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見守り契約業務 7-8

見守り契約の緊急連絡先設計
新人行政書士が一人で進める実務手順

「家族だから連絡する」ではなく、誰に・どの場面で・何を・どの順番で伝えるかを本人の意思に沿って設計します。第一連絡先、第二連絡先、事後報告先、情報提供同意、任意後見・死後事務との役割分担まで実務順に整理します。

本人同意第一・第二連絡先事後報告先個人情報任意後見連絡記録

最初に押さえる考え方

見守り契約の緊急連絡先は、親族の電話番号を一つ控えておくだけのものではありません。実務では、本人と連絡が取れない、救急搬送された、判断能力の低下が疑われるなど、場面ごとに「誰へ、いつ、何を伝えるか」をあらかじめ決めます。

図解|緊急連絡先設計の基本
1 本人意思連絡してよい人・避けたい人を確認。
2 事態連絡不能、搬送、入院等を分ける。
3 順位第一・第二・事後報告先を設定。
4 情報範囲安否、入院先、病名等を分ける。
5 記録・更新同意、連絡結果、変更履歴を残す。

前回7-7では、異変発見時に警察・消防、医療・介護関係者、地域包括支援センター等へ適切につなぐ考え方を学びました。本回では、その前提となる「緊急連絡網の設計」に集中します。

親族であることと、連絡・情報提供してよいことは別です本人が長男や甥への連絡を望んでいないこともあります。続柄だけで判断せず、現在の関係、本人の希望、相手の対応可能性を確認します。

この回の到達目標

候補者を整理できる

親族、友人、近隣、任意後見受任者、死後事務受任者、ケアマネ、施設、管理会社等の役割を分けられます。

連絡順位を設計できる

第一連絡先、第二連絡先、事後報告先を事態別に設定できます。

情報範囲を決められる

安否情報と健康・財産等の慎重に扱う情報を分け、本人同意を記録できます。

実務記録を作れる

緊急連絡先一覧表、情報提供同意、連絡記録、更新履歴を一式で管理できます。

この業務が必要になる実務場面

場面 実務上の問い 事前に決めること
定期連絡に応答なし 長女、友人、管理会社の誰から連絡するか。 不通基準、順位、代替経路。
転倒・救急搬送 救急要請後に誰へどこまで知らせるか。 搬送時の第一・第二連絡先。
入院 親族、任意後見受任者、ケアマネ等への共有範囲。 入院先・病名等の提供可否。
判断能力の変化 家族へ知らせるか、任意後見受任者へ報告するか。 本人意思と事後報告先。
親族と疎遠 唯一の甥へ連絡してよいか。 連絡禁止対象と代替ネットワーク。
おふたりさま 二人同時に対応不能なら誰へつなぐか。 世帯外の第三者連絡先。

おひとりさまでは「一人」より「複数経路」

親族がいない、遠方、疎遠などの場合は、管理会社、ケアマネジャー、地域包括支援センター、任意後見受任者、死後事務受任者等を組み合わせます。行政書士一人だけが唯一の連絡拠点にならないように設計します。

おふたりさまでは世帯外の連絡先を用意する

夫婦・パートナーが互いだけを緊急連絡先にすると、二人同時の事故・入院・災害時に機能しません。双方について世帯外の連絡先を設定します。

基本知識

緊急連絡先の5つの目的

  • 本人と連絡できないときの安否確認を補完する。
  • 救急・介護等の実際の支援を担う人・機関へつなぐ。
  • 本人の生活状況を知る人から必要な情報を得る。
  • 任意後見、財産管理、死後事務等の契約へ適切に接続する。
  • 行政書士が緊急時に場当たり的判断をしないよう基準を作る。

候補者ごとの位置づけ

候補者 主な位置づけ 確認点
配偶者・パートナー 日常状況、緊急対応 同時対応不能に備える。
子・兄弟姉妹・甥姪 家族連絡、補完対応 現在の関係と本人意思を確認。
友人・近隣 安否・現地状況確認 情報提供は必要最小限。
任意後見受任者 判断能力低下時の制度接続 任意後見発効前後を区別。
死後事務受任者 死亡後事務への接続 生前の包括代理人ではない。
ケアマネ・施設 介護・日常状況の連携 担当変更、利用状況を更新。
管理会社・大家 居住状況、建物管理 連絡と住居立入りは別。

第一連絡先・第二連絡先・事後報告先

第一連絡先は該当事態で原則最初に連絡する相手、第二連絡先は第一連絡先が不通・不在・対応困難な場合の代替先、事後報告先は現場対応を依頼する相手ではないものの、入院や判断能力低下等を共有すべき相手です。

人物別ではなく「事態 × 連絡先 × 情報範囲」で設計「1位長女、2位長男」だけではなく、連絡不能、救急搬送、入院、判断能力低下など場面を分けます。
事態 第一 第二 事後報告
定期連絡不通 友人A 管理会社
救急搬送 長女 長男 ケアマネ
入院 長女 任意後見受任者 必要に応じ死後事務受任者
判断能力低下疑い 本人へ再確認 任意後見受任者 本人同意に基づく親族等

本人同意と第三者提供

個人データを第三者へ提供する場合は、個人情報保護法27条1項により、法令に基づく場合等を除いて、あらかじめ本人同意を得ることが原則です。委託、事業承継、一定要件を満たす共同利用等、法律上第三者に該当しない取扱いもあるため、「同意がなければ一切共有できない」と単純化せず、各場面の法的根拠を確認します。

将来予測される情報提供について事前に同意を得る場合も、「必要な関係者へ」のような無限定な表現ではなく、親族、任意後見受任者、ケアマネジャー、医療機関、管理会社など、本人が提供先の範囲を具体的に予測できるよう整理します。

生命・身体の緊急時

個人情報保護法27条1項2号は、人の生命、身体又は財産の保護のため必要があり、本人同意を得ることが困難な場合を例外としています。同号は条文上「財産」も含みますが、見守り実務では主として生命・身体の保護場面での適用が問題となります。

本人が意識不明、室内で倒れている可能性が高いなどの場面では、同意書がないことだけを理由に必要な救急連携を遅らせません。一方、「預金を守りたい」程度の抽象的事情だけで親族へ財産情報を開示する運用にはしません。必要性、同意取得困難性、代替手段、提供範囲を慎重に確認します。

行政書士の守秘義務にも注意個人情報保護法上の例外が問題になることと、本人の秘密を無限定に開示してよいことは同じではありません。行政書士法12条の守秘義務を踏まえ、提供は目的に必要な範囲へ限定し、理由を記録します。

任意後見受任者との役割分担

任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。発効前の任意後見受任者には、任意後見人として当然に代理権があるわけではありませんが、本人同意のもと、判断能力低下や入院等の事後報告先に設定できます。

発効後に見守り受任者である行政書士自身が任意後見人となった場合は、見守り契約を終了・一本化・非重複部分のみ継続するなど整理します。第三者が任意後見人となった場合は、見守り契約を終了するか、重複しない範囲に限定するか、任意後見人への報告型へ移行するかを検討します。具体的な発動判断は7-10で扱います。

死後事務受任者との役割分担

死後事務受任者は、契約内容に応じ葬儀、火葬、納骨、死亡後の連絡、住居明渡し、各種解約等を担います。死後事務受任者であることだけを理由に、生前の緊急対応まで全面的に委ねることはしません。死亡時の詳細な連絡体制は、カテゴリ3「死後事務委任契約業務」第15回「死亡時連絡体制の作り方」で扱います。

実務の進め方

図解|緊急連絡先設計フロー
  1. 本人確認と意思確認を行う。
  2. 家族、生活、医療・介護、終活契約の関係者を把握する。
  3. 連絡不能、搬送、入院、判断能力低下等の想定事態を洗い出す。
  4. 連絡候補者と「連絡してほしくない人」を確認する。
  5. 各候補者が現実に対応可能か確認する。
  6. 第一・第二・事後報告先を事態別に設定する。
  7. 各連絡先へ提供してよい情報の範囲を決める。
  8. 本人同意を書面化し、可能な範囲で相手方の了承も確認する。
  9. 一覧表を作成し契約書・任意後見・死後事務等との整合を確認する。
  10. 定期見直しと変更履歴のルールを設定する。

本人確認・意思確認

氏名、生年月日、住所、本人確認書類、面談日時・方法を記録します。そのうえで「誰に、どこまで自分の情報を伝えるか」を本人が理解して意思表示しているか確認します。「誰でもいい」「先生に任せる」と言われても、行政書士が自由に選ぶのではなく、具体的な場面を示して意向を確認します。

想定事態を洗い出す

  • 定期連絡に応答がない。
  • 転倒・負傷・救急搬送。
  • 入院。
  • 判断能力低下の疑い。
  • 金銭管理・介護サービス上の異変。
  • 自宅設備事故・災害。
  • 死亡又は死亡疑い。

死亡時の詳細はカテゴリ3「死後事務委任契約業務」第15回に譲ります。

候補者の実効性を確認する

  • 電話番号は現在も有効か。
  • 本人と現在も交流があるか。
  • 遠方・高齢等で対応困難ではないか。
  • 緊急連絡を受ける意思があるか。
  • 対応可能な時間帯はいつか。
  • 本人宅の鍵を保有しているか。

鍵を持っていることと、行政書士から依頼されれば自由に住居へ立ち入れることは別問題です。

情報を3段階に分ける

安否確認

本人と連絡が取れない、安否確認が必要、見守り受任者からの連絡であること。

状況情報

転倒、救急搬送、入院、施設等からの緊急連絡。

慎重情報

病名、診断、認知機能、投薬、財産、債務、遺言、家族事情等。

更新ルールを決める

少なくとも年1回に加え、電話番号変更、転居、入院・施設入所、親族関係の変化、ケアマネ変更、任意後見発効、死後事務契約変更等があった時点で見直します。見守り面談のたびに「連絡先に変更はありませんか」と確認すると運用しやすくなります。

ヒアリング項目

親族・生活関係

  • 配偶者・パートナー
  • 子、兄弟姉妹、甥姪
  • 友人・近隣住民
  • 現在の交流と最終連絡時期

支援関係

  • ケアマネジャー
  • 訪問介護・訪問看護
  • 主治医・医療機関
  • 地域包括支援センター・施設

契約関係

  • 任意後見契約
  • 財産管理等委任契約
  • 死後事務委任契約
  • 管理会社・大家

本人の希望

  • 最初に知らせたい人
  • 知らせたくない人
  • 搬送・入院を知らせる範囲
  • 病名等を知らせてよい相手

具体的な聞き方

「何かあったとき、最初に知らせてほしい方はいますか。」

「その方につながらない場合、次にどなたへ連絡するとよいでしょうか。」

「逆に、緊急時でも連絡してほしくない方はいらっしゃいますか。」

「救急搬送や入院の事実はどなたまで知らせてよいですか。病名など詳しい内容は別に決めておきましょう。」

判断フロー

図解|異変発生時の連絡判断
  1. 生命・身体に差し迫った危険があれば、警察・消防・医療等への必要な緊急連絡を優先する。
  2. 本人へ再連絡できる状況なら、現在の意思を確認する。
  3. 緊急連絡ルール表で該当事態と第一連絡先を確認する。
  4. 第一連絡先が不通・対応困難なら第二連絡先へ進む。
  5. 任意後見受任者等の事後報告先へ、設定基準に従い共有する。
  6. 伝えた情報、伝えなかった情報、判断理由、結果を記録する。

第三者へ情報を伝える判断

必要性なし提供しない。
事前同意あり同意範囲内で必要最小限。
同意範囲外本人から追加同意を得られるか確認。
本人同意困難生命・身体保護の緊急性等、法的根拠を確認。
提供後相手・内容・理由を記録。

個人情報保護法27条1項2号には「財産」も含まれますが、本フローでは濫用防止のため、生命・身体の緊急保護を中心に運用します。財産保護のみを理由とする場合は、必要性と同意取得困難性を特に慎重に確認します。

作成・確認する書類

書類 主な項目
緊急連絡先一覧表 氏名、関係、電話、順位、対象事態、提供可・不可情報、同意日、了承日、更新日。
情報提供同意書 提供先の範囲、目的、情報の種類、条件、変更・撤回方法。
緊急連絡ルール表 連絡不能基準、再連絡方法、第一・第二・事後報告先、全員不通時対応。
連絡記録票 発生日時、異変、判断理由、発信日時、伝達内容、相手回答、次の対応、完了時刻。
変更履歴 変更日、変更前後、理由、本人確認方法。

緊急連絡先一覧表の項目例

項目 記載例
連絡先氏名・関係 山田花子・長女
区分 第一連絡先
対象事態 救急搬送、入院、重大事故
提供可 安否、搬送、入院先
提供不可 預貯金、遺言、死後事務契約詳細
本人同意 2026年7月1日
相手方了承 2026年7月3日

文例・記載例

本人同意を得る説明

見守り契約では、普段のご連絡だけでなく、急に連絡が取れなくなった場合や、救急搬送、入院などがあった場合に、誰へ連絡するかをあらかじめ決めておくことが大切です。

ご家族やご親族であっても、ご本人が希望していない情報までお伝えするわけではありません。「誰に」「どのような場合に」「どこまでの内容を」伝えてよいか、逆に連絡してほしくない方がいるかを一緒に整理します。後から変更することもできます。

情報提供同意文例

私は、見守り契約に基づき異変又は緊急事態が生じた場合、受任者が別紙緊急連絡先一覧表に記載された者又は関係機関に連絡し、当該事態への対応に必要な範囲で私の状況に関する情報を提供することに同意します。

受任者は、連絡の目的、必要性及び緊急性に応じ、必要最小限の情報のみを提供するものとし、提供を希望しない情報又は連絡を希望しない者については別紙記載によるものとします。

連絡先ごとの情報範囲例

相手 提供しやすい情報 原則慎重に扱う情報
長女 安否、搬送、入院、入院先 預貯金、遺言内容
友人 連絡不能、最近会ったか、安否確認依頼 病名、財産情報
管理会社 連絡不能、最終連絡日時、安全確認が必要な事情 医療詳細、財産、遺言

連絡記録例

2026年7月15日10:00 定期見守り電話を実施したが応答なし。10:10、10:30、11:00にも再架電したが応答なし。

11:10 緊急連絡先一覧表に基づき第一連絡先の長女へ連絡。「本日予定していた見守り連絡に複数回応答がなく、安否確認が必要な状況」と説明。病歴、財産状況、遺言内容は伝えていない。

長女から「前日20時頃に電話し、その際は異常なし」と回答。長女が本人宅へ向かい、12時までに状況報告を受けることとした。

記録者:行政書士○○○○

他士業・関係機関との連携

連携先 主な場面 本回での位置づけ
弁護士 親族間の紛争、本人意思と親族要求の対立、代理交渉が必要 紛争処理は行政書士だけで進めない。
司法書士・弁護士等 任意後見・成年後見の具体的対応 必要に応じ専門職へ接続。
ケアマネ・地域包括 介護状態、判断能力、独居継続の支援 詳細は7-9で扱う。
医療機関 救急搬送、入院 健康情報は目的に必要な範囲で共有。
管理会社・大家 居住状況、建物上の安全確認 連絡できることと立入り権限は別。

行政書士の業務範囲を意識する

行政書士法は2026年1月1日施行の改正により使命・職責規定が新設されています。個別の業務を受任するときは、現行行政書士法と他士業法を確認し、他の法律で制限される業務へ踏み込まないようにします。見守り契約に関連する契約書・事実整理・連絡体制の文書化と、紛争処理や他士業の独占業務は切り分けます。

一人で抱え込まないことも実務能力です相談内容がまとまっていなくても、まず現在の状況、本人意思、関係者、契約関係を整理すれば、行政書士が担う部分と他の専門職へつなぐ部分を分けやすくなります。

新人が気をつけたい点

判断しやすい考え方 整えた実務対応
親族だから詳しく話してよい。 続柄ではなく本人同意、目的、必要性、情報範囲を確認。
第一連絡先一人で十分。 不通・不在に備えて第二経路も設定。
本人が甥を指定したので登録だけする。 可能な範囲で甥本人の了承・対応可能性も確認。
任意後見受任者は既に後見人。 任意後見監督人選任前後を区別。
任意後見発効後も見守りを同じ形で続ける。 終了・一本化・非重複部分継続・報告型を再検討。
死後事務受任者へ生前対応も任せる。 生前・死亡後の契約上の役割を分ける。
緊急時なら何でも話せる。 必要性、法的根拠、最小限の提供、記録を確認。
財産を守るためなら親族へ開示できる。 抽象的な心配だけで同意を省略しない。
特に注意したい場面「心配だったので家族に全部話しました」という対応は避けます。善意であっても、本人意思、守秘義務、個人情報の取扱いとの関係が生じます。

トラブル予防策

連絡禁止対象者も一覧化する

「長男Xには本人の明示的な同意なく原則連絡しない」など、連絡してほしくない相手も記録します。理由の詳細まで必要以上に記載せず、実務上必要な指示を明確にします。

情報提供を段階分けする

単純な「提供可・不可」だけでなく、「安否のみ」「搬送まで」「入院先まで」「病名は別途確認」「財産情報は提供しない」など、具体的にします。

変更履歴を残す

更新日 変更前 変更後 理由 本人確認
2026/9/1 第一:長女 第一:長男 長女の長期海外滞在 面談・署名

兼任時は役割を記録で分ける

行政書士自身が見守り、財産管理、任意後見、死後事務を複数受任する場合、各行為がどの契約・権限に基づくものかを区別して記録します。親族が本人財産について利害関係を持つ場合は、財産情報を共有する必要性を特に慎重に確認します。

ケーススタディ|本人は甥に連絡してほしくないが、他に緊急連絡先がない

78歳・独身・子なし・賃貸住宅

Aさんには甥Bがいますが、15年以上交流がなく、「住所も知らせていない。緊急時でも甥には連絡してほしくない」と希望しています。親しい友人は既に亡くなり、ケアマネ利用、任意後見契約はありません。行政書士Cとの死後事務委任契約を検討中です。

「唯一の親族なので甥を登録」は避ける

法律上の親族関係と、本人が見守り契約上の連絡先として希望することは別です。まず本人が連絡拒否の意味と、他に連絡先がないことによるリスクを理解しているか確認します。

連絡拒否の範囲を具体化する

「救急搬送でも知らせないのか」「意識不明の場合も同じか」「入院しても知らせないのか」を事態別に確認します。死亡時の連絡はカテゴリ3第15回で別途設計します。

代替ネットワークを作る

通常不通固定・携帯へ再連絡。
安否確認管理会社へ必要最小限で相談。
生命危険警察・消防等へ必要な連絡。
継続支援地域包括等へ接続。
将来設計任意後見・死後事務の役割を検討。

一覧表への記録例

「甥B:本人の明示的な同意がない限り、原則として連絡しない」と記録します。ただし、本人の生命・身体保護のため法令上必要となる緊急措置まで妨げる趣旨ではないことを説明します。

この事例の要点「唯一の親族」と「本人が希望する緊急連絡先」は同義ではありません。おひとりさまでは、一人の親族に依存せず、生活関係者・支援機関・専門職を組み合わせたネットワーク型の設計が重要です。

実務チェックリスト|緊急連絡先連携確認

本人意思

  • 本人確認
  • 本人自身の意思確認
  • 連絡禁止対象者確認
  • 親族だけの意向で決めていない

候補者

  • 親族・友人・近隣
  • ケアマネ・施設
  • 管理会社
  • 任意後見・死後事務受任者

実効性

  • 電話番号
  • 現在の交流
  • 対応可能性
  • 相手方了承

順位

  • 第一連絡先
  • 第二連絡先
  • 事後報告先
  • 全員不通時対応

事態

  • 連絡不通
  • 救急搬送・入院
  • 判断能力低下
  • 災害・死亡疑い

情報

  • 安否・搬送
  • 入院・医療
  • 判断能力
  • 財産・遺言

書類

  • 連絡先一覧表
  • 情報提供同意
  • 連絡ルール表
  • 連絡記録票

更新・境界

  • 更新頻度
  • 任意後見発効時見直し
  • 利益相反確認
  • 紛争時の他士業連携

確認テスト

問題1
長男から「父の健康状態を全部教えて」と言われました。長男なので説明してよいですか。
続柄だけで判断しません。本人同意、提供目的、必要性、情報範囲を確認します。
問題2
緊急連絡先は第一連絡先一人を決めれば十分ですか。
不通・不在・対応不能を想定し、第二連絡先や他の代替経路も設計します。
問題3
任意後見契約を公正証書で締結すれば、受任者は直ちに任意後見人として動けますか。
任意後見契約は家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。
問題4
本人が甥への連絡を拒否していますが、唯一の親族なので第一連絡先にできますか。
親族であることだけを理由に指定せず、本人意思を確認し、代替ネットワークを検討します。
問題5
本人が意識不明で生命の危険があり、救急対応上必要な情報提供を求められました。本人同意がないので一切伝えませんか。
生命・身体の保護に必要で本人同意取得が困難な場合は、個人情報保護法27条1項2号の例外を検討し、必要最小限の情報を提供します。
問題6
友人を緊急連絡先に登録したので、預金残高や遺言内容も必要なら自由に伝えられますか。
緊急連絡先登録と財産・遺言情報の提供許可は別です。目的に必要な範囲へ限定します。
問題7
個人情報保護法27条1項2号に「財産」とあるので、財産保全目的なら親族へ自由に財産情報を伝えられますか。
自由に提供できるわけではありません。必要性、本人同意取得の困難性、代替手段、守秘義務等を慎重に確認します。
問題8
第三者が任意後見人に就任しました。従来の見守り契約をそのまま続けてよいですか。
任意後見との重複を確認し、終了、非重複部分のみ継続、任意後見人への報告型等へ整理します。

次回への接続

本回では、「異変が起きたとき、誰に・何を・どの順番で知らせるか」を事前に設計しました。次回7-9「医療・介護機関との連携」では、ケアマネジャー、訪問看護、主治医、地域包括支援センター、施設等とどの段階で情報を共有し、どのように記録するかを扱います。

判断能力低下が疑われる場合の任意後見発動判断は7-10、見守り契約書への具体的な条項化は7-11、死亡時の詳細な通知設計はカテゴリ3「死後事務委任契約業務」第15回で扱います。

実務設計に迷うときは、状況を一つずつ整理します緊急連絡先、本人同意、任意後見、死後事務などが重なる案件では、最初からすべて整理できていなくても大丈夫です。現在の家族関係、支援者、契約状況、本人の希望を確認しながら、必要な書類と連絡体制を順番に整えていきます。

本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的制度、所属行政書士会の規則、地域の運用、契約内容及び事務所体制を確認してください。

公的情報

個人データの第三者提供と法27条1項2号の例外については個人情報保護委員会、任意後見契約の効力発生時期については法務省、2026年施行の行政書士法改正については日本行政書士会連合会の公表情報を確認しています。

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本人の意思を尊重し、緊急時に迷わない連絡体制を平常時から整えます。

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