数次相続とは?
相続手続き中に相続人が亡くなったときの整理法
「父の相続が終わっていないのに兄も亡くなった」「戸籍を集めても誰が手続きに関わるのか分からない」。そのようなときは、相続を一つにまとめて考えるのではなく、亡くなった順番ごとに分けて整理すると全体像が見えやすくなります。
数次相続では、「誰が・いつ亡くなったか」を時系列に並べ、それぞれの相続について相続人を確認することが第一歩です。
書類が多いから複雑なのではなく、相続が複数回発生し、それぞれについて確認すべき相続人がいるため、結果として関係者や戸籍が増えやすくなります。
相続手続きが長引いている方、兄弟姉妹など高齢の相続人がいる方、途中で相続人が亡くなった方。
財産の分け方を急ぐ前に、死亡した順番と、その時点ごとの相続人を確認します。
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。資料がそろっていない段階から状況整理を始められます。
数次相続とは?まず押さえたい3つの基本
相続手続きが終わる前に相続人が亡くなると数次相続が起こる
ある人が亡くなって相続が始まった後、その遺産分割や名義変更などが終わらないうちに相続人の一人が亡くなり、その人についてさらに相続が発生することがあります。このように、先の相続が整理される前に次の相続が重なっている状態を一般に「数次相続」と呼びます。
たとえば父が亡くなり、母・長男・次男が相続人になったものの、父の遺産分割をしないまま長男が亡くなったケースです。長男が父の相続について持っていた立場や権利関係も、長男自身の相続の中で整理することになります。
「父の相続中に兄が死亡したケース」で考えると分かりやすい
父が死亡 → 母・長男・次男が相続人
父の遺産分割が終わる前に長男が死亡
長男の配偶者・子など、長男の相続人を確認
父の相続と長男の相続を分けて確認し、最終的に誰が父の遺産分割に関係するかを整理
ここで大切なのは、「父の相続人だけを見ればよい」と考えないことです。途中で亡くなった長男についても相続人を確認することで、現在の手続きに関係する人が見えてきます。
数次相続では相続が2回以上重なり、関係者も増えていく
さらに時間が経ち、長男の相続人の一人も亡くなると、第3、第4の相続が続くこともあります。法務省も、時間が経つことで次の世代の相続が発生し、権利関係が複雑になり得ることを案内しています。
そのため、戸籍をやみくもに集めるより、最初に「死亡の順番」と「各相続の相続人」を図にしてから必要書類を確認すると整理しやすくなります。
数次相続と代襲相続を見分ける3つのポイント
数次相続と代襲相続は、どちらも当初想定していた相続人とは別の親族が関係することがあるため、混同されやすい制度です。見分ける際は、まず「誰が先に亡くなったか」を確認します。
| 比較項目 | 数次相続 | 代襲相続 |
|---|---|---|
| 死亡の順序・代襲原因 | 最初の被相続人が亡くなった後に、その相続人が死亡 | 本来相続人となる子や兄弟姉妹などが、被相続人の相続開始より前に死亡している場合、または相続欠格・廃除によって相続権を失った場合 |
| 相続の考え方 | 第1の相続の後に、第2の相続が新たに発生する | 一定の者が、本来相続人となる者に代わって相続人となる |
| 確認する人 | それぞれの相続について相続人を確認する | 代襲相続人となる子・孫、おい・めいなどを確認する |
| 相続放棄との関係 | 各相続で相続放棄がある場合、その相続について誰が相続人となるかを改めて確認する | 相続放棄は代襲原因ではないため、放棄した人の子がそのことだけを理由に代襲相続人になるわけではない |
| 配偶者の関わり | 途中で亡くなった相続人の配偶者が、その人の相続人として先の相続に関係する場合がある | 「本来の相続人の配偶者」というだけで代襲相続人になるわけではない |
| 整理の起点 | 複数の死亡日を時系列に並べる | 最初の相続開始時点の家族関係と、死亡・欠格・廃除の有無を確認する |
最初の被相続人より前に亡くなったか、後に亡くなったかで整理が変わる
たとえば父より先に長男が亡くなっており、その長男に子がいる場合は、父の相続について代襲相続が問題になります。一方、父が亡くなった時点では長男が生存しており、その後に長男が亡くなったのであれば、数次相続として複数の相続を順番に整理することになります。
数次相続と代襲相続では相続人になる人の範囲が異なる
代襲相続では、本来相続人となる子や兄弟姉妹などが相続開始前に死亡し、または相続欠格・廃除によって相続権を失った場合に、その子などが代わって相続人となります。相続放棄は代襲原因ではないため、放棄した人の子が、その相続放棄を理由として代襲相続人になるわけではありません。一方、数次相続では、途中で亡くなった人自身の相続人を確認するため、その配偶者が関係することもあります。
「亡くなった兄の妻が、なぜ父の相続手続きに関係するのだろう」と感じるケースは、この違いを整理すると理解しやすくなります。
同じ家族構成でも、死亡した順序、遺言の有無、相続放棄、相続欠格・廃除などによって確認すべき範囲が変わることがあります。家系図だけでなく、死亡日や各相続での法的な立場まで含めて確認することが大切です。
数次相続で相続人が増える仕組みを3段階で整理
最初の相続
最初に亡くなった人の相続人を確定
次の相続
途中で亡くなった相続人の相続人を確定
現在の関係者
誰が先の遺産分割に関係するか整理
まず最初に亡くなった人の相続人を確定する
数次相続でも、出発点は通常の相続と同じです。最初に亡くなった人について、遺言の有無や戸籍を確認し、相続人を把握します。ここを曖昧にしたまま次の世代へ進むと、途中で確認をやり直すことになりやすいため、最初の相続を一つずつ確定していきます。
次に途中で亡くなった相続人について新たな相続関係を確認する
先の相続開始後に相続人が亡くなっている場合、その人について新たな相続が発生しています。配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など、民法上の順位に沿って、その時点の相続人を確認します。
兄弟姉妹が高齢のご家族では、相続手続きを進めている間にさらに相続が発生することがあります。だからこそ、現在生存している親族だけを見るのではなく、死亡順をさかのぼって確認する必要があります。
後から相続人になった人も先の遺産分割に関係することがある
途中で亡くなった人が、先の相続について相続人としての地位を持っていた場合、その地位を承継した人が先の遺産分割に関係することがあります。その結果、最初の被相続人とは直接の親子・兄弟姉妹関係にない人が協議に関わる場合もあります。
「相続人が増えた」という感覚は、正確には、後の相続によって先の相続に関係する当事者が増えている状態と考えると分かりやすくなります。
数次相続で戸籍や必要書類が増える3つの理由
数次相続では、「必要書類一覧を一度見れば全部そろう」とは限りません。相続が何回重なっているか、誰が相続人か、どの財産をどこで手続きするかによって必要書類が変わるためです。
最初の被相続人だけでなく途中で亡くなった相続人の戸籍も確認する
相続人を確定するため、最初に亡くなった人だけでなく、途中で亡くなった相続人についても戸籍・除籍・改製原戸籍などを確認することがあります。一般に、相続関係を確認するためには被相続人の出生から死亡までの連続した戸除籍謄本等が重要になります。
相続が二重、三重に発生していれば、その分だけ確認する家族関係も増えます。「戸籍が多すぎる」と感じるのは、同じ書類を重複して集めているからとは限らず、複数の相続関係を証明するために必要となっていることがあります。
相続関係が複数あるため必要な戸籍の範囲が広がりやすい
出生から死亡までの戸除籍謄本等を中心に、相続人を確認します。
その人自身について誰が相続人になるか確認するための戸籍等を整理します。
現在の戸籍、住所を確認する資料、印鑑証明書などが手続きに応じて必要になることがあります。
法定相続情報証明制度を利用すると、戸除籍謄本等の束と相続関係を一覧にした図を法務局へ提出し、認証された一覧図の写しをその後の各種相続手続きに利用できる場合があります。利用できる手続きや追加資料は提出先ごとに確認します。
不動産や預貯金など手続先によって求められる書類を確認する
遺産分割協議書、印鑑証明書、住民票、戸籍、法定相続情報一覧図など、求められる書類は手続先によって異なります。不動産がある場合は相続登記、預貯金であれば金融機関の相続手続きなど、それぞれの窓口の案内に沿って確認します。
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。相続(遺言を含みます)によって不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から原則3年以内に相続登記を申請する必要があります。2024年4月1日より前に開始した相続も義務化の対象となるため、不動産が含まれる場合は登記の専門家である司法書士や管轄法務局への確認も視野に入れて進めます。
数次相続を整理するための4ステップ
死亡順
氏名と死亡日を並べる
相続人
各相続ごとに書き出す
参加者
誰がどの協議に関係するか確認
書類
不足する戸籍・資料を集める
ステップ1|亡くなった人と死亡日を時系列に並べる
最初に、亡くなった人の氏名と死亡日を古い順に書き出します。正確な日付が分からない場合は、戸籍や除籍謄本などで確認します。この時点では財産の分け方まで決める必要はなく、相続が何回発生しているかを見えるようにすることが目的です。
ステップ2|それぞれの相続について相続人を書き出す
第1の相続、第2の相続というように分け、それぞれについて相続人候補を書き出します。その後、戸籍や遺言、相続放棄の有無などを確認し、法的に誰が相続人となるかを整理します。
ステップ3|誰がどの遺産分割に参加するのか整理する
数次相続における遺産分割協議では、第1の相続の共同相続人に加え、途中で亡くなった共同相続人の相続人としてその地位を承継した人など、協議に参加すべき相続人全員の合意が必要になります。単に「今生きている親族全員」を集めるのではなく、各相続における相続放棄などの事情も確認しながら、誰が法的な立場を承継し、協議に参加すべきかを正確に特定します。
相続人間で合意が成立している場合には、その内容を遺産分割協議書として正確にまとめる必要があります。反対に、分け方をめぐる対立や交渉が必要な場合は、行政書士による書類作成の範囲とは別に、弁護士への相談が適することがあります。
ステップ4|必要な戸籍と各手続先を確認してから収集を始める
相続関係が見えてきたら、不足している戸籍や証明書を確認します。すでに取得した戸籍は捨てず、どの相続関係を確認するための書類か分けて保管すると整理しやすくなります。
不動産、預貯金、自動車など財産ごとに手続先が異なるため、相続関係の整理と並行して、必要な手続きと専門家の役割も確認しておくと全体を見通しやすくなります。
数次相続で手続きが止まりやすい4つのケース
途中の相続を確認しておらず、現在の関係者がそろっていないケース。
兄弟姉妹が高齢で、その配偶者や子などをさらに確認する必要があるケース。
転籍、婚姻、改製などで戸籍が複数に分かれ、出生から死亡までを追いにくいケース。
登記名義人から現在まで複数の相続を順に確認する必要があるケース。
相続人を一人見落としていて遺産分割を進められない
遺産分割協議は、協議に参加すべき相続人を正しく確認したうえで進める必要があります。数次相続では途中で亡くなった人の相続人まで確認するため、「家族は全員分かっている」と思っていても、法的な関係者の範囲が想定より広いことがあります。相続放棄などがある場合には、その影響も各相続ごとに確認します。
高齢の兄弟姉妹が亡くなり、その配偶者や子まで関係してきた
兄弟姉妹が相続人となる相続では、さらにその兄弟姉妹が亡くなると、次の相続関係を確認する必要があります。疎遠な親族がいる場合は、連絡を始める前に、まず戸籍上の関係と手続き上の立場を整理しておくと話を進めやすくなります。
戸籍を集めても相続関係を最後までつなげられない
戸籍は、婚姻・離婚・転籍・法改正による改製などで作り替えられることがあります。古い戸籍では手書きの記載もあり、複数の市区町村から取得することもあります。集めた戸籍を年代順に並べ、「誰について、どの期間が不足しているか」を確認すると次に取るべき書類が見えやすくなります。
長年手続きしていない不動産の名義変更で複数の相続が重なっている
法務局も、何世代も相続登記をしていない数次相続では、相続人が増え、多くの書類が必要になると案内しています。登記名義人が祖父母やさらに前の世代のままの場合は、現在の家族だけで判断せず、登記名義人から順に相続関係をたどる必要があります。
数次相続を自分で進める前に確認したい3つの判断基準
- 相続が何回発生しているか、死亡順を説明できる
- それぞれの相続について、相続人候補を把握できている
- 必要な戸籍と、手続先ごとの必要書類を整理できている
この3点がおおむね見えていれば、ご自身で手続きを進められる部分もあります。一方、どこか一つでも分からない場合は、書類をさらに集める前に状況を整理する相談を利用する方法もあります。
特に「誰が相続人なのか確信が持てない」「戸籍はあるが読み解けない」「相続関係図を書いてもつながらない」という場合は、相続人調査や関係図の作成から専門家と確認すると、その後の手続きを整理しやすくなります。
数次相続で迷ったときに相談したい3つのタイミング
誰が相続人なのか判断しにくくなったとき
数次相続では、最初の相続と次の相続を分けて確認する必要があります。HANAWA行政書士事務所では、戸籍などをもとに相続関係を整理し、遺産分割協議書や相続関係説明図等の作成、その前提となる調査について、行政書士の業務範囲で対応します。
戸籍が多く、相続関係を追いにくくなったとき
戸籍がすでに何通も手元にある場合も、そのままお持ちください。「何が足りないか分からない」という段階からでも、死亡順、家族関係、取得済み資料を確認し、次に確認した方がよい事項を整理します。
関係者や手続先が増え、何から着手すべきか分からないとき
数次相続には、遺産分割協議書などの書類作成だけでなく、不動産登記、税務、相続人間の対立などが関係することがあります。不動産登記は司法書士、税務は税理士、紛争性のある内容は弁護士など、必要に応じて適切な専門家の確認が必要です。
行政書士だけで全てを抱えるのではなく、まず現在の状況を整理し、どの手続きを誰に確認するとよいかを明確にすることが、複雑な相続を進めるうえで大切です。
相続関係がまとまっていなくてもご相談いただけます
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、亡くなった方の順番、相続人、必要な戸籍、作成する書類など、確認した方がよい内容を一緒に整理します。
お手元に戸籍、遺言書、固定資産税の納税通知書、金融機関の資料などがあれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。
相続手続きについて相談する数次相続についてよくある4つの質問
数次相続とは、簡単にいうと何ですか?
相続が終わる前に相続人が亡くなり、その人について次の相続が発生している状態です。たとえば父の遺産分割前に相続人である長男が亡くなった場合などが典型例です。
数次相続と代襲相続は同じですか?
同じではありません。大きな違いは死亡の順序と、代襲相続が生じる原因です。最初の被相続人が亡くなった後に相続人が亡くなった場合は数次相続として整理する場面があります。一方、代襲相続は、本来相続人となる子や兄弟姉妹などが相続開始前に死亡し、または相続欠格・廃除によって相続権を失った場合に、その子などが代わって相続人となる制度です。相続放棄は代襲原因にはなりません。
数次相続では亡くなった相続人の配偶者も関係しますか?
関係する場合があります。途中で亡くなった相続人の配偶者が、その人自身の相続人になる場合、先の相続について持っていた立場を承継して遺産分割に関係することがあります。個別の家族関係や相続放棄等によって異なるため、戸籍等で確認します。
戸籍がそろっていなくても相談できますか?
はい。相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。お手元にある戸籍だけでも、どこまで確認できているかを整理できます。資料がない場合は、分かる範囲で亡くなった方の氏名、死亡時期、家族関係などから確認事項を整理します。
制度や登記について確認できる公的情報
数次相続では、家族関係や財産によって必要な手続きが異なります。特に不動産登記の申請方法や最新の制度は、法務省・法務局の案内もあわせて確認してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の相続人、必要書類、遺産分割への参加者、登記・税務上の取扱いは、遺言、死亡順、家族関係、相続放棄、相続欠格・廃除、財産内容などによって異なります。個別の判断が必要な場合は、行政書士の業務範囲に加え、司法書士・税理士・弁護士など適切な専門家へ確認してください。