見守り契約の医療・介護連携
新人行政書士が一人で進める実務手順
地域包括支援センター、ケアマネジャー、訪問介護・訪問看護、医療機関、薬局等とどう連携するか。本人同意、情報共有、記録、体調変化・服薬忘れ・通院中断への対応まで、実務の順番に沿って整理します。
最初に押さえる考え方
見守り契約で行政書士が担うのは、本人の病気を診断したり、介護サービスの内容を決めたりすることではありません。定期連絡や訪問で把握した生活上の変化を整理し、本人の意思と契約内容を確認したうえで、必要な専門職へ適切につなぐことが中心です。
この回の到達目標
連携先を選べる
地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療機関、薬局等の役割を区別し、最初の相談先を判断できます。
同意と代理権を分けられる
第三者へ情報を渡す同意と、本人を代理して情報開示を求める権限を区別できます。
事実を伝えられる
医学的評価を加えず、本人発言と観察事実を専門職へ簡潔に伝えられます。
記録を残せる
連絡日時、同意、提供情報、相手方回答、次回確認まで一連の経過を記録できます。
この業務が必要になる実務場面
見守り契約では、行政書士が定期的に本人と接触するため、家族や行政機関より先に生活上の小さな変化へ気付くことがあります。
- 「病院へ最近行ったか覚えていない」と話した。
- 前回より会話が短く、同じ話を繰り返すようになった。
- 薬が複数日分残っている。
- デイサービスや訪問介護の利用を断ることが増えた。
- 買い物や通院が一人では難しくなった。
- 食事や入浴など日常生活上の困り事が増えた。
- 同居配偶者も高齢で、互いの生活を支えにくくなった。
- 本人が「施設に入りたい」「誰かに相談したい」と話し始めた。
これらは行政書士が「認知症」「要介護状態」等を判定する材料ではありません。一方で、専門職へ相談する必要性を検討する重要な事実です。
おひとりさまで特に意識すること
「家族が確認するはず」という前提を置かず、主治医、ケアマネジャー、薬局、地域包括支援センター、緊急連絡先等、実際に機能する支援関係を把握します。
おふたりさまで特に意識すること
配偶者や同居者がいることだけで支援体制が整っているとは限りません。双方が高齢の場合は、誰が服薬管理、買い物、通院同行、家事を担っているか、支える側の体調も確認します。
基本知識
医療・介護機関と連携する四つの目的
| 目的 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 状態変化を専門職へつなぐ | 見守りで把握した変化を、本人の同意等を確認して適切な専門職へ共有します。 |
| 支援の空白を見つける | 認定はあるがサービス未利用、ケアマネと連絡が取れていない等を把握します。 |
| 本人の説明を補助する | 本人が伝えにくい生活上の事実を時系列で整理します。 |
| 状況が深刻化する前につなぐ | 小さな変化を早めに専門職へ共有し、必要な支援の検討につなげます。 |
医療・介護連携マップ
地域包括支援センターへ相談を検討する場面
- 担当ケアマネジャーがいない。
- 要介護・要支援認定を受けていない。
- 介護保険サービスを利用していない。
- 買い物、通院、食事等の日常生活に困り事が増えている。
- おひとりさまで支援者が少ない。
- 医療、介護、生活上の課題が複数重なっている。
- 権利擁護上の問題が疑われ、どこへ相談するか迷う。
ケアマネジャーへ連絡を検討する場面
- デイサービスの欠席が続いている。
- 訪問介護を本人が繰り返し断っている。
- 買い物や入浴が難しくなったとの発言がある。
- 転倒したとの話が増えた。
- 同居配偶者の介護負担が増えている。
- 本人が施設入所等について相談したいと話している。
行政書士が「訪問介護を週4回に増やしてください」と指示するのではなく、「最近、買い物が難しくなったとのお話があります。生活状況の変化として共有しますので、必要に応じてご本人とご検討ください」と伝えます。
医療機関との連携
行政書士が医療機関へ提供するのは、原則として見守りで確認した生活上の事実です。「7月10日と17日に本人から『薬を飲んだか覚えていない』との発言があった」など、日時・頻度・本人発言を整理します。
薬局との連携
薬が大量に残っている、本人が服薬したか覚えていない、服薬方法を理解しにくくなっている等の場合は、本人の意思を確認して薬剤師等への相談につなぎます。「今日は飲まなくてよい」「この薬はやめた方がよい」などの判断はしません。
情報共有で最初に区別すること
| 区分 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 第三者提供への同意 | 行政書士が本人の情報を関係機関へ提供することを本人が承諾すること。 | ケアマネへデイサービス欠席状況を伝える。 |
| 情報取得の代理権 | 行政書士が本人を代理して情報開示等を求め、受領する権限。 | 本人の委任を受けて医療機関へ所定の開示請求を行う。 |
両者は同じではありません。また、本人から代理権を授与されていても、関係機関の法令・ガイドライン・内部規程・本人確認手続等によって、当然に情報開示が保証されるわけではありません。
共有する情報と共有を控える情報
| 共有候補 | 目的がなければ共有しない情報 |
|---|---|
| 氏名、連絡目的、本人発言、確認日時、生活上の変化、サービス利用状況、本人の希望 | 遺言内容、預貯金残高、相続財産、家族間紛争、見守りと無関係な相談内容、不要な私生活情報 |
実務の進め方
- 見守り契約書を確認し、業務範囲、情報提供条項、個人情報の取扱い、緊急時対応、情報取得代理権の有無を確認します。
- 本人から、現在の困り事、変化の時期、希望を聞き取ります。
- 生命・身体への緊急性がないか確認します。緊急性があれば第7-7回の対応を優先します。
- 行政書士が直接確認した事実、本人発言、第三者情報、未確認事項を分けて記録します。
- 本人に、誰へ、何を、何の目的で共有するか説明し、個別の同意を確認します。
- 介護サービス利用中なら原則ケアマネジャー、未利用・ケアマネ不在なら地域包括支援センターを検討します。
- 医学・薬学的な判断が必要なら、本人経由・本人同席を優先して医師、看護師、薬剤師等へつなぎます。
- 情報は目的達成に必要な範囲へ限定します。
- 連携先、担当者、提供情報、相手方回答、次回対応を記録します。
- 次回見守りで、本人が専門職とつながったか、状況が変わったかを確認します。
本人同意の取り方
契約時の包括的な説明だけで終わらせず、具体的な連携場面でも「○○ケアマネジャーへ、最近デイサービスを休んでいることを伝えてよいですか」のように確認します。
本人は、見守り業務の遂行上必要な場合、受任者が、本人の生活状況、連絡状況その他業務遂行に必要な情報を、地域包括支援センター、介護支援専門員、介護サービス事業者、医療機関、薬局その他本人の生活支援に必要な関係機関へ、必要な範囲で提供することに同意する。
本人は、受任者に対し、見守り業務の遂行に必要な範囲に限り、関係機関から本人の生活、医療又は介護に関する情報の提供を受け、又は必要な情報の開示を求め、これを受領するための代理権を授与する。
ただし、各関係機関からの情報提供又は開示は、当該機関に適用される法令、ガイドライン及び内部規程等に従うものとし、この同意又は代理権授与によって当然に情報開示が保証されるものではない旨も明記します。
観察事実と本人発言を分ける
| 区分 | 記録例 |
|---|---|
| 直接確認した事実 | 7月15日10時30分、自宅訪問。食卓上に未開封の弁当3個を確認。 |
| 本人発言 | 本人「昨日の薬を飲んだか覚えていない」と発言。 |
| 第三者情報 | 担当ケアマネジャーから「今月デイサービスを3回欠席している」との連絡あり。 |
| 未確認事項 | 実際の服薬状況、最終受診日、診断内容は未確認。 |
要介護認定や福祉サービスへつなぐ場合
買い物、外出、入浴、通院等の困り事が増え、介護サービスの利用を本人が希望する場合は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口への相談を提案します。行政書士が「要介護2だと思います」と要介護度を判定する必要はありません。認定調査やケアプラン作成の詳細は本回では扱いません。
ヒアリング項目
状態変化
- いつから変化したか
- 何が変わったか
- 頻度は増えているか
- 本人は困っているか
- 生活への影響はあるか
医療
- 主治医・医療機関
- 前回・次回の受診予定
- 受診を中断していないか
- 本人一人で通院できるか
- 本人が相談を希望するか
服薬
- 薬を飲んだことを覚えているか
- 薬が余っていないか
- 薬の保管場所
- かかりつけ薬局
- 薬剤師へ相談してよいか
介護
- 要介護・要支援認定
- 担当ケアマネジャー
- 利用サービス
- 最近の欠席・拒否
- サービス上の困り事
生活
- 食事・水分
- 入浴・排泄
- 買い物・外出
- 家事
- 他者との連絡
支援者
- 親族
- 地域包括支援センター
- 訪問看護・訪問介護
- 近隣支援者
- 緊急連絡先
おひとりさまの追加確認
- 親族がいるかだけでなく、実際に連絡・訪問できる関係か。
- 主治医、ケアマネジャー、薬局等の連絡先が整理されているか。
- 緊急時に誰が本人宅へ行けるか。
- 本人が支援者へどこまで情報共有してよいと考えているか。
おふたりさまの追加確認
- 配偶者・同居者自身の健康状態や要介護状態。
- 服薬、通院、買い物、家事を誰が担っているか。
- 一方が入院した場合、もう一方の生活が維持できるか。
- 双方が同時に支援を必要とした場合の連絡先。
判断フロー
- 本人の生活・健康状態に変化がある。
- 生命・身体への切迫した危険があれば、第7-7回の緊急対応へ移ります。
- 緊急性がなければ、本人の発言と観察事実を確認します。
- 本人が意思表示できる場合は、具体的な情報共有について同意を確認します。
- 介護サービス利用中なら担当ケアマネジャーへの共有を第一に検討します。
- ケアマネ不在・制度未利用なら地域包括支援センターへの相談を検討します。
- 医学・薬学的判断が必要なら医師・看護師・薬剤師へつなぎます。
- 行政書士は診断・治療・介護サービス内容の判断を代替しません。
- 連携内容と結果を記録し、次回見守りで経過を確認します。
| 状況 | 第一に検討する連携先 |
|---|---|
| ケアマネ不在・介護制度未利用 | 地域包括支援センター |
| 介護サービス利用中 | 担当ケアマネジャー |
| 訪問介護の欠席・拒否等 | 原則、担当ケアマネジャー |
| 健康・療養上の問題 | 主治医、訪問看護等 |
| 残薬・服薬忘れ | 薬剤師、主治医等 |
| 生活課題が複数重なる | 担当ケアマネジャー又は地域包括支援センター |
| 生命・身体の緊急事態 | 119番等。詳細は第7-7回 |
作成・確認する書類
| 書類 | 確認・記載する内容 |
|---|---|
| 見守り契約書 | 業務範囲、情報共有、個人情報、緊急時対応、情報取得代理権の有無、終了等。 |
| 情報共有同意書 | 提供先、目的、共有情報の範囲、同意日、変更・撤回の取扱い。 |
| 委任状・代理権確認書 | 対象機関、請求・受領できる情報、利用目的、有効期間。 |
| 関係機関連絡先一覧 | 地域包括、ケアマネ、主治医、薬局、訪問看護、緊急連絡先等。 |
| 見守り記録 | 本人発言、観察事実、前回との変化、本人意思、対応。 |
| 連携記録 | 連絡日時、相手方、同意、提供情報、受領情報、回答、次回確認。 |
見守り契約書で押さえる法的な境界
行政書士は、行政書士法に基づき、権利義務・事実証明に関する書類の作成や、その作成に関する相談等を行います。「行政書士は法律事務全般を行えない」とまとめるのは適切ではありません。
見守り契約で特に注意するのは、他の法律により制限される領域へ踏み込まないことです。紛争性のある案件で相手方との法的交渉・和解等が必要となる場合には弁護士への連携を検討し、診断・治療・投薬等は医療専門職へ委ねます。
契約条項の詳細は第7-11回で扱います。
情報取得用委任状は範囲を具体化する
「一切の医療情報を取得する」といった広範な書き方にせず、何の目的で、どの機関から、どの範囲の情報を求めるかを整理します。医療機関等が所定様式や本人同席を求める場合には、その手続に従います。
連携記録の推奨項目
- 日時・連絡方法・相手方機関・担当者。
- 本人同意の有無、同意取得日時・方法。
- 情報取得の場合は代理権・委任状の確認。
- 連絡目的、提供した情報、受領した情報。
- 相手方の回答、行政書士が行った対応。
- 次回確認日と継続確認事項。
文例・記載例
本人から個別同意を得る
最近、お薬を飲んだか分からない日があるとお話しされていました。私は薬について判断することはできませんので、○○薬局の薬剤師さんへ、今のお話と薬が残っている状況を伝えて相談してもよろしいでしょうか。
ケアマネジャーへ生活変化を伝える
○○様と見守り契約を締結している行政書士の△△です。ご本人の了承を得て連絡しています。最近の定期連絡で、ご本人から「デイサービスを続けて休んだ」「外出が以前より難しい」とのお話がありました。介護サービスの内容について私から判断や変更をお願いする趣旨ではなく、生活状況の変化として共有いたします。必要に応じてご本人へ状況をご確認いただければと思います。
地域包括支援センターへ相談する
地域在住の○○様について、ご本人の了承を得て相談しています。私はご本人と見守り契約を締結している行政書士です。現在、介護保険サービスを利用しておらず、担当ケアマネジャーもいません。最近、ご本人から「買い物へ行くのが難しい」「病院へ一人で行きづらい」とのお話がありました。今後どのような相談窓口や支援へつなぐことが適切か、ご相談させていただけますでしょうか。
医療機関へ情報提供する
○○様ご本人の同意を得てご連絡しております。○○様と見守り契約を締結している行政書士の△△です。第三者からの情報提供を受け付けていただけるか、まず確認させてください。見守りの過程で、7月10日と17日にご本人から「薬を飲んだか覚えていない日がある」とのお話がありました。また、17日の訪問時には複数の日付の薬袋が残っていることを確認しました。診療上の評価を私から申し上げるものではなく、ご本人の生活状況としてお伝えしています。
体調変化を伝える
| 避けたい表現 | 確認できた事実を伝える表現 |
|---|---|
| かなり弱っています。認知症も進んでいるようです。 | 7月1日は約20分会話できましたが、7月15日は約5分で「疲れたので横になりたい」との発言がありました。 |
| 薬をきちんと飲めていません。 | 本人から「昨夜の薬を飲んだか覚えていない」との発言があり、7月10日分として表示された薬が残っていました。 |
| 半年間、受診していません。 | 本人から「半年くらい病院へ行っていない」との発言がありました。実際の最終受診日は未確認です。 |
介護サービス未利用を伝える
ご本人から「最近ヘルパーさんを断っている」とのお話があり、理由については「人に来てもらうのが面倒」とのことでした。サービス内容の適否について私から判断する立場ではありませんので、生活状況の変化として共有いたします。
他士業・関係機関との連携
| 連携先 | 主な場面 | 行政書士の立場 |
|---|---|---|
| ケアマネジャー | サービス欠席、生活機能の変化、介護負担等 | 介護サービス利用中の中心的窓口として事実を共有。 |
| 地域包括支援センター | ケアマネ不在、制度未利用、複合課題等 | 本人同意を確認し、生活上の事実と本人希望を整理。 |
| 医師 | 診断、治療、症状評価、投薬等 | 医学的判断を代替せず、本人経由・同席を基本に接続。 |
| 訪問看護 | 在宅療養、健康状態、服薬支援等 | 看護判断を委ね、必要な生活情報を共有。 |
| 薬剤師 | 残薬、服薬方法、薬剤に関する相談 | 服薬継続・中止を判断せず、確認事実を伝える。 |
| 弁護士 | 親族紛争、法的交渉、財産侵害等 | 他法令により制限される業務へ踏み込まず連携。 |
| 司法書士・弁護士等 | 成年後見等の専門的支援 | 本人の状況と記録を整理して専門家へつなぐ。 |
新人が気をつけたい点
| 気をつけたい点 | 整える対応 |
|---|---|
| 異変を見つけたら自分が解決すると考える | 行政書士が抱え込まず、本人の意思を確認して専門職へつなぎます。 |
| 「認知症でしょう」と評価する | 同じ質問の回数、本人発言、前回との変化等を記録します。 |
| ケアマネがいるのに事業者へ直接サービス変更を指示する | 原則としてケアマネジャーへ生活状況を共有し、専門的調整を委ねます。 |
| 本人のためなら情報を広く共有してよいと考える | 本人同意、目的、必要性を確認し、共有情報を必要最小限にします。 |
| 第三者提供の同意があれば情報取得もできると考える | 情報取得には別途代理権・委任状等が必要となることを確認します。 |
| 代理権があれば医療情報が必ず開示されると考える | 相手方の法令・内部規程・本人確認・開示手続に従います。 |
| 本人発言を確定事実として記録する | 「本人より○○との発言あり。実際の受診日は未確認」と分けます。 |
| 本人から治療・介護方針への意見を求められ、そのまま助言する | 専門判断は行わず、相談事項を整理して専門職へつなぎます。 |
トラブル予防策
契約開始時に関係者を整理する
- 担当ケアマネジャー、居宅介護支援事業所。
- 主治医、医療機関、訪問看護。
- かかりつけ薬局。
- 地域包括支援センター。
- 緊急連絡先、実際に訪問できる支援者。
介護サービス利用中は連絡窓口を明確にする
本人にも「介護サービスの調整は担当ケアマネジャーが中心であり、行政書士は見守りで把握した変化を必要に応じて共有する」と説明しておくと、役割の混乱を避けやすくなります。
情報共有の範囲を事前に整理する
医療・介護支援に必要な生活情報は共有候補とする一方、遺言内容や財産情報等は目的がなければ共有しないなど、情報の種類ごとに扱いを決めます。
同意を記録する
2026年7月28日14時10分
○○薬局へ、服薬忘れに関する本人発言及び訪問時に確認した残薬状況を共有する目的を説明。本人「伝えてください」と回答。
「相談」と「指示」を分ける
| 使いやすい表現 | 避けたい表現 |
|---|---|
| 「生活状況の変化として共有します」 | 「サービスを週4回に増やしてください」 |
| 「専門的な観点からご確認いただけますか」 | 「この薬を変更してください」 |
| 「ご本人とご検討ください」 | 「施設に入所させてください」 |
利益相反を確認する
行政書士自身に経済的利益のある施設やサービスを紹介する場合は、紹介料等の有無、他の選択肢、本人の自由意思を明確にします。見守り、財産管理、施設紹介、不動産処分等が同時に関係する場合は特に慎重に整理します。
ケーススタディ|服薬忘れと通院中断が疑われる場合
Aさんは妻と死別し一人暮らしです。行政書士は見守り契約に基づき週1回電話、月1回訪問しています。担当ケアマネジャーはいません。
最近の電話でAさんは「病院?最近行ったかな」「薬は飲んでいると思うよ」と回答しました。訪問すると、テーブル上に複数の日付の薬袋があり、本人は「どれを飲んだか分からなくなった」と話しました。
最初に分ける情報
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 直接確認 | テーブル上に複数の日付の薬袋がある。 |
| 本人発言 | 「どれを飲んだか分からない」「病院は最近行ったか分からない」。 |
| 未確認 | 実際の飲み忘れ、重複服用、最終受診日、診断名、認知機能。 |
対応手順
- 意識状態、強い体調不良、明らかな過量服薬等、緊急性の有無を確認します。
- 緊急性がなければ、「私は薬を飲む・飲まないという判断はできません」と説明します。
- 薬局へ本人発言と残薬状況を伝えて相談することについて本人の同意を得ます。
- 薬局へ事実を伝え、薬剤師から本人へ必要な確認をしてもらえるか相談します。
- 診察券、予約票等を本人と確認します。医療機関へ照会する場合は本人自身からの問い合わせを優先します。
- 行政書士が照会する必要があるときは、医療機関へ委任状等の要否を確認します。
- 一人暮らし、ケアマネ不在、服薬・通院管理への不安があるため、地域包括支援センターへの相談を本人へ提案します。
- 連携内容を記録し、次回見守りで薬局・医療機関・地域包括との接続状況を確認します。
薬局への文例
「A様ご本人の了承を得て連絡しています。A様と見守り契約を締結している行政書士です。本日訪問した際、A様から『どれを飲んだか分からない』との発言があり、複数の日付の薬袋が残っていることを確認しました。服薬について私から判断することはできませんので、薬剤師の立場からご本人へ必要な確認をしていただくことは可能でしょうか。」
連携記録例
日時:2026年7月28日13時00分
方法:自宅訪問
直接確認:食卓上に複数の日付が表示された薬袋を確認。
本人発言:「どれを飲んだか分からない」「最近病院に行ったか分からない」。
未確認:実際の服薬状況、最終受診日、診断内容。
本人意思:○○薬局へ上記事実を伝えることについて「お願いします」と回答。
連携:14時10分、○○薬局○○薬剤師へ電話。本人発言及び確認事実のみ共有。
回答:薬剤師から本人へ直接電話確認するとの回答。
今後:地域包括支援センターへの相談を提案。次回電話時に本人意思を再確認する。
実務チェックリスト|医療・介護機関連携確認
契約・権限
- 見守り契約の範囲を確認した
- 情報共有条項を確認した
- 個人情報条項を確認した
- 情報取得代理権の有無を確認した
- 同意と代理権を区別した
本人意思
- 本人確認をした
- 誰へ共有するか説明した
- 何を共有するか説明した
- 目的を説明した
- 同意日時を記録した
事実確認
- 発生日時を確認した
- 本人発言を分けた
- 観察事実を分けた
- 第三者情報を分けた
- 未確認事項を明示した
連携先
- ケアマネの有無を確認した
- 介護利用中はケアマネ中心とした
- 主治医・薬局を確認した
- 地域包括を確認した
- 緊急性を確認した
情報共有
- 必要最小限に限定した
- 医療判断をしていない
- 介護専門判断をしていない
- 財産情報等を不要に伝えていない
- 医療機関は本人経由・同席を優先した
情報取得
- 代理権・委任状を確認した
- 相手機関の手続を確認した
- 開示が当然ではないと理解した
- 取得範囲を必要な情報に限定した
- 受領情報を適切に管理した
記録
- 日時・担当者を記録した
- 提供情報を記録した
- 受領情報を記録した
- 相手方回答を記録した
- 次回確認日を決めた
生活背景
- 家族支援を当然視していない
- 実際の支援者を確認した
- 配偶者自身の状態を確認した
- 緊急連絡体制を確認した
- 利益相反を確認した
確認テスト
次回への接続
見守りを続けると、約束を何度も忘れる、通院や服薬管理が難しくなる、金銭管理や契約理解に変化が見られる等の記録が蓄積する場合があります。行政書士自身が判断能力の有無を断定するのではありませんが、専門家による評価や今後の支援を検討する重要な事実資料となります。
次回の第7-10回では、こうした見守り記録を「任意後見発動の判断材料」としてどのように整理するかを扱います。関係機関連携条項、個人情報提供条項、情報取得代理権、緊急時条項の具体的な設計は第7-11回で扱います。入院・介護施設入所支援の詳細はカテゴリ16、生活保護・福祉制度利用支援の詳細はカテゴリ24に譲ります。
1.行政書士は医療・介護の専門判断者ではなく、本人と専門職をつなぐ立場です。
2.介護保険サービス利用中は、原則としてケアマネジャーが介護サービス連携の中心です。
3.第三者提供への「同意」と、情報を請求・受領する「代理権」は区別します。
4.代理権があっても、関係機関から当然に情報開示を受けられるわけではありません。
5.行政書士が記録し伝えるのは、確認した事実、本人発言、第三者情報が中心です。診断・治療・介護上の専門評価は専門職へ委ねます。
本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的ガイドライン、所属行政書士会の規則、医療・介護機関や自治体の運用を確認してください。