットの引取り先を決めたい。
行政書士の対応
  • 本人意思確認・本人確認・判断能力確認・推定相続人確認
  • 死後事務の範囲を明確化し、費用原資を確認する
  • 葬儀社・寺院・霊園・ペット引受先を確認する
  • 遺言書作成支援も検討する
  • 業務範囲・費用・報告方法・緊急時連絡体制を契約書に明記する
  • 親族が反対する可能性が高い場合は弁護士連携
✅ 説明文例

死後事務委任契約により、葬儀・納骨・役所手続・家財処分などの希望を整理して契約書にできます。ただし、相続財産の分配は遺言で設計する必要があり、親族との争いが予想される場合は弁護士と連携します。

CASE 5

施設入所に伴い自宅を売りたい

相談内容
高齢女性が介護施設に入所予定。自宅を売却して施設費用に充てたい。長女が同席。
行政書士の対応
  • 本人単独で売却意思を確認し、本人の意向を記録する
  • 判断能力に疑義があれば契約を急がない
  • 宅建業者へ媒介を依頼、司法書士へ登記確認、税理士へ譲渡所得税を確認
  • 行政書士は資料整理と契約周辺の支援に留める
CASE 6

身元保証を求められている

相談内容
おひとりさまの高齢者。入院予定の病院から「身元保証人・緊急連絡先」を求められた。親族はいない。
行政書士の対応
  • 病院・施設が求める「身元保証」の内容を確認し、緊急連絡・費用支払・医療同意・遺体引取り・退院対応を分ける
  • 行政書士が引き受ける場合でも、責任範囲を契約書に明記する
  • 医療同意を包括的に引き受ける説明はしない
  • 医療ソーシャルワーカー・社会福祉士・弁護士と連携する
  • 死後事務委任・財産管理・見守り契約との整合性を確認する
14

実務チェックリスト

14-1. 受任前チェックリスト

  • 本人または正当な相談者からの相談である
  • 本人確認資料を確認した
  • 本人の意思を直接確認した
  • 判断能力に疑義がないか確認した
  • 親族・相続人・第三者との対立がないか確認した
  • 代理交渉・条件提示・譲歩要求を求められていない
  • 登記申請代理・裁判所提出書類作成を含まない
  • 税務判断・申告書作成を含まない
  • 不動産媒介を含んでいない
  • 医療判断・包括的医療同意を引き受けていない
  • 身元保証・身元引受の保証範囲を確認した
  • 相続税・特例・二次相続が関係する場合は税理士連携を説明した
  • 不動産がある場合は司法書士連携を説明した
  • 業務範囲確認書を作成した
  • 面談記録を作成した

14-2. 弁護士紹介チェックリスト

  • 相続人間で取得割合に争いがある
  • 遺留分請求をしたい/された
  • 使い込みを追及したい
  • 内容証明、調停、訴訟の可能性がある
  • 虐待・経済的搾取の疑いがある
  • 行政書士に代理交渉を求めている

14-4. 税理士紹介チェックリスト

  • 相続税申告の要否判断が必要
  • 小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減を使いたい
  • 二次相続を考慮したい
  • 遺産分割協議書の内容が税務に影響しそう
  • 不動産譲渡所得税・準確定申告が必要
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確認テスト

Q1行政書士が、相続人全員の合意済み内容をもとに遺産分割協議書を作成することは可能か。
A

可能。ただし争いがある場合は弁護士へ連携する。不動産や相続税が関係する場合は協議書作成前に司法書士・税理士への確認が必要になることがある。

Q2「弟に電話して、私の案で遺産分割に応じるよう説得してください」と依頼された。対応してよいか。
A

対応してはいけない。相手方への説得・条件交渉は非弁リスクがある。弁護士へ連携する。

Q3不動産がある相続手続で、行政書士が相続登記申請を代理してよいか。
A

できない。相続登記は司法書士へ連携する。行政書士は戸籍収集・相続関係説明図・遺産分割協議書作成等の範囲で支援する。

Q4「相続税がかかるかだけ簡単に教えてほしい」と言われた。どう答えるべきか。
A

断定してはいけない。税務判断は税理士業務。財産資料を整理し、税理士へ確認するよう案内する。

Q5おひとりさまから「死後の葬儀、納骨、家財処分をお願いしたい」と相談された。行政書士は関与できるか。
A

死後事務委任契約書の作成・希望整理・葬儀社や納骨先との事前調整などは可能。相続財産の分配・親族との紛争・税務・登記は別途連携が必要。

Q6「自宅を売りたいので買主を探してほしい」と言われた。行政書士が行ってよいか。
A

買主探しや売買媒介は宅建業者の業務。行政書士は資料整理に留め、宅建業者へ連携する。

Q7成年後見申立てで、行政書士が家庭裁判所に提出する申立書を作成してよいか。
A

原則として不可。裁判所提出書類の作成は司法書士・弁護士の業務領域。行政書士は戸籍・財産資料・診断書取得の案内などの周辺事務に限定する。

Q8身元保証人になってほしいと言われた場合、「入院から手術同意、支払い、死後対応まですべて引き受けます」と説明してよいか。
A

説明してはいけない。保証範囲・責任の限定を明確化する必要がある。包括的に医療同意を代理できる制度はなく、医療・福祉専門職や弁護士と連携する。

Q9相続人全員が合意済みであれば、税理士確認をせずに遺産分割協議書をすぐ完成させてよいか。
A

常によいとはいえない。不動産・相続税・各種特例・二次相続・納税資金が関係する場合は、協議書作成前に税理士へ確認する。形式的な合意だけで完成させると、後から税務上の不利益が生じる可能性がある。

この回の要点

行政書士は、終活全体の設計と書類化を支援できるが、
紛争交渉・登記・税務・不動産仲介・医療判断には踏み込まず、適切な専門職へ連携する。

争いがない案件でも、遺産分割協議書・死後事務委任・身元保証・財産管理契約などは、税務・登記・医療・福祉・紛争リスクと接続している。

書類を作る前に「この書類が他領域に与える影響」を確認し、必要な連携を先に行う。

📖 次回(0-3)への接続

次回0-3では今回の職域判断を前提に、初回相談の進め方を扱います。相談予約時の確認・初回面談の流れ・相談票の作り方・受任可否判断・業務範囲説明へのつなげ方を実務形式で学びます。

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本記事は行政書士業務に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。

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