改葬許可申請の基本
申請先・申請者・必要書類を一人で判断する実務マニュアル
「どこへ申請するのか」「誰を申請者にするのか」「誰の遺骨について申請するのか」「現在墓地と改葬先から何を確認するのか」。新人行政書士が改葬許可申請を受任したときに迷いやすい論点を、法令上の原則と自治体ごとの運用を分けながら、実務の順番に沿って整理します。
この記事で到達できること
この回では、新人行政書士が、初回相談から申請準備、改葬許可証の取得、次工程への引継ぎまでを自ら組み立てられる状態を目指します。
- 予定している移動が墓地、埋葬等に関する法律上の「改葬」に当たるか整理する。
- 自宅保管中の焼骨を初めて納める場合など、改葬と異なる場面を区別する。
- 被改葬者の現在地から法定の許可権者と実際の提出窓口を確認する。
- 複数の現在地がある場合、現在地ごとに許可権者・管理者証明・必要書類を整理する。
- 申請者と墓地使用者または焼骨収蔵委託者との関係を確認する。
- 被改葬者ごとに氏名、死亡年月日、現在の埋葬・埋蔵・収蔵状況を整理する。
- 現在墓地等の管理者による証明と、改葬先の受入資料を区別する。
- 法令上の基本書類と自治体が追加で求める書類を区別する。
- 行政書士への委任状と墓地使用者等の承諾書を区別する。
- 管理者証明が得られない場合の自治体相談と、紛争時の他士業連携を判断する。
- 許可取得後、取り出し・移送・埋蔵・収蔵へ安全に接続する。
- おひとりさま・おふたりさま特有の実行者、連絡先、意思確認を記録する。
この業務が必要になる場面
- 民間霊園から別の民営霊園の永代供養墓へ焼骨を移す。
- 寺院墓地から民営納骨堂へ焼骨を移す。
- 遠方の先祖代々墓から、居住地近くの墓地へ焼骨を移す。
- 複数の墓地・納骨堂に分かれている親族の焼骨を一つの墓へまとめる。現在地が複数の自治体に所在する場合は、現在地ごとに改葬許可申請が必要となることがある。
- 後継者がいないため、一般墓から永代供養墓等へ焼骨を移す。
- おひとりさまが、自分の死後に親の墓を管理する人がいなくなることを考え、生前に親の焼骨を永代供養墓へ移す。
- 子のいない夫婦が、双方の実家の墓を整理し、将来の祭祀管理を整える。
- 寺院墓地の墓所返還に伴い、焼骨を別の墓地へ移す。
複数の墓地・納骨堂にある焼骨を一つの改葬先へ移す場合は、現在地ごとに改葬該当性、管理者証明、申請先自治体、必要書類を確認します。現在地が複数の市区町村にまたがる場合は、原則として各現在地の市町村長または特別区の区長へ、それぞれ申請する構造になります。
「墓じまい」を一つの手続として扱わない
相談者は「墓じまいをしたい」と一言で相談することがありますが、実務では、墓石撤去、墓所返還、墓地使用関係、焼骨の移動、改葬許可、新しい墓地・納骨堂との契約、取り出し・移送・納骨を分けて確認します。墓石の撤去と墓埋法上の改葬は同義ではありません。
公営墓地では許可と墓地管理手続を分けて考える
市営・町営等の公営墓地から改葬する場合も、墓埋法第5条上の改葬許可権者は、死体または焼骨の現に存する地の市町村長です。ただし、公営墓地では墓地返還、使用権承継、管理記録確認、工事届等を同じ担当課や霊園管理事務所で処理する場合があります。法定の改葬許可と、公営墓地独自の管理手続を区別したうえで、実際の窓口・様式を確認します。
最初に押さえる基本知識
改葬とは何か
墓地、埋葬等に関する法律第2条第3項の「改葬」は、埋葬した死体を他の墳墓に移し、または埋蔵・収蔵した焼骨を他の墳墓または納骨堂に移すことです。死体の場合と焼骨の場合で移動先の法的な表現が異なるため、単に「遺骨などを別の場所へ移すこと」とだけ覚えないようにします。
自宅保管中の焼骨を初めて納める場合
火葬後の焼骨を自宅等で保管し、墓地や納骨堂へ一度も埋蔵・収蔵していない場合に、初めて墓地・納骨堂へ納める行為は、通常、墓地・納骨堂間の改葬とは区別して整理します。必要な許可証や提出書類は、納骨先管理者と関係自治体へ確認します。
分骨との区別
焼骨の一部を別の墓地等へ納める場合は分骨に該当することがあります。ただし、現在の焼骨を今から分けるのか、既に分骨済みか、残りを現在地に残すのか、現在どこに埋蔵・収蔵されているのかによって取扱いが変わります。「一部だけ移す=必ず分骨手続」と判断せず、現在の管理者と関係自治体へ確認します。
法定の許可権者と実際の提出窓口
改葬許可の法定の許可権者は、死体または焼骨の現に存する地の市町村長(特別区では区長)です。依頼者住所地、本籍地、死亡地、火葬地、改葬先所在地ではありません。
一方、実際の提出窓口は、市役所本庁、区役所、保健所、生活衛生担当課、霊園管理事務所等のことがあります。法定の許可権者と受付窓口を分けて確認します。
複数の現在地がある案件
同じ改葬先へまとめる場合でも、焼骨の現在地がA市とB市に分かれていれば、現在地ごとに許可権者が異なります。被改葬者または現在墓地・納骨堂ごとに案件管理表を分け、各自治体の申請様式、管理者証明、承諾書、追加資料、許可証の交付枚数と提出先を確認します。
法令上の基本書類
墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条第2項では、改葬許可申請書に添付する基本書類として、主に次を定めています。
- 現在の墓地または納骨堂の管理者が作成した、埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面。
- 申請者が墓地使用者または焼骨収蔵委託者ではない場合、墓地使用者等の改葬についての承諾書、またはこれに対抗できる裁判に関する所定の書面。
- その他、市町村長が特に必要と認める書類。
受入証明書、改葬先の使用許可証、戸籍、本人確認書類、返信用封筒等は、全国一律に第1号・第2号で要求される書類ではありません。自治体が追加で求める場合があるため、公式案内を確認します。
墓地使用者等の承諾書と行政書士への委任状
申請者が墓地使用者または焼骨収蔵委託者でない場合は、施行規則上、墓地使用者等の改葬についての承諾書等が問題となります。一方、行政書士への委任状は、依頼者と行政書士との代理・委任関係を示す書類です。目的が異なるため、行政書士への委任状が当然に墓地使用者等の承諾書に代わるものではありません。
管理者の証明が得られないとき
現在墓地等の管理者による証明を得るのが原則ですが、これにより難い特別の事情がある場合、施行規則は市町村長が必要と認める「これに準ずる書面」を予定しています。証明を得られないときは、理由と事実関係を整理し、申請先自治体へ代替資料の可否を事前相談します。権利関係や遺骨の所在そのものに争いがある場合は、通常の申請案件から切り分けて他士業連携を検討します。
改葬許可証取得後の基本
墓地の管理者は、改葬許可証等を受理した後でなければ焼骨を埋蔵させることができず、納骨堂の管理者も改葬許可証等を受理した後でなければ焼骨を収蔵できません。改葬許可証を取得する前に改葬先への移送・埋蔵・収蔵を行わず、墓からの取り出し時期も自治体、現在墓地管理者、改葬先管理者、石材店等と調整し、許可証交付後に進める工程を基本にします。
実務の進め方
- 依頼内容を「現在地・被改葬者・申請者・墓地使用者等・改葬予定先」に分解する。
- 今回の移動が改葬、初回納骨、分骨のいずれに関係するか整理する。
- 被改葬者ごと、または現在墓地・納骨堂ごとに現在地を確定する。
- 現在地ごとに法定の許可権者と実際の提出窓口を確認する。
- 各自治体の最新様式、申請単位、追加書類、提出方法を確認する。
- 申請者と墓地使用者等の関係を確認する。
- 被改葬者ごとに情報を整理する。
- 現在地ごとに各墓地・納骨堂管理者から事実証明を取得する。
- 改葬先の受入れと、自治体が求める改葬先資料を確認する。
- 行政書士への委任関係を整える。
- 現在地ごとの自治体へ申請する。
- 改葬許可証を受領し、記載内容を確認する。
- 取り出し、移送、改葬先への許可証提出、埋蔵・収蔵へ接続する。
現在地を正確に確定する
墓地・納骨堂の正式名称、所在地、墓所番号等、管理者を確認します。名称だけで自治体を決めません。市境・町境付近の霊園や、名称に自治体名が入っている民間霊園では特に所在地を確認します。
複数の現在地がある場合は、被改葬者一覧に「現在地自治体」「現在管理者」「申請先」「証明取得先」の欄を設けると整理しやすくなります。
自治体の最新運用を確認する
- 担当部署と提出窓口
- 最新の申請様式
- 被改葬者1名ごとか、複数名を1枚に記載できるか
- 氏名不詳・合葬時の記載方法
- 管理者証明を申請書内で行うか、別紙を使えるか
- 申請者が墓地使用者等と異なる場合の書類
- 改葬先資料、戸籍、本人確認資料等の追加要否
- 行政書士への委任状の要否・様式
- 窓口、郵送、オンライン等の申請方法
- 手数料、交付方法、処理日数の案内
被改葬者ごとに整理する
「遺骨3体」といった物理的な数量だけで管理せず、誰について申請するかを整理します。申請書を何枚作るかは自治体様式・案内に従います。
| No. | 被改葬者 | 死亡年月日 | 現在の状態 | 現在地 | 申請先 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 山田太郎 | 1988年5月1日 | 焼骨埋蔵 | A市・A霊園 | A市 | 祖父 |
| 2 | 山田花子 | 1995年3月10日 | 焼骨埋蔵 | A市・A霊園 | A市 | 祖母 |
| 3 | 山田一郎 | 2001年8月3日 | 焼骨収蔵 | B区・B納骨堂 | B区 | 父 |
| 4 | 氏名不詳 | 不詳 | 焼骨らしきもの | A市・A霊園 | 要照会 | 台帳照合 |
現在地ごとに管理者証明を取得する
各墓地・納骨堂管理者から、申請対象となる被改葬者について埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面を取得します。証明書の対象者、申請書の対象者、実際の遺骨の状況が一致しているか確認します。
改葬先について確認する
改葬先の確保は、受入可能性、契約条件、納骨方法、必要書類を具体化するため、実務上先に進めておくと整理しやすくなります。ただし、受入証明書等は全国一律の法定添付書類ではありません。改葬先が未確定の場合は、受入れの可否、必要書類、申請先自治体の取扱いを確認したうえで申請時期を判断します。
申請前の最終照合
被改葬者、申請者、墓地使用者等、現在地、改葬場所、管理者証明、承諾書等、自治体追加書類の整合を確認します。現在地が複数の自治体にある場合は、各現在地を管轄する市町村長または特別区の区長へ、自治体ごとに整理して申請します。
自治体への電話照会例
「改葬許可申請について確認したいのですが、現在、貴市内の○○霊園に埋蔵されている○名分の焼骨を△△霊園へ改葬する予定です。申請書の単位、管理者証明の方法、申請者が墓地使用者と異なる場合の追加書類、改葬先資料、戸籍、委任状、郵送申請の可否をご教示ください。」
複数の墓地・納骨堂から同一の改葬先へ移す案件では、現在地ごとに管轄自治体へ照会し、各自治体について申請書の単位、管理者証明、承諾書、改葬先資料その他の追加書類を確認します。電話照会では日時、担当部署、担当者、質問と回答を業務記録に残します。
ヒアリング項目
依頼者・申請予定者
- 氏名、住所、生年月日、連絡先
- 本人確認
- 被改葬者との関係
- 墓地使用者等との関係
- 改葬意思
- 行政書士への委任意思
現在の墓地・納骨堂
- 正式名称、所在地
- 墓所番号等
- 管理者、経営主体
- 墓地使用者・焼骨収蔵委託者
- 使用許可証等
- 埋蔵・収蔵記録
被改葬者
- 氏名
- 死亡年月日
- 埋葬・火葬場所、年月日
- 現在の埋葬・埋蔵・収蔵状況
- 申請対象か
- 氏名不詳・合葬の有無
焼骨の来歴
- 火葬後すぐ納骨したか
- 過去の改葬歴
- 自宅保管歴
- 現在自宅保管か
- 分骨済みか
- 一部だけ移す予定か
改葬先
- 名称、所在地、管理者
- 墓地か納骨堂か
- 契約者
- 受入れの状況
- 受入証明等の発行可否
- 改葬許可証の提出方法
親族・権利関係
- 現在墓地の使用名義
- 名義人死亡の有無
- 祭祀承継関係
- 親族間の強い対立の有無
- 寺院等との紛争の有無
- 利益相反の有無
おひとりさま
- 本人が墓地使用者か
- 本人の意思を記録したか
- 将来の墓守が不要な方式か
- 死後の実行者
- 緊急連絡先
- 書類保管場所
おふたりさま
- 双方の先祖墓を分けて整理
- 夫婦自身の将来墓
- 双方の意思
- 追加納骨条件
- 最後に亡くなった方の実行者
- 関係書類の共有
判断の流れ
- 現在移すものが、埋葬された死体、墓地に埋蔵された焼骨、納骨堂に収蔵された焼骨、自宅保管焼骨のどれか確認する。
- 全部を移すか一部を移すか確認し、一部なら分骨を含め取扱いを照会する。
- 被改葬者ごとの現在地を確定する。
- 現在地ごとに法定許可権者と提出窓口を確認する。
- 改葬先が未確定なら、受入れと自治体の取扱いを確認して申請時期を判断する。
- 申請者が墓地使用者等か確認する。
- 異なる場合は法令上の承諾書等と、自治体追加書類を確認する。
- 墓地使用名義が死亡者名義等なら、使用権承継等の管理手続を確認する。
- 管理者証明を取得し、取得困難なら自治体へ代替資料を相談する。
- 法令上の基本書類と自治体追加書類をそろえ、現在地ごとに申請する。
申請者が墓地使用者等でない場合
墓地使用者等の改葬についての承諾書または法令所定の裁判関係書面を原則として確認します。そのうえで、戸籍、墓地使用許可証、本人確認資料、行政書士への委任状等の追加書類を自治体案内に従って確認します。
墓地使用名義が亡くなった人のままの場合
市営墓地等では墓地使用権の承継手続を求める場合があります。誰が現在の使用者として扱われるのか、承継手続を先に行うかを墓地管理者へ確認します。権利帰属に争いがあれば、申請手続だけで解決しようとせず、必要な専門家へ連携します。
作成・確認する書類
| 書類 | 区分 | 主な作成・発行者 | 目的・注意点 |
|---|---|---|---|
| 改葬許可申請書 | 法令上の基本 | 申請者 | 申請自治体の最新様式を確認 |
| 埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面 | 法令上の基本 | 現在の墓地・納骨堂管理者 | 被改葬者ごとに証明対象を照合 |
| 墓地使用者等の承諾書 | 条件付き法定書類 | 墓地使用者等 | 申請者が墓地使用者等でない場合。委任状とは別 |
| 裁判に関する所定書面 | 条件付き法定書類 | 裁判所関係 | 承諾書に代わる法令上の場面 |
| 受入証明書 | 自治体追加の場合あり | 改葬先管理者 | 全国一律必須ではない |
| 改葬先使用許可証・契約書等 | 自治体追加の場合あり | 改葬先 | 改葬場所確認資料として扱う自治体あり |
| 現墓地の使用許可証 | 自治体追加・実務確認 | 現墓地管理者 | 使用者・墓所確認。全国一律必須ではない |
| 戸籍・除籍等 | 自治体追加の場合あり | 市区町村 | 死亡・続柄確認等。全国一律必須ではない |
| 本人確認書類 | 自治体追加・業務管理 | 本人 | 提出・保存要否を個別確認 |
| 行政書士への委任状 | 自治体運用・委任関係 | 依頼者 | 承諾書とは別。対象手続を特定 |
| 返信用封筒等 | 郵送事務 | 申請者等 | 郵送申請時。全国一律ではない |
| 改葬許可証 | 許可後交付 | 市町村長 | 改葬先管理者への提出・受理方法を確認 |
現在墓地側と改葬先側を混同しない
本人・管理者・自治体への説明文例
現在墓地管理者への証明依頼
「現在貴霊園に埋蔵されている下記被改葬者について改葬許可申請を予定しております。申請先自治体への提出に必要となるため、当該被改葬者について、埋蔵の事実を証する書面の発行または申請書所定欄への証明をお願いしたく存じます。」
改葬先への確認
「現在○○霊園に埋蔵されている焼骨について、貴施設への改葬を予定しております。受入れに際して必要となる書類、改葬許可証の提出方法及び受入証明書等の発行可否をご教示ください。」
申請者と墓地使用者が異なる場合の自治体照会
「現在、貴市内の○○霊園に埋蔵されている被改葬者○名について△△霊園への改葬を予定しています。申請者は現在の墓地使用者とは異なります。墓地使用者の承諾書に加えて、貴市への申請上必要となる戸籍、墓地使用許可証、改葬先資料、行政書士への委任状その他の追加書類をご教示ください。」
依頼者への工程説明
「改葬許可証を取得する前に、改葬先へのご遺骨の移送、埋蔵または収蔵は行わないように進めます。現在のお墓から取り出す時期についても、申請先自治体、現在の墓地管理者、改葬先管理者、石材店等と調整し、原則として許可証交付後に進める工程としておくと整理しやすくなります。」
相談時の安心できる案内
「相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在のお墓がどこにあり、どなたのご遺骨が納められているか、改葬先の希望があるかを伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に墓地使用許可証や改葬先の資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。」
専門家・関係機関との連携
申請先自治体
許可担当部署、提出窓口、様式、管理者証明、追加書類、提出・交付方法を確認します。
現在墓地・納骨堂管理者
被改葬者の記録、墓地使用者等、埋葬・埋蔵・収蔵状況、証明、取り出し時期、返還等を確認します。
改葬先管理者
受入可否、必要資料、改葬許可証の提出・受理方法、納骨日程を確認します。
弁護士
祭祀承継、墓地使用権、親族間対立、寺院・管理者との金銭請求等が法律上の紛争となった場合に連携します。
司法書士
墓じまいに関連して相続登記やその他不動産登記が必要となる場合に連携します。
石材店等
墓石撤去、カロート開閉、遺骨取り出し、原状回復と許可取得の工程を調整します。
行政書士の業務範囲を整理する
行政書士は、自らの業務範囲内で行政手続に関する書類作成・提出、事実関係の整理、必要書類の確認、非紛争的な事務連絡等を行います。親族間、墓地使用権、祭祀承継、寺院・墓地管理者との金銭請求等について権利義務に争いがあり、法律事件としての交渉、和解、代理その他の紛争処理が必要となる場合は、弁護士法第72条に抵触する法律事務を行わないよう弁護士へ連携します。
新人行政書士が注意したい点
| 注意したい考え方 | 実務での整え方 |
|---|---|
| 依頼者住所地へ申請する | 死体・焼骨の現在地から許可権者を確認します。 |
| 改葬先所在地へ申請する | 現在地の市町村長・特別区長が基本です。 |
| 本籍地で申請先を決める | 本籍と許可権者の決定基準を分けます。 |
| 受付窓口と法定許可権者を同一視する | 法定権者と担当課・区役所・霊園事務所等を分けます。 |
| 公営墓地では管理者が法定許可権者になると考える | 墓埋法上の許可権者と公営墓地管理手続を区別します。 |
| 墓地使用者と相続人を当然に同一視する | 墓地使用・祭祀関係を別に確認します。 |
| 長男だから申請できると考える | 申請者と墓地使用者等の関係、承諾書等を確認します。 |
| 行政書士への委任状が承諾書の代わりになると考える | 委任関係と改葬への承諾を分けます。 |
| 受入証明書が全国一律必須と考える | 自治体が追加で求めるか確認します。 |
| 戸籍は必ず提出すると考える | 全国一律の基本添付と自治体追加書類を区別します。 |
| 「遺骨1体につき1枚」と全国共通で覚える | 被改葬者ごとに情報整理し、申請単位は自治体様式を確認します。 |
| 一部だけ移すなら必ず分骨と判断する | 現在状態、分け方、残りの扱いを確認します。 |
| 管理者が証明しなければ申請不能と判断する | 理由を整理し、代替書面の可否を自治体へ相談します。 |
| 複数の墓地から一つへまとめるので申請も一件と考える | 現在地ごとに許可権者・管理者証明・申請を整理します。 |
| 許可前の墓開け自体を一律に法律違反と説明する | 改葬許可と法14条の制度構造を説明し、工程を関係者と調整します。 |
トラブルを防ぐ整え方
- 「墓じまい」という言葉を、墓石撤去と改葬手続に分けて整理した
- 被改葬者ごとに現在地と管理者を確認した
- 複数現在地では自治体ごとに案件管理を分けた
- 申請者と墓地使用者等を別項目で確認した
- 現在墓地側の証明と改葬先資料を混同していない
- 法令上の基本書類と自治体追加書類を区別した
- 自治体への電話回答を記録した
- 管理者証明の対象と申請対象を照合した
- 改葬許可証取得を次工程への確認点にした
- 取り出し時期を現在墓地管理者・関係業者と調整した
- 依頼者への重要な工程説明を記録した
- 利益相反と紛争性を確認した
おひとりさま案件での記録
本人以外に墓の場所を知る人がいるか、本人死亡後に手続を引き継ぐ人がいるか、改葬後の管理が不要な仕組みか、緊急連絡先は誰かを確認します。親族が少ないこと自体を問題視するのではなく、本人の意思と実行体制を具体的に記録します。
おふたりさま案件での整理
夫側先祖墓、妻側先祖墓、夫婦自身の将来の納骨先が別々に存在することがあります。「夫婦の終活」と一括せず、現在地・被改葬者・使用者・申請先を墓地ごとに整理します。
ケーススタディ|A市の民営霊園からB県の永代供養墓へ改葬する
依頼者:山田一郎、68歳、東京都在住
現在墓地:A市内の民営霊園「Aメモリアルパーク」
墓地使用者:山田一郎
被改葬者:父・山田太郎、母・山田花子
改葬先:B県所在の民営永代供養墓「B霊園」
相談内容:「子どもがいないので、現在のお墓を整理し、両親の遺骨を永代供養墓へ移したい。」
本人確認と意思確認
山田一郎本人について、本人確認、現在墓地使用者であること、本人が改葬を希望していること、改葬理由、改葬先、行政書士への委任意思を確認します。本人確認書類の写しの保存は事務所規程等に従います。
現在地から許可権者を確認
父母の焼骨はA市内の民営霊園に埋蔵されているため、改葬許可の法定の許可権者はA市長です。A市公式サイトで実際の提出窓口を確認します。A市の改葬許可事務と、Aメモリアルパークの墓地管理事務を分けて整理します。
A市へ運用を確認
- 申請書の単位
- 父母を別紙・別申請とするか
- 管理者証明の方式
- 改葬先資料の要否
- 戸籍類・本人確認資料の要否
- 行政書士への委任状
- 提出・交付方法
被改葬者を整理
| No. | 被改葬者 | 死亡年月日 | 現在の状態 | 現在墓地 | 改葬先 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 山田太郎 | ○年○月○日 | 焼骨埋蔵 | Aメモリアルパーク | B霊園 |
| 2 | 山田花子 | ○年○月○日 | 焼骨埋蔵 | Aメモリアルパーク | B霊園 |
現在墓地管理者から事実証明を取得
Aメモリアルパーク管理者から、申請書に記載する父・山田太郎、母・山田花子について、それぞれ埋蔵の事実を証する書面を取得します。証明書の対象者、申請書の対象者、実際に墓所にある焼骨が一致しているか確認します。管理台帳に別の被葬者が記録されていれば、申請対象を再整理します。
改葬先を確認
B霊園へ父母の焼骨の受入れを確認し、受入証明書等の発行可否、使用許可証、改葬許可証の提出方法、納骨日程を確認します。A市がこれらを申請添付書類として求めるかはA市の案内に従います。
申請者と墓地使用者等を確認
この事例では申請者・墓地使用者とも山田一郎なので、申請者が墓地使用者等以外である場合の承諾書の問題は通常生じません。仮に墓地使用者が兄で申請者が山田一郎なら、墓地使用者の改葬についての承諾書等を確認します。
行政書士への委任関係を整える
行政書士が申請書作成・提出・許可証受領等を行う場合は、A市の運用に従って委任状等を準備し、委任者、受任者、対象手続を特定します。
A市へ申請する
この事例は父母双方の現在地が同一のA市内なので、A市長への申請として整理します。A市指定の方法で、申請書、Aメモリアルパーク管理者の証明、その他A市指定書類を提出し、提出内容を案件ファイルに記録します。
改葬許可証を取得して次工程へ
許可証の被改葬者、現在地、改葬場所等を確認します。許可取得後、Aメモリアルパーク、石材店、依頼者、B霊園と日程を調整します。B霊園管理者への改葬許可証の提出・受理を確認したうえで納骨へ進みます。遺骨の取り出し・移送・納骨の詳細は11-12で扱います。
実務チェックリスト|改葬許可申請基本確認
依頼者・申請者
- 依頼者と申請予定者
- 本人確認
- 改葬意思・意思確認記録
- 被改葬者との関係
- 墓地使用者等との関係
- 行政書士への委任範囲
改葬該当性
- 現在の死体・焼骨の所在
- 墓地・納骨堂にあるか
- 自宅保管焼骨ではないか
- 全部か一部か
- 分骨の可能性
現在墓地等
- 正式名称・所在地
- 管理者・経営主体
- 墓地使用者等
- 使用許可証等
- 埋蔵・収蔵状況
- 複数現在地なら現在地ごとに整理
許可権者・窓口
- 死体・焼骨の現に存する地
- 法定の許可権者
- 実際の提出窓口
- 公営墓地管理手続との区別
- 複数現在地ごとの許可権者・窓口
- 現在地ごとの申請要否
自治体運用
- 公式サイト・最新様式
- 申請書の単位
- 複数被改葬者の記載
- 氏名不詳・合葬の扱い
- 管理者証明方式
- 提出・交付方法
墓地使用者等
- 申請者と同一か
- 異なる場合の承諾書等
- 委任状と承諾書を区別
- 名義人死亡・承継問題
被改葬者
- 氏名
- 死亡年月日
- 埋葬・埋蔵・収蔵状況
- 申請対象一覧
- 墓誌・台帳との照合
- 氏名不詳者
管理者証明
- 現在地ごとに取得先確認
- 証明対象と申請対象の一致
- 取得困難理由
- 必要時は代替資料を自治体相談
改葬先
- 改葬先・受入候補
- 受入可否
- 許可証提出方法
- 受入証明等の添付要否
- 全国一律必須と誤認していない
添付資料
- 法令上の基本書類
- 自治体追加書類
- 戸籍類の要否
- 改葬先資料の要否
- 本人確認資料
- 行政書士への委任状
複数現在地
- 現在地ごとに整理
- 管理者証明の必要性
- 自治体ごとの申請
- 各許可証の枚数
- 改葬先での提出先・提出方法
業務範囲
- 親族間紛争
- 祭祀承継の争い
- 墓地使用権の争い
- 金銭請求の争い
- 弁護士連携の要否
- 利益相反
許可後
- 許可証受領・内容確認
- 許可前に改葬先へ移送・埋蔵・収蔵していない
- 取り出し時期を調整
- 現在墓地へ連絡
- 改葬先へ連絡
- 11-12へ接続
確認テスト
次回への接続
本回では、何が改葬に当たるか、現在地から許可権者をどう判断するか、申請者と墓地使用者等をどう整理するか、現在墓地管理者の証明と改葬先資料をどう区別するか、複数現在地をどう処理するかを確認しました。
次回11-9「改葬許可申請書の記載事項」では、墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条第1項に基づく、死亡者の本籍、住所、氏名・性別、死亡年月日、埋葬または火葬の場所・年月日、改葬の理由、改葬の場所、申請者の住所・氏名・死亡者との続柄・墓地使用者等との関係を、どの資料から確認して記載するかを扱います。
埋蔵証明書・受入証明書等の具体的取得は11-10、遺骨の取り出し・移送・納骨は11-12で扱います。
本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、現在地、墓地・納骨堂の管理規則、自治体運用、墓地使用関係、親族関係等により確認事項が異なります。
参考にした公的情報
2026年8月10日時点の厚生労働省掲載法令・通知を確認し、改葬の定義、許可権者、改葬許可証、管理者の義務、施行規則第2条の申請事項・添付書類、2026年施行改正の内容へ反映しています。