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見守り契約業務 7-11

見守り契約書の条項設計
新人行政書士が一人で作成・運用する実務手順

見守り方法と頻度、連絡不能時、緊急連絡先、医療・介護連携、個人情報、報酬、鍵、解除、任意後見への接続まで、契約書へ何をどのように書くかを実務順に整理します。

基本条項連絡不能個人情報鍵・入室報酬・記録後見への接続

最初に押さえる考え方

見守り契約書は、定期的に電話や訪問をすることだけを約束する書面ではありません。平常時に何を確認するか、本人と連絡が取れないときに誰へ連絡するか、異変を感じたときにどの機関へつなぐか、本人の判断能力が変化したときに次の支援へどう接続するかを、本人と受任者が共有するための実務手順書でもあります。

見守り契約は、法律上内容が一律に定められた名称付きの契約ではありません。個別の合意により、定期連絡、定期訪問、安否確認、記録、関係者への連絡等を定めます。そのため、ひな形の条文を並べるだけでは足りず、本人の生活、健康、支援者、住居、通信手段、既存契約に合わせて設計する必要があります。

図解|契約書を実務で機能させる八つの設計
目的何のために見守りを行うかを明らかにします。
方法電話、訪問、メール等の手段を特定します。
頻度曜日、時間帯、回数、振替を定めます。
確認内容体調、生活、受診、困りごと等を整理します。
不通時対応再連絡、緊急連絡先、訪問、通報の順序を決めます。
情報共有相手、目的、情報、緊急時の条件を定めます。
費用・記録報酬、実費、追加対応、保存方法を定めます。
変更・終了解除、死亡、後見開始等の取扱いを定めます。
「定期的に見守る」だけでは、双方の理解がそろいません電話か訪問か、月1回か週1回か、何時に連絡するか、不通時に何回かけ直すか、誰へ何を伝えるかが分からないためです。方法、頻度、確認内容、段階的な対応、費用を具体的に記載します。

この記事で到達できること

構造を組める

契約本文、別紙、事務所内部基準を分け、変更しやすく安全な書面構成を作れます。

条項を書ける

見守り方法、不通時対応、情報共有、報酬、記録、解除等を具体的な文言にできます。

境界を示せる

医療同意、介護、財産管理、身元保証、24時間監視等を見守り業務と区別できます。

次の支援へつなげる

判断能力の変化を把握した際、任意後見監督人選任申立てや法定後見の検討につなげられます。

この業務が必要になる実務場面

おひとりさまの継続的な安心を整える

  • 一人暮らしで、近くに頼れる親族がいない。
  • 転倒や急病があったときに発見が遅れることを心配している。
  • 将来の認知機能低下に備えて任意後見契約も検討している。
  • 死後事務委任契約はあるが、生前の変化を把握する人がいない。
  • 親族へ伝えてよい情報と、伝えたくない情報を整理したい。

この場合は、受任者だけに支援が集中しないよう、緊急連絡先、医療・介護関係者、地域包括支援センター等との連携可能性も確認します。

おふたりさまの同時対応不能に備える

夫婦、事実婚、同性パートナー、きょうだい等の二人世帯でも、一方が入院すると他方の生活が立ち行かなくなることがあります。二人を一つの契約にまとめると、各人の意思、秘密、報告先、費用が曖昧になりやすいため、原則として本人ごとに契約内容と記録を整理します。

親族が費用を負担する

費用負担者、契約当事者、見守りを受ける本人、報告を受ける人は別の立場です。親族が費用を支払っていても、本人の生活情報を当然に受け取れるわけではありません。本人の意思確認を行い、報告先、報告条件、共有情報を別紙で明確にします。

関連契約と組み合わせる

見守り契約は、財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約等と組み合わせることがあります。ただし、見守り契約だけで預金払戻し、支払代行、施設入所契約、医療同意、死亡後の葬儀・納骨等を行う根拠にはなりません。役割、開始時期、終了時期、報酬、情報共有を契約ごとに整理します。

基本知識

契約の性質と受任者の役割

見守り契約は、契約内容に応じて委任又は準委任として整理されることが一般的です。受任者は、契約で定めた方法と頻度により、本人の状況を確認し、記録し、必要な連絡を行います。本人の生命・身体の安全を常時保証する契約ではありません。

「何かあれば必ず発見できる」「孤独死を防げる」「24時間いつでも駆け付ける」といった説明は、実際の体制と合わない期待を生みます。営業時間、連絡間隔、訪問可能地域、時間外対応、警備会社等との違いを丁寧に説明します。

本人確認・意思確認

契約前に、顔写真付き公的証明書等で本人確認を行います。契約意思は本人へ直接確認し、親族が同席している場合も、可能な範囲で本人だけと話す時間を設けます。誰と契約するか、何を依頼するか、費用、不通時の対応、情報共有、鍵、終了方法を本人が理解しているかを確認し、面談記録へ残します。

理解が一貫しない、親族の意向だけで進んでいる、契約の意味を説明できない等の事情がある場合は、急いで締結せず、医師、地域包括支援センター、弁護士、司法書士等との連携を検討します。

利益相反と権限集中

見守り受任者が、財産管理受任者、任意後見受任者、遺言執行者、死後事務受任者等を兼ねる場合は、本人にとって支援窓口が一つになる利点がある一方、権限と情報が集中します。契約、報酬、預り品、記録を分け、第三者による確認や複数名対応を取り入れることも検討します。

個人情報と健康情報

病歴、診療、調剤等は要配慮個人情報に該当し得ます。取得する情報、利用目的、保管、閲覧者、第三者提供、保存期間を明らかにし、原則として本人の同意を得ます。生命・身体・財産の保護に必要で、本人の同意を得ることが難しい場面では、法令上の例外が認められる場合がありますが、提供する情報は必要最小限とし、理由と経過を記録します。

任意後見は自動的に始まらない

任意後見契約は、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。見守り受任者が「認知症になった」と判断した日から自動的に切り替わるものではありません。契約書には、変化を把握した際の連絡先、相談、申立て検討への接続を書きます。

実務の進め方

図解|契約書作成から運用開始まで
  1. 本人確認を行い、本人自身の希望と契約意思を確認します。
  2. 生活、健康、住居、通信手段、支援者、既存契約を把握します。
  3. 見守りで実現したい目的と、対象外業務を整理します。
  4. 電話、訪問等の方法、頻度、確認内容を見守り計画に落とします。
  5. 連絡不能、異変、緊急時の対応を段階化します。
  6. 情報共有先、鍵、報酬、実費、記録、解除・終了を決めます。
  7. 契約本文、別紙、同意書、内部対応基準を作成します。
  8. 本人へ平易な言葉で説明し、署名押印前に疑問を確認します。
  9. 開始後1~3か月を目安に、本人の負担と運用の実効性を見直します。

三層に分けて作る

書面 記載する内容 考え方
契約本文 目的、業務範囲、基本的権利義務、報酬、個人情報、解除・終了等 簡単には変えない事項を置きます。
別紙 曜日、時刻、緊急連絡先、医療機関、確認項目、報酬表等 生活変化に応じて書面合意で更新します。
内部基準 緊急度、通報基準、記録方法、鍵管理、担当者不在時の対応等 事務所内で判断をそろえるために用います。

説明を重点的に行う条項

  • 電話や訪問の曜日、時間帯、回数、振替。
  • 不通時に何回再連絡し、誰へ連絡するか。
  • 本人のどの情報を、誰へ、どの場面で共有するか。
  • 鍵を預かる場合の保管、使用、立会い、返還。
  • 月額報酬に含まれる業務と追加費用。
  • 時間外対応、現地急行、医療同意、介護、財産管理を含むか。
  • 判断能力が変化した際の任意後見・成年後見への接続。
  • 本人死亡時の契約終了と、死後事務との区別。

ヒアリング項目

本人・意思

  • 本人確認資料
  • 契約を希望する理由
  • 一番心配なこと
  • してほしいこと
  • してほしくないこと
  • 親族等からの圧力の有無

生活・健康

  • 同居者、日常の連絡相手
  • 持病、服薬、転倒歴
  • 通院、介護サービス
  • 電話・スマートフォン利用
  • 聴力、視力、会話方法
  • 外出、旅行、入院予定

見守り方法

  • 電話、訪問、メール等
  • 曜日、時間帯、回数
  • 祝日、休業日の振替
  • 本人都合の変更方法
  • 長期不在時の休止
  • 開始後の見直し時期

確認内容

  • 体調、食事、水分、睡眠
  • 服薬、転倒、受診
  • 介護サービス利用
  • 不審電話、契約、金銭不安
  • 郵便物、生活環境
  • ペット、災害時の事情

緊急連絡先

  • 氏名、関係、連絡順位
  • 連絡可能時間
  • 現地対応の可否
  • 鍵保有の有無
  • 共有してよい情報
  • 指定された人の了解

医療・介護

  • かかりつけ医、病院
  • 担当ケアマネジャー
  • 訪問看護・介護事業所
  • 地域包括支援センター
  • 薬局
  • 共有する情報と条件

不通時の希望

  • 再連絡回数と間隔
  • メッセージ送信
  • 緊急連絡先への連絡時点
  • 自宅訪問の条件
  • 管理会社への連絡
  • 警察・消防への連絡

関連契約

  • 財産管理等委任
  • 任意後見
  • 死後事務委任
  • 遺言
  • 身元保証関連
  • 医療意思表示

判断フロー

契約締結の判断

  1. 本人確認ができるかを確認します。確認資料が不足する場合は、補足資料を求めます。
  2. 本人が契約目的、業務、費用、不通時対応を理解し、自ら希望しているかを確認します。
  3. 安否確認が中心なら見守り契約を検討し、預金管理や支払が必要なら別契約・別制度を検討します。
  4. 現在の判断能力に大きな懸念がある場合は、見守り契約の締結を急がず、後見制度等への接続を検討します。
  5. 緊急時に誰が何を担うかを整理し、受任者だけに24時間対応が集中しない形を作ります。
  6. 業務量と報酬が対応しているか、事務所の体制で継続できるかを確認します。

連絡不能時の判断

  1. 事前の外出、旅行、入院、日程変更の連絡がないか確認します。
  2. 契約で定めた回数と間隔で再連絡し、留守番電話やSMS等を残します。
  3. 所定の時点で緊急連絡先第1順位へ連絡します。
  4. 状況を確認できない場合は、第2順位、介護事業者、管理会社等へ同意範囲内で連絡します。
  5. 契約に訪問対応が含まれる場合は、自宅を訪問します。
  6. 室内から助けを求める声、異臭、警報音等がある場合は、警察又は消防へ連絡します。
  7. 鍵を預かっていても単独で安易に入室せず、契約条件と緊急性を確認し、公的機関等の立会いを求めます。
  8. 時刻、連絡先、判断理由、対応、結果を記録し、契約内容の見直しを検討します。

判断能力の変化を感じたとき

  1. 「認知症」と断定せず、同じ質問の反復、予定の混乱、支払忘れ等の具体的事実を記録します。
  2. 本人の意思を確認し、必要に応じて医療機関、ケアマネジャー等への相談を提案します。
  3. 任意後見契約がある場合は、本人の同意範囲で任意後見受任者と情報を共有します。
  4. 判断能力が不十分な状況にあると考えられる場合は、任意後見監督人選任申立ての検討につなぎます。
  5. 任意後見契約がない場合等は、地域包括支援センター、弁護士、司法書士等と法定後見の必要性を検討します。

見守り契約書の条項一覧と作成書類

条項 目的 具体化する事項
当事者 契約関係を特定 本人、受任者、住所、連絡先、費用負担者との区別
目的 支援の方向を共有 生活継続、異変の早期把握、関係者への接続
業務内容 受任範囲を確定 電話、訪問、確認、記録、連絡、報告
方法・頻度 実施内容を明確化 曜日、時間帯、回数、振替、休止
確認事項 観察範囲を共有 体調、食事、服薬、転倒、受診、困りごと
本人の協力 誤った緊急対応を予防 外出、入院、連絡先変更の通知
連絡不能時 対応を段階化 再連絡、緊急連絡先、訪問、通報
異変時 緊急連携の根拠 警察、消防、医療・介護機関への連絡
緊急連絡先 連絡順位を明確化 順位、時間、役割、共有情報、変更
個人情報 適正な取得・共有 目的、範囲、提供先、緊急時、保管
報告・記録 説明可能性を確保 報告先、記録項目、保存期間、廃棄
報酬・実費 費用の理解を共有 月額、追加対応、時間外、交通費、支払日
鍵・入室 住居と財産を保護 保管、使用条件、立会い、記録、返還
対象外業務 役割の混同を予防 医療同意、介護、財産管理、保証、警備等
免責・限界 結果保証でないことを共有 訪問間隔中の事象、不可抗力、故意・過失との区別
見直し 状況変化へ対応 入退院、転居、介護度、連絡先、判断能力
後見への接続 次の支援へ移行 連絡、相談、申立て検討、契約継続
解除・終了 契約関係を整理 予告、重大違反、死亡、後見、長期入院
終了時処理 預り品等を精算 鍵、書類、未払金、記録、引継ぎ
協議・管轄 未定事項と紛争に備える 協議方法、合意管轄

別紙化すると運用しやすい書類

  • 見守り実施計画書
  • 緊急連絡先一覧
  • 医療・介護関係機関一覧
  • 個人情報共有先・共有項目一覧
  • 報酬・実費表
  • 関連契約一覧
  • 鍵預り明細・鍵預り証
  • 本人の緊急時希望事項

別紙を更新する場合も、重要な変更は本人へ説明し、署名又は書面同意を得ます。受任者だけで差し替えられる構造にはしません。

文例・記載例

以下は条項設計を理解するための例です。個別案件では、本人の状況、事務所体制、関連契約、地域の支援体制に合わせて調整します。

目的

本契約は、甲の生活状況及び健康状態その他日常生活上の変化を継続的に確認し、必要に応じて甲が指定する者又は関係機関へ連絡することにより、甲が安心して生活を継続できるよう支援することを目的とする。

見守り方法と頻度

乙は、毎週火曜日の午前10時から正午までの間に、甲が指定する電話番号へ電話連絡を行う。

乙は、毎月第2木曜日の午後2時を目安として甲の自宅を訪問する。

前各項の日が祝日その他乙の休業日に当たる場合は、甲乙協議の上、原則として前後3営業日以内に振り替える。

日時を一分単位で固定すると、交通事情等によるわずかな遅れも契約違反として受け止められることがあります。本人の生活リズムを守りながら、実施可能な時間帯を設定します。

確認事項

乙は、定期連絡又は定期訪問の際、甲の意向を尊重しつつ、体調及び健康上の変化、食事、睡眠及び服薬の状況、転倒、事故、受診又は入院の有無、介護サービスの利用状況、不審な訪問、電話、契約又は金銭上の不安その他別紙で定める事項を確認する。

本人の協力

甲は、旅行、入院、施設への短期入所その他の事情により予定された連絡又は訪問に応じられない場合、可能な限り事前に乙へ連絡する。

甲は、住所、電話番号、緊急連絡先、医療・介護関係者その他本契約の履行に必要な情報に変更があった場合、速やかに乙へ通知する。

連絡不能時

乙は、予定された電話連絡に甲が応答しない場合、原則として同日中に30分以上の間隔を空けて2回まで再連絡する。

再連絡によっても甲と連絡が取れない場合、乙は、甲が指定した緊急連絡先に対し、指定された順位に従って連絡する。

緊急連絡先のいずれも甲の状況を把握しておらず、かつ甲の安全に懸念があると乙が合理的に判断した場合、乙は甲の自宅を訪問し、又は管理会社、介護事業者、警察、消防その他必要と認める機関に連絡することができる。

乙は、前各項の対応を行った場合、その日時、連絡先、判断理由、対応内容及び結果を記録する。

異変時

乙は、甲の言動、住居の状況、連絡状況その他の事情から、甲の生命又は身体に急迫した危険があると合理的に判断した場合、甲の事前の承諾を得ることなく、消防、警察、医療機関、緊急連絡先その他必要と認める者へ連絡することができる。

乙は、緊急性がない場合には、可能な限り甲の意思を確認した上で対応する。

乙は、医療行為への同意その他法令又は資格上行うことのできない行為を行わない。

個人情報共有

乙は、本契約の履行に必要な範囲で、甲の氏名、住所、連絡先、健康状態、医療・介護サービスの利用状況、緊急連絡先その他必要な情報を取得し、利用することができる。

乙は、甲の同意がある場合、又は甲の生命、身体若しくは財産の保護のために必要があり甲の同意を得ることが困難である場合その他法令により認められる場合、必要最小限の範囲で、緊急連絡先、医療機関、介護事業者、地域包括支援センター、警察、消防、住居管理者その他必要な者へ情報を提供することができる。

乙は、取得した個人情報を適切に管理し、本契約の目的以外に利用しない。

報告・記録保存

乙は、見守り業務の実施日時、実施方法、確認内容、甲の申出、異変の有無、関係者への連絡及び対応結果を記録する。

乙は、甲が別紙において報告先を指定した場合、甲が同意した範囲で、当該報告先に対し定期又は臨時の報告を行う。

乙は、業務記録を本契約終了後○年間保存し、保存期間経過後は個人情報が復元されない方法により廃棄する。ただし、法令、所属団体の規程又は紛争対応上、より長期間の保存が必要な場合はこの限りでない。

報酬・実費

甲は、乙に対し、見守り業務の報酬として月額金○円及び消費税を支払う。

前項の報酬には、毎週1回の電話連絡及び毎月1回の定期訪問を含む。

契約所定の回数を超える訪問、緊急時の現地対応、関係機関との面談その他の追加業務は、別紙報酬表に定める。

甲は、交通費、駐車料金、郵送料その他本契約の履行に必要な実費を負担する。1回当たり金○円を超える実費が見込まれる場合、乙は緊急の場合を除き事前に甲の承諾を得る。

鍵預かりと入室

甲は、緊急時の安否確認その他本契約に定める目的のため、別紙鍵預り明細に記載する鍵を乙に預託する。

乙は、鍵を施錠設備のある場所に保管し、鍵に甲の氏名又は住所を直接表示しない。

乙は、甲から入室の承諾を得た場合、甲の生命又は身体に急迫した危険があると合理的に判断され警察、消防その他公的機関の要請又は立会いがある場合、その他甲乙が書面で合意した場合に限り、鍵を使用することができる。

乙は、鍵を使用した場合、その日時、理由、立会人、入退室時刻及び対応内容を記録する。

鍵の所持と入室権限は同じではありません電話に出ないことだけを理由に単独で入室する運用は避けます。鍵預り証、持出記録、複製禁止、紛失時対応、契約終了時の返還も定めます。

行わない業務

本契約に基づく乙の業務には、医療行為又は医療行為への同意、介護行為、身体介助又は家事援助、甲の財産管理、預金の払戻し又は支払代行、身元保証人若しくは連帯保証人への就任、24時間常時の監視又は即時出動、警備業務、甲の生命・身体・財産の安全の保証、他の資格を要する業務その他本契約又は別途締結した契約に明示されていない業務を含まない。

責任範囲

乙は、本契約に定める方法及び頻度により、善良な管理者の注意をもって見守り業務を行う。

乙は、定期連絡又は定期訪問の間に発生した事故、疾病、死亡、犯罪被害その他の事象について、乙の責めに帰すべき事由がある場合を除き、その発生又は結果を保証しない。

通信障害、災害、交通遮断、感染症、甲の拒否その他乙の合理的な支配を超える事情により業務を実施できない場合、乙は甲又は緊急連絡先へ連絡し、可能な代替措置を検討する。

故意又は重大な過失を含め、あらゆる責任を一律に免除する表現は用いません。責任範囲を定める条項は、個別案件に応じて弁護士の確認を受ける運用が安心です。

任意後見・成年後見への接続

乙は、見守り業務を通じて、甲に判断能力の低下が疑われる具体的な事情を把握した場合、甲の意思を尊重しつつ、甲、甲の親族、任意後見受任者その他の関係者に対し、医療機関への相談、任意後見監督人選任申立てその他必要な対応を検討するよう助言又は連絡することができる。

甲について任意後見契約が締結されている場合、乙は別紙に記載された任意後見受任者と、甲が同意した範囲で必要な情報を共有することができる。

任意後見契約の効力発生後に本契約を継続するか否かは、甲、任意後見人及び乙が協議して定める。

任意後見契約がない場合その他法定後見制度の利用を検討する必要がある場合、乙は甲の意思及び利益を尊重し、親族、地域包括支援センター、医療・介護関係者、弁護士又は司法書士等との連携を提案する。

解除・終了

甲又は乙は、相手方に対し、書面により○日前までに通知することにより、本契約を解除することができる。

重大な契約違反、信頼関係を維持し難い事情、報酬の長期未払、暴力・脅迫、重大な利益相反等が生じた場合、相手方は契約を解除することができる。

本契約は、甲又は乙の死亡、契約期間満了、当事者間の合意その他本契約で定める事由により終了する。甲の長期入院、施設入所、任意後見開始又は法定後見開始の場合は、関係者と協議して継続、変更又は終了を定める。

契約終了時、乙は甲又は正当な権限を有する者へ鍵、書類その他の預り品を返還し、未払報酬及び実費を精算する。

本人死亡時に、緊急連絡先を名乗る人へ直ちに鍵や書類を渡さず、相続人、遺言執行者、死後事務受任者等の権限を確認します。死亡後の手続は、見守り契約とは別の根拠を確認します。

他士業・関係機関との連携

連携先 主な場面 行政書士が整理すること
弁護士 親族紛争、契約解除、損害賠償、虐待、財産侵害、医療同意等の法律問題 本人意思、契約、経過、客観資料、利害関係
司法書士・弁護士 成年後見等の家庭裁判所手続、申立書類、法的対応 見守り記録、本人状況、既存契約、親族関係
公証人 任意後見契約公正証書、関連契約との整理 委任事項、役割分担、開始前後の見守り
医師・医療機関 急な健康変化、判断能力の変化、受診の必要性 診断せず、本人発言と観察事実を伝える
ケアマネジャー・介護事業者 生活能力低下、介護サービス変更、支援拒否 本人同意、共有目的、必要最小限の情報
地域包括支援センター 孤立、虐待、セルフネグレクト、後見制度、福祉接続 経過、本人希望、支援者、緊急性
警察・消防 生命・身体への切迫した危険、安否確認、事故 住所、最終確認時刻、異音・異臭等の具体的事実
相談内容がまとまっていなくても大丈夫ですまずは現在の状況を伺い、本人の希望、生活状況、見守り方法、緊急連絡先、既存契約を一緒に整理します。行政書士の業務範囲を超える判断が必要な場合は、適切な専門家や関係機関へつなぎます。

新人が気をつけたい点

確認が不足しやすい点 整える対応
「定期的に見守る」とだけ書く 方法、頻度、曜日、時間帯、確認事項、振替を記載します。
連絡不能時の手順を書かない 再連絡、緊急連絡先、訪問、通報を段階化します。
親族へ全情報を共有する 費用負担者と報告先を分け、本人同意の範囲を定めます。
医療同意も含むように書く 医療機関への連絡と、医療行為への同意を区別します。
鍵があれば自由に入室できると考える 使用条件、緊急性、立会い、使用記録を定めます。
24時間対応と受け取られる説明をする 営業時間、時間外対応、現地対応の可否を明記します。
物忘れを認知症と記録する 発言、行動、回数、前回との差を客観的に記録します。
任意後見が自動的に始まると書く 任意後見監督人選任申立てへの接続を定めます。
死亡後も見守り契約で対応する 死後事務の契約根拠と権限を別途確認します。
関連契約との重複を確認しない 受任者、報酬、鍵、情報共有、終了時期を一覧で照合します。
免責条項を広く書けば安心と考える 業務の限界と責任範囲を説明し、不当な一律免責を避けます。
事務所代表者しか運用を知らない 内部基準、代替担当、情報アクセス、鍵管理を整えます。

悪い記録と整えた記録

避けたい記録:認知症が進行している。

整えた記録:7月10日の電話で、次回訪問日について5分間に4回同じ質問があった。前日に訪問したことを「覚えていない」と本人が話した。本人の同意を得て、同日、担当ケアマネジャーへ状況を共有した。

トラブル予防策

契約締結前に不通時対応を再現する

「火曜日午前10時の電話に出られず、正午まで再連絡しても応答がなかった場合、誰に連絡してよいですか」「緊急連絡先も状況を把握していない場合、自宅へ伺ってよいですか」など、具体的な場面を示して本人の希望を確認します。

緊急連絡先本人にも役割を説明する

名前だけが登録され、現地対応や情報受領を想定していないことがあります。どの場面で連絡が来るか、現地対応が可能か、鍵を持っているか、情報を受け取ることに了解があるかを確認します。

記録様式を統一する

  • 実施日、開始・終了時刻
  • 電話・訪問等の方法
  • 本人の発言と観察事実
  • 確認内容、異変の有無
  • 関係者への連絡、判断理由、結果
  • 次回までの対応、担当者

緊急度の内部基準を作る

区分 対応
直ちに対応 意識がない、呼吸困難、強い胸痛、転倒して起き上がれない、火災等 119番、必要に応じ110番、緊急連絡先、記録
当日中に連携 食事・服薬の大きな乱れ、会話の著しい混乱、虐待・消費者被害の疑い 本人確認、医療・介護・地域包括等へ接続
経過確認 軽い体調不良、一時的な気分低下、日程の勘違い 次回連絡を早め、変化を記録

担当者不在時の代替体制

個人事務所でも、行政書士本人が入院、事故、災害等で対応できない場合に備えます。補助者や連携行政書士への引継ぎ、本人情報の共有範囲、鍵へのアクセス、緊急連絡先への通知方法を契約と内部規程へ反映します。

定期的に見直す

年1回を目安とし、入退院、転居、施設入所、介護度変更、緊急連絡先変更、通信手段変更、判断能力の変化、関連契約の締結時には、その都度見守り計画を見直します。

ケーススタディ|月1回訪問・週1回電話・緊急連絡先2名

78歳・一人暮らし・高血圧・転倒歴あり

Aさんは夫を亡くし、子どもはいません。遠方に妹と甥がいます。判断能力に特段の問題はなく、週1回の電話と月1回の訪問を希望しています。電話に出ない場合は妹、次に甥へ連絡し、緊急時には消防へ連絡してよいと話しています。鍵の預託を希望し、別の専門職と任意後見契約を締結済みです。

契約設計

項目 設計内容
電話 毎週水曜日午前10時~正午
訪問 毎月第1金曜日午後2時頃
電話確認 体調、食事、服薬、転倒、受診予定、不審電話、次回予定
訪問確認 本人の承諾範囲で会話、歩行、生活環境、郵便物、服薬状況
不通時 30分以上空けて再連絡、正午まで不通なら妹、次に甥
現地確認 二人とも状況不明で、外出等の事前連絡がない場合に訪問
緊急対応 異変が疑われる場合は警察・消防へ連絡
原則として警察・消防等の要請又は立会い下で使用
後見接続 具体的変化を記録し、本人同意の範囲で任意後見受任者へ連絡

条項への落とし込み

乙は、毎週水曜日午前10時から正午までの間に甲へ電話し、甲の体調、服薬、食事、転倒、受診予定その他生活上の変化を確認する。

乙は、毎月第1金曜日午後2時を目安として甲の自宅を訪問し、甲の同意を得た範囲で、健康状態、生活環境及び支援の必要性を確認する。

電話連絡に甲が応答しない場合、乙は30分以上の間隔を空けて同日中に再度連絡する。正午までに連絡が取れない場合、第1順位の緊急連絡先へ連絡し、同人が不通又は状況を把握していない場合は第2順位へ連絡する。

前項によっても甲の安全を確認できず、合理的な不在理由を確認できない場合、乙は甲宅を訪問することができる。応答がなく、生命又は身体への危険があると合理的に判断した場合、警察又は消防へ連絡することができる。

乙は、預託された鍵を、甲の承諾がある場合又は警察、消防その他公的機関の要請若しくは立会いがある緊急の場合に限り使用する。

乙は、甲の会話、記憶、生活状況等に継続的かつ重大な変化が認められ、判断能力の低下が疑われる場合、甲の意思を確認した上で、任意後見受任者へ連絡することができる。

この事例で確認すること

  • 妹と甥へ情報を伝える範囲について、Aさんの同意を具体化する。
  • 妹と甥本人に、緊急連絡先としての役割を説明する。
  • 鍵の保管、持出し、立会い、返還を別紙と預り証へ記載する。
  • 任意後見受任者の連絡先、共有情報、申立て検討の流れを整理する。
  • 月額報酬に含む訪問・電話と、緊急出動の追加報酬を分ける。

実務チェックリスト|見守り契約書作成前確認

本人確認・意思

  • 本人確認資料を確認
  • 本人と直接面談
  • 親族等を外した意思確認
  • 目的・費用・不通時対応の理解
  • 判断能力の疑義
  • 利益相反の確認
  • 面談記録の作成

見守り内容

  • 電話・訪問等の方法
  • 曜日・時間帯・回数
  • 祝日等の振替
  • 確認事項
  • 入院・旅行時の取扱い
  • 休止・見直し条件

連絡不能

  • 再連絡回数・間隔
  • 留守番電話・SMS
  • 緊急連絡先への連絡時点
  • 自宅訪問条件
  • 管理会社等への連絡
  • 警察・消防への連絡基準
  • 経過記録

緊急連絡先

  • 原則2名以上
  • 連絡順位
  • 対応可能時間
  • 現地対応・鍵保有
  • 情報共有への本人同意
  • 連絡先本人の了解
  • 変更方法

個人情報

  • 利用目的
  • 必要最小限の取得
  • 第三者提供先・条件
  • 緊急時の取扱い
  • 保管・アクセス権限
  • 保存期間・廃棄
  • 補助者等の取扱い

鍵・入室

  • 預かる必要性
  • 鍵預り証
  • 種類・本数
  • 保管・複製禁止
  • 使用条件・立会い
  • 使用記録
  • 紛失・返還

報酬・実費

  • 月額報酬
  • 含まれる業務
  • 追加訪問・緊急対応
  • 夜間休日対応
  • 交通費等
  • 支払日・方法
  • 休止・未払時

対象外業務

  • 医療行為・医療同意
  • 介護・家事
  • 財産管理・支払
  • 身元・連帯保証
  • 24時間監視・警備
  • 結果保証
  • 他資格の業務

後見への接続

  • 任意後見契約の有無
  • 任意後見受任者
  • 変化時の連絡先
  • 医療相談
  • 監督人選任申立てへの接続
  • 法定後見の連携先
  • 開始後の契約取扱い

解除・終了

  • 通常解除の予告
  • 重大違反等の解除
  • 死亡時の終了
  • 入院・施設入所時
  • 後見開始時
  • 預り品返還
  • 報酬精算・記録保存

関連契約

  • 財産管理等委任
  • 任意後見
  • 死後事務委任
  • 遺言
  • 身元保証関連
  • 鍵・報酬・情報共有の整合

説明・交付

  • 平易な説明
  • 本人からの質問
  • 契約書・別紙の整合
  • 署名押印
  • 本人への控え交付
  • 初回実施日
  • 見直し予定日

確認テスト

問題1
「受任者は委任者を定期的に見守る」とだけ記載する問題点は何ですか。
方法、頻度、時間帯、確認内容、不通時対応、費用等が不明で、本人と受任者の期待がそろわない点です。
問題2
週1回の電話に本人が出ない場合、何を契約で定めますか。
再連絡回数・間隔、メッセージ、緊急連絡先の順位、訪問条件、管理会社等への連絡、警察・消防への連絡基準を定めます。
問題3
鍵を預かっていれば、電話不通時に直ちに単独で入室できますか。
鍵の所持だけでは足りません。契約上の使用条件と緊急性を確認し、原則として警察・消防・管理会社等の要請又は立会いを求めます。
問題4
見守り受任者は、本人に代わって手術へ同意できますか。
見守り契約だけで医療同意権が当然に生じるものではありません。医療機関や緊急連絡先への連絡、本人の意思表示資料の提示等を行います。
問題5
本人の判断能力が低下すると、任意後見契約は自動的に始まりますか。
自動的には始まりません。家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。
問題6
緊急連絡先が実妹であれば、健康情報をすべて伝えてよいですか。
親族でも当然に全情報を共有できるわけではありません。本人同意、緊急性、必要性を確認し、必要最小限にします。
問題7
見守り契約の対象外として整理する業務を挙げてください。
医療行為・医療同意、介護、家事、財産管理、預金払戻し、身元保証、24時間監視、警備、他資格の業務等です。
問題8
本人死亡後、緊急連絡先の甥へ直ちに鍵を渡してよいですか。
直ちには渡しません。相続人、遺言執行者、死後事務受任者等の正当な権限を確認します。
問題9
おふたりさまの契約で特に注意することは何ですか。
二人それぞれの意思確認、秘密と記録の分離、相互に共有してよい情報、各自の緊急連絡先、一方又は双方が対応不能となる場合を整理します。
問題10
緊急連絡先が変わるたびに契約全文を作り直す必要がありますか。
別紙で管理し、本人の書面同意により更新できる設計であれば、契約全文を作り直さずに対応できます。変更記録は残します。

次回への接続

見守り契約書は、平常時の予定だけでなく、連絡不能、異変、判断能力の変化、死亡等が生じた際に、誰が何をするかを示す実務の基礎です。方法、頻度、確認内容、対応順序、情報共有、費用、鍵、終了を具体化し、関連契約と整合させます。

次回「7-12 ケーススタディ演習」では、親族関係、健康状態、住環境、関連契約が異なる事例について、見守り方法、不通時対応、緊急連絡先、任意後見への接続を設計します。契約書全文の書式と条項の詳細なバリエーションは、カテゴリ25「各種契約書・同意書作成業務」で扱います。任意後見契約はカテゴリ4、財産管理等委任契約はカテゴリ6、死後事務委任契約はカテゴリ3で詳しく扱います。

HANAWA行政書士事務所にご相談ください相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、本人の希望、見守り方法、緊急連絡先、既存契約など、確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的制度、所属行政書士会の規則、地域の運用、賠償責任保険、事務所体制を確認してください。

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本人の意思を尊重し、契約と実際の対応が一致する支援を大切にします。

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相続・遺言・終活の手続きを確認したい方へ

相続、遺言、終活に関する手続きでは、戸籍、財産、関係者の状況を落ち着いて整理することが大切です。川崎市北部で家族の手続きについて確認したい方は、関連するご案内をご覧ください。

相続、遺言、任意後見、死後事務委任などをまとめて考えたい場合は、家族構成や財産、必要な手続きを整理するところから相談できます。

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