HANAWA行政書士事務所のロゴ HANAWA行政書士事務所 建設・製造・産廃業向け 許認可 × 外国人雇用 × 補助金 × 福利厚生
090-3718-2803 9:00-23:00 年中無休(土日祝日・20時以降は事前予約)
見守り契約業務 7-6

見守り契約の記録簿の作り方
新人行政書士が一人で進める実務手順

定期連絡・定期訪問・安否確認を、後から読み返して状態変化と対応経過を再現できる記録へ。本人発言、客観的事実、担当者所感、前回比較、異変対応、任意後見開始検討、情報共有まで実務順に整理します。

定期連絡記録定期訪問記録前回比較異変記録任意後見個人情報管理

最初に押さえる考え方

見守り記録簿は、「今日も電話した」「訪問した」という実績だけを残す業務日誌ではありません。本人の普段の状態を基準に、いつ、誰が、どの方法で、何を確認し、本人が何と話し、前回から何が変わり、どのような対応をしたかを時系列で残す実務資料です。

図解|実務で使える見守り記録の六つの要素
契約・同意見守り契約と本人同意の範囲内で確認します。
客観的事実見たこと、聞いたこと、確認できたことを書きます。
本人発言重要な発言は本人の言葉に近い形で残します。
前回比較単発の出来事ではなく本人自身の過去と比較します。
担当者所感事実と分離し、次に確認する理由を明示します。
対応履歴説明、連絡、連携、次回予定まで記録します。
見守り契約だけで調査・管理権限が生じるわけではありません訪問時の生活状況の観察、郵便物、請求書、通帳、薬等の確認は、見守り契約および本人の同意の範囲内で行います。本人の明示の同意や自発的な提示がないのに、郵便物を開封したり、引き出し・収納を探索したり、財産状況を調査したりしないことが基本です。

特に新人行政書士は、「異常なし」という一言で記録を終えないことが重要です。異常が確認されなかったときこそ、何を確認し、どのような本人発言・観察事実からそのように整理したのかを残します。

この記事で到達できること

記録票を設計できる

定期連絡と定期訪問を分け、基本項目、前回比較、対応欄まで実務用に設計できます。

事実と所感を分けられる

本人発言、客観的事実、伝聞、担当者所感を混同せず記録できます。

変化を拾える

単発の出来事ではなく、頻度、継続性、複数領域への広がりから状態変化を把握できます。

適切につなげられる

医療・介護・法律専門職、任意後見開始検討へつなぐための事実資料を作れます。

この業務が必要になる実務場面

定期電話・オンライン連絡の後

連絡が取れたかだけでなく、会話が成立しているか、本人から健康・生活・支払い等の困り事の申告があるか、前回と比べて変化があるかを記録します。

定期訪問の後

本人の歩行、外観、会話、本人との面談場所で通常目に入る生活環境など、電話では確認できない情報を記録します。室内観察は見守り契約と本人同意の範囲内に限り、生活空間を調査する業務と混同しません。

本人から臨時連絡があったとき

「電気代を払ったかわからない」「病院の日を忘れた」「知らない会社から請求書が来た」などの相談は、後日の状態変化を判断する手がかりになるため、定期連絡以外でも記録します。

予定日に連絡が取れなかったとき

再架電、別の登録済み連絡手段、契約で定めた緊急連絡先への連絡など、途中経過を残します。最終的に連絡が取れても、不通という事実を消さないことが重要です。

おひとりさま・おふたりさま

おひとりさまでは日常的な変化を発見する家族が近くにいない場合があり、小さな変化の継続記録の価値が高まります。おふたりさまでは、一方が他方の服薬・買物・支払いを支えている場合、その支援者側の変化が二人の生活へ影響することがあります。ただし、契約対象者ではない同居人の情報を必要以上に収集しません。

基本知識

記録簿の主な目的

目的 実務上の意味
契約履行の記録 いつ、誰が、どの方法で見守り業務を実施したかを説明できます。
状態変化の把握 本人自身の過去と比較し、変化の開始時期・頻度・継続性を確認できます。
異変対応の根拠 なぜ再確認、臨時訪問、関係者連絡等を検討したのかを説明できます。
引継ぎ 別担当者でも過去の経過と次回確認事項を把握できます。
任意後見開始検討 判断能力低下を断定するのではなく、申立ての要否を検討するための事実資料になります。

見守り契約の権限の限界

見守り契約があることと、財産管理、預金残高調査、支払代行、通帳管理、郵便物開披、本人を代理した照会を行えることは別です。見守り業務では、本人へ尋ねる、本人が自発的に話した内容を記録する、本人が自発的に提示した資料を明示の同意の範囲で確認する、という方法を基本とします。

「異常なし」とだけ書かない

記録の考え方「異常なし」は結論であって、確認過程ではありません。「本人と約20分会話。体調不良・生活上の困り事の申告なし。次回訪問日を伝えたところ本人から日付を復唱。前回記録と比べ、通常観察できる範囲で顕著な変化なし」のように、根拠となる事実を残します。

法律上・医学上の能力を判定しない

「認知症が進んだ」「判断能力がない」「任意後見開始相当」と断定するのではなく、「訪問目的について約20分間に同趣旨の質問が3回あった」「先月支払ったと話した後、10分後にまだ払っていないと話した」など、観察可能な事実を記録します。

実務の進め方

図解|記録作成の標準手順
  1. 見守り契約、確認対象、緊急連絡、情報共有の同意範囲を確認します。
  2. 前回記録を読み、前回の懸念事項と次回確認事項を把握します。
  3. 定期連絡・訪問を実施し、本人の自発的な話を先に聴きます。
  4. 客観的事実と本人発言を先に整理します。
  5. 前回記録と比較し、新規・継続・改善・悪化を整理します。
  6. 担当者所感を別欄に記載し、対応要否を判断します。
  7. 関係者へ連絡した場合は、理由、根拠、提供情報、回答を記録します。
  8. 次回確認事項と次回予定を決めて記録を閉じます。

記録はできるだけ速やかに作る

時間が空くほど、本人の言葉と担当者の解釈が混ざりやすくなります。実務では原則として当日中に記録し、やむを得ず後日追記する場合は追記日時と追記者が分かる形にします。

前回記録を見てから連絡する

前回「最近眠れない」と話していた場合、今回は「前回、眠れない日があるとおっしゃっていましたが、その後はいかがですか」と継続確認します。毎回同じ質問を機械的に繰り返すのではなく、前回から続く事項を拾うことが見守り記録の実務価値を高めます。

記録すべき基本項目

区分 記録項目 実務上の注意
管理情報 本人氏名、案件番号、担当者、日時、開始・終了時刻、実施方法 電話・訪問・オンライン・臨時連絡等を区別します。
本人確認 必要に応じ本人確認方法、同席者 重要な意思表示や金銭・契約の話へ移るときは本人性を意識します。
連絡状況 予定どおりか、不通回数、折返し、会話時間 最終的に連絡できても途中の不通を残します。
健康・身体 本人申告による体調、通院、転倒、食欲、睡眠、服薬上の困り事 医学的診断を行いません。
生活 食事、買物、清掃、洗濯、外出、介護サービス等 本人への聞き取りを基本にします。
金銭・支払 本人からの支払い忘れ、不審請求、契約等の相談 財産調査欄ではありません。本人の明示同意・自発的提示の範囲を守ります。
郵便物 本人からの相談、本人が提示した通知、通常目に入る範囲の滞留 本人の同意なく開封・内容確認しません。
本人発言 重要な言葉をできるだけそのまま記録 評価語へ置き換えません。
観察事項 歩行、外観、会話、面談場所で通常目に入る状況 契約・同意の範囲を超えて探索しません。
前回比較 変化なし、新規、継続、改善、悪化、判断不能 結論だけでなく理由を書きます。
担当者所感 懸念、次回確認理由、連携検討 客観的事実と欄を分けます。
対応 本人への説明、再確認、関係者連絡、専門職連携 契約・本人同意・法令上の根拠を確認します。
次回 次回日時、方法、重点確認事項 次の担当者が行動できる具体性を持たせます。

定期連絡記録と定期訪問記録の違い

項目 定期連絡 定期訪問
主な情報源 本人の申告、声、会話内容、応答状況 本人申告に加え、本人の外観、歩行、面談場所の状況等
生活環境 本人へ質問して確認 契約・同意の範囲で通常目に入る状況を観察
資料 原則として口頭確認 本人が自発的に提示し、確認に同意した資料を確認
注意 見えていないことを推測して書かない 訪問を「室内調査」と誤解しない

ヒアリング項目

体調・生活

  • 前回から変わったこと
  • 体調で気になること
  • 食事・睡眠・外出
  • 通院・薬で困ること

支払い・郵便

  • 支払いで困ったこと
  • 分からない請求の有無
  • 本人が相談したい郵便物
  • 新しい契約・購入

日常の変化

  • 予定を忘れたこと
  • 物を探すことの増加
  • 家事で困ること
  • 人との交流の変化

本人の希望

  • 行政書士に確認してほしいこと
  • 確認してほしくないこと
  • 誰へ共有してよいか
  • 次回までに確認したいこと
質問の目的は「能力テスト」ではありません「今日は何月何日ですか」と試験のように尋ねるより、「次の通院日はいつでしたか」「次回訪問日を一緒に確認しましょうか」など、日常会話の中で生活上の変化を把握します。

判断フロー

図解|記録後に判断する順番
  1. 本人と通常どおり連絡できたかを確認します。
  2. 前回から新しい変化があるかを確認します。
  3. その情報が客観的事実、本人発言、第三者からの伝聞のどれかを区別します。
  4. 単発か継続か、頻度が増えているかを確認します。
  5. 健康・生活・財産・安全へ影響する可能性を検討します。
  6. 行政書士だけで扱う事項か、医療・介護・法律専門職へつなぐ事項かを整理します。
  7. 任意後見契約がある場合、申立ての要否を検討するための事実資料として整理します。

対応レベルの目安

段階 記録後の対応
通常 前回から大きな変化がなく、本人から困り事の申告なし 通常の見守り継続
要観察 一度の支払い忘れ、軽い体調変化、新しい生活上の困り事 次回重点確認へ登録
要対応 同種事象の反復、複数領域の変化、不審契約等 契約に基づく再確認、本人同意による連携等を検討
緊急 生命・身体・財産への切迫した危険 安全を優先し、必要な関係機関へ連絡。判断根拠を記録

作成・確認する書類

書類 役割
見守り基本台帳 本人、連絡先、契約内容、緊急連絡先、情報共有同意、任意後見契約等の有無を管理。
定期連絡記録票 電話・オンライン時の本人申告、会話、応答、前回差を記録。
定期訪問記録票 本人申告に加え、契約・同意の範囲で観察できた事項を記録。
臨時対応記録票 不通、本人からの臨時相談、異変等を時系列で記録。
関係者連絡記録票 相手、日時、理由、提供情報、本人同意・法的根拠、回答を記録。
状態変化一覧表 同種の変化を一覧化し、開始時期、頻度、継続性を把握。

状態変化一覧表の例

日付 事実 分類 前回比 対応
4/10 本人から電気料金を支払ったか不明との申告 支払い 新規 次回確認
5/12 電話料金請求書をなくしたとの申告 支払い 継続 経過確認
6/14 本人が督促状を自発的に提示 支払い 継続 本人の対応状況を次回確認

文例・記載例

本人発言

避けたい記録

お金の管理ができなくなっている。

整えた記録

本人から「電気代を払ったか覚えていない。請求書をどこに置いたかも分からない」との発言あり。担当行政書士は預金・支払状況の調査を行っていない。

記憶・会話

避けたい記録

認知症が進んでいる。

整えた記録

訪問目的を説明した約10分後、本人から再度「今日は何の用だったかな」と質問あり。同趣旨の質問が訪問中計3回あった。

室内状況

避けたい記録

部屋が汚い。

整えた記録

本人との面談場所である居間について、通常目に入る範囲で床面に新聞、衣類等が複数置かれていた。前回訪問時の記録には同様の記載なし。収納・引き出し等の確認は行っていない。

郵便物

テーブル上に未開封と思われる郵便物が複数置かれていた。本人から内容確認の依頼はなく、開封・内容確認は行っていない。

または、本人から「この請求書を見てほしい」と自発的に提示され、内容確認について本人の明示の同意を得た上で確認した。

健康状態

避けたい記録

体調は問題なし。

整えた記録

本人から「今日は特に具合の悪いところはない」との申告あり。約30分間会話し、本人から転倒、発熱、受診予定変更等の申告なし。

客観的事実・発言・所感を分ける

客観的事実テーブル上に未開封と思われる郵便物が複数置かれていた。
本人発言「最近、郵便を見るのがおっくうになってきた。」
担当者所感前回には同様の記録がなく、新たな生活上の変化として次回も継続確認する。

覚え方:事実は「確認できたこと」、発言は「本人・関係者が話したこと」、所感は「担当者がそこから考えたこと」です。

前回比較と異変につながる記録

見守り業務では、一般的な高齢者像と比べるより、本人自身の過去との比較が重要です。もともと物が多い人の部屋に物があることと、従来整理されていた人の生活環境が短期間で変化することでは、記録上の意味が異なります。

異変記録の基本形「事実 → 過去との比較 → 担当者所感 → 対応」の順に書くと、後から判断経過を追いやすくなります。

事実:本人から「水道料金を払ったか覚えていない」との発言あり。本人が督促状を自発的に提示し、内容確認について明示の同意を得たため確認した。

過去:前月にも電話料金請求書を紛失したとの申告あり。

所感:支払い管理について同種の困難が継続している可能性があり、次回も確認が必要。

対応:本人は「自分で水道局へ確認する」と回答。次回連絡時に結果を確認予定。行政書士からの代理照会は行っていない。

複数領域の変化を見る

支払い忘れだけでなく、約束忘れ、同じ質問の反復、生活環境の変化などが重なってきた場合、単独の出来事として処理せず、状態変化一覧表で横断的に確認します。

任意後見開始検討の材料としての記録

任意後見契約は、本人の判断能力が低下しただけで自動的に効力が生じるものではありません。任意後見契約が登記され、本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じます。

申立てをすることができる者は、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。本人以外からの申立てでは、本人が意思表示できない場合を除き、原則として本人の同意が必要です。

見守り記録だけで任意後見開始を決めない記録簿は、申立ての要否を本人・任意後見受任者・親族・医師・専門職等が検討するための時系列資料です。医学的診断や家庭裁判所の判断を代替しません。実際の申立てでは、家庭裁判所の案内に従い、診断書その他の必要書類を確認します。

任意後見受任者について、「本人の判断能力が下がれば直ちに申立てなければならない」という一般的な法定申立義務が明文で定められていると整理するのは適切ではありません。契約内容、本人の状態、本人意思、具体的状況を踏まえて任意後見監督人選任申立てを検討します。

記録上注目する事実

  • 同じ質問を短時間に繰り返す。
  • 約束を忘れることが増える。
  • 支払い管理上の困難が繰り返される。
  • 説明した内容を保持できない場面が重なる。
  • 契約内容を理解しにくい場面が増える。
  • 複数の生活領域で変化が続く。

具体的な任意後見発動の判断材料は第7-10回で扱います。

他士業・関係機関との連携

連携先 主な場面 行政書士が準備する情報
医師・医療機関 体調変化、判断能力に関する医学的評価が必要 本人発言、観察事実、発生日時、前回差
薬剤師 服薬上の困り事、本人から飲み忘れ等の申告 本人申告と確認できた事実を区別
地域包括支援センター等 高齢者の生活支援、介護、孤立等 本人希望、生活上の変化、既存支援
ケアマネジャー・介護事業者 介護サービス利用中の生活変化 本人同意の範囲で必要事項を共有
弁護士 親族間紛争、消費者被害、契約解除、損害賠償等の法律事件 事実経過、資料、本人希望を整理
司法書士・弁護士 家庭裁判所提出書類の作成が必要 見守り記録を客観的事実資料として整理
弁護士 家庭裁判所事件で手続代理が必要 申立て検討の経過と資料を整理
裁判所提出書類は行政書士業務として受任しません後見開始、任意後見監督人選任等の家庭裁判所提出書類の作成は、行政書士が報酬を得て行政書士業務として受任する領域ではありません。書類作成は司法書士または弁護士へ連携し、家庭裁判所事件の手続代理が必要な場合は弁護士へ連携します。行政書士は、自ら作成した見守り記録を事実資料として整理し、適法な範囲で提供する役割を担います。

具体的な異変発見時対応は第7-7回、緊急連絡先との連携は第7-8回、医療・介護機関との連携は第7-9回で詳しく扱います。

記録の保存・共有・閲覧範囲

見守り記録には、健康、生活、財産、家族関係、判断能力に関連する情報など、プライバシー性の高い情報が蓄積されます。記録する必要があることと、事務所内外の誰でも閲覧できることは別です。

保存

施錠保管、持出管理、不要コピーの抑制、適切な廃棄を事務所ルールとして定めます。

電子

アクセス権限、認証、端末ロック、バックアップ、誤送信防止、私物端末への無断保存禁止等を整えます。

閲覧範囲

基本は業務上必要な者に限定します。担当行政書士、担当補助者、外部専門職、親族それぞれについて、業務上の必要性、本人同意、契約内容その他の適法な根拠を確認します。「親族だから全部見せてよい」とは考えません。

第三者への情報提供

本人の個人データを親族、医療機関、介護機関等へ提供する場合は、原則として本人の同意を確認します。

生命・身体・財産を守るための例外人の生命、身体または財産の保護のために必要があり、本人の同意を得ることが困難な場合には、個人情報保護法上、本人同意なく必要な範囲で第三者へ情報提供できる場合があります。緊急だから何でも共有するのではなく、必要性、緊急性、同意取得が困難な理由、提供先、提供した情報を記録します。

利益相反

本人が「長男には財産のことを知らせたくない」と希望している一方、長男から預金情報の提供を求められた場合、親族という理由だけで開示しません。契約当事者、本人意思、情報共有同意、行政書士の立場を確認します。紛争性が生じる場合は弁護士との連携を検討します。

新人が気をつけたい点

記録・対応 整えるポイント
「異常なし」だけを書く 何を確認し、どの事実からそのように整理したのかを書く。
「認知症が進行」と書く 同じ質問の回数など観察可能な事実を書く。
本人発言と所感を混ぜる 本人発言・客観的事実・担当者所感の欄を分ける。
見守り契約があれば通帳を確認できると思う 本人の明示同意、自発的提示、別契約上の権限等を確認する。
郵便物を当然に確認する 本人の同意なく開封・内容確認しない。
訪問だから室内を自由に見る 見守り契約・本人同意の範囲を超えて探索しない。
伝聞を事実として書く 「長女A氏から申告あり。担当者自身は未確認」と情報源を書く。
家族だから情報を伝える 本人同意、契約、法令上の根拠を確認する。
任意後見開始を単独で決める 申立て検討のための事実整理にとどめ、診断・手続要件を別途確認する。
家庭裁判所書類を行政書士業務として作成する 司法書士・弁護士へ連携する。
問題が解決したら途中経過を消す 発生から解決まで時系列で残す。
担当者だけが分かる略語を多用する 数年後の別担当者でも理解できる表現にする。

トラブル予防策

契約書と記録票を一致させる

契約上予定されていない確認項目を記録票へ大量に設けると、担当者が「記録欄があるから確認してよい」と誤解しやすくなります。連絡頻度、訪問範囲、緊急連絡、情報共有、権限外事項を契約と記録票で整合させます。契約条項の詳細は第7-11回で扱います。

記録様式を統一する

担当者によって「問題なし」「普通」「やや不安」などの意味が変わらないよう、事実・発言・所感・前回差・対応を共通欄にします。

訂正履歴を残す

誤記を訂正するときは、元の記録を不自然に消去せず、訂正日時、訂正者、訂正理由が追える方法を採ります。電子記録では変更履歴を残せる仕組みが望まれます。

本人に説明できる記録を書く

「頑固」「だらしない」など人格評価は避け、本人から「私について何を書いていますか」と尋ねられても、業務上の必要性を説明できる記録を作ります。

ケーススタディ|部屋が散らかり、服薬忘れが疑われた場合

82歳・一人暮らし・月1回訪問・任意後見契約あり

見守り契約には、月1回の訪問、本人への生活状況の聞き取り、緊急連絡先、一定の場合の情報共有について定めがあります。財産管理や郵便物開封の包括的権限はありません。

今回の訪問では、本人との面談場所である居間に衣類・新聞等が複数置かれ、テーブル上に未開封と思われる郵便物と薬のシートが見えました。行政書士はそれらを手に取ったり、郵便物を開封したりしていません。

避けたい記録

部屋がかなり散らかっていた。認知症が進んでいる。薬も飲めていないようなので、主治医と家族へ連絡する。

この記録は、主観、医学的評価、服薬状況の断定、契約上の連絡権限・本人同意の検討不足が混在しています。

改善後の記録

実施日時:2026年7月15日14:00~14:45。

本人応対:本人が玄関で応対。本人から「今日だったね。待っていたよ」との発言あり。約45分面談。

室内状況:本人との面談場所である居間について、通常目に入る範囲で床面に衣類、新聞等が複数置かれていた。前回6月17日の記録には同様の記載なし。収納・引き出し等の確認は行っていない。

郵便物:テーブル上に未開封と思われる郵便物が複数置かれていた。本人から内容確認の依頼・提示はなく、開封・内容確認は行っていない。

服薬関係:面談位置からテーブル上に薬のシートが複数置かれていることを確認。手に取る等の確認は行っていない。本人へ「最近、お薬について困っていることはありませんか」と質問したところ、「最近、飲んだかわからなくなることがあるんだよ」と発言あり。処方内容、服薬回数、実際の服薬状況、飲み忘れ回数は確認していない。

前回差:居間の状態について前回記録と比較して変化あり。服薬について困る旨の本人発言は今回初めて。

担当者所感:生活環境および服薬管理について前回までに記録されていない変化がある。現時点で医学的評価または判断能力低下を断定するものではなく、継続確認が必要と考える。

本人への対応:「飲んだかわからなくなることがあるのであれば、次回の受診時などに主治医や薬剤師へ相談してみる方法もあります」と提案。本人から「今度病院に行ったときに聞いてみる」と回答あり。

関係者連絡:契約書上の受任権限、緊急連絡・情報共有条項、本人の事前同意の範囲、本人の現在の意思、生命・身体・財産への具体的危険の有無を確認して判断する。単に「心配だから」という理由だけで家族へ情報提供しない。

次回確認:生活上の困り事、服薬に関する本人申告、医師・薬剤師への相談状況、前回からの生活環境の変化。

このケースから学ぶこと

1回の訪問だけで「任意後見開始が必要」と結論づけるのでも、「年齢相応なので問題なし」と処理するのでもありません。今後、同じ質問の反復、支払い管理上の困難、約束忘れなどが重なれば、任意後見監督人選任申立ての要否を検討する資料となり得ます。

実務用・見守り記録票ひな形

案件番号:          本人氏名:          担当者:

実施日:     時間:   時  分~   時  分

実施方法: □電話 □訪問 □オンライン □本人からの連絡 □関係者からの連絡 □その他

1 契約・同意

今回の確認事項は契約範囲内か:□はい □要確認

個別同意が必要な事項・本人の同意内容:

2 連絡状況

予定どおり:□はい □いいえ  不通・折返し等:

3 健康・身体

【本人申告】

【観察できた事実】

4 生活状況

【本人申告】

【契約・同意の範囲で観察できた事実】

5 金銭・支払い

【本人からの申告】

【本人が自発的に提示した事項・本人同意】

※財産調査を行う欄ではありません。

6 郵便物等

【本人からの相談・自発的提示・確認同意】

※本人の同意なく開封しません。

7 本人の重要発言

「                         」

8 その他の客観的事実

                         

9 前回からの変化

□なし □新規 □継続 □改善 □悪化 □判断不能

理由:

10 担当者所感

                         

11 リスク・懸念

□なし □健康 □生活 □金銭 □判断能力関連 □詐欺等 □安否 □その他

12 本人へ説明・提案した事項

                         

13 関係者連絡

相手:   日時:   理由:   提供情報:

本人同意:□あり □なし  同意なしの場合の法的・契約上の根拠:

14 今後の対応

□通常見守り継続 □次回重点確認 □臨時連絡 □臨時訪問検討 □医療・介護連携検討 □弁護士連携 □司法書士連携 □任意後見開始検討のための情報整理 □その他

15 次回確認事項・予定

1.         2.         3.

次回予定:

実務チェックリスト|見守り記録簿作成確認

契約・権限

  • 契約内容を確認した
  • 本人同意の範囲を確認した
  • 財産管理権限を当然視していない
  • 自発的提示・明示同意なく通帳等を確認していない
  • 同意なく郵便物を開封していない
  • 室内を必要以上に探索していない

基本記録

  • 日付・時刻・担当者
  • 実施方法
  • 連絡状況
  • 本人発言
  • 客観的事実
  • 担当者所感

前回比較

  • 前回記録を読んだ
  • 変化を記録した
  • 類似事象を確認した
  • 継続性を確認した
  • 次回確認事項を決めた

関係者連絡

  • 本人同意を確認した
  • 契約上の共有条項を確認した
  • 同意なしの場合は法令上の例外を確認した
  • 情報提供を必要最小限にした
  • 理由・相手・内容を記録した

任意後見・他士業

  • 見守り記録だけで能力を断定していない
  • 状態変化を時系列化した
  • 申立権者・本人同意を確認する認識がある
  • 医学的評価は医師へつなぐ
  • 家庭裁判所書類は司法書士・弁護士へ
  • 代理が必要なら弁護士へ

保存・個人情報

  • 指定場所へ保存した
  • 閲覧権限を必要最小限にした
  • 私物端末へ保存していない
  • 親族だからという理由だけで開示していない
  • 訂正・追記の履歴を残した

確認テスト

問題1
訪問結果に「異常なし」とだけ記載してよいですか。
適切とはいえません。何を確認し、本人が何と話し、前回と比べてどのような状態だったかを具体的に残します。
問題2
テーブル上の銀行封筒を、見守り契約があることを理由に開封できますか。
見守り契約だけを根拠に開封しません。本人の自発的提示と明示の同意その他の適法な根拠を確認します。
問題3
本人が同じ質問を3回した場合、「認知症が進んだ」と記録してよいですか。
医学的評価を断定せず、「訪問目的について約30分間に同趣旨の質問が3回あった」のように事実を記録します。
問題4
長女から「父は薬を飲んでいない」と聞いた場合、どう記録しますか。
「長女A氏から『薬が余っているようだ』との申告あり。担当行政書士自身は服薬状況を確認していない」など、情報源と未確認事項を分けます。
問題5
本人が倒れて意思確認できず、救急隊へ必要情報を伝える場面では本人同意がなければ何も伝えられませんか。
一律にはそうではありません。生命・身体・財産の保護に必要で、本人同意取得が困難な場合には、法令上の例外に基づき必要最小限の情報を提供できる場合があります。
問題6
任意後見監督人選任の申立てをできる者は誰ですか。
本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。本人以外からの申立てでは、本人が意思表示できない場合を除き原則として本人同意が必要です。
問題7
見守り記録だけで任意後見開始を決定できますか。
できません。見守り記録は状態変化を示す資料であり、医師による専門的評価、申立要件、本人意思、家庭裁判所の判断等を別途確認します。
問題8
行政書士が報酬を得て任意後見監督人選任申立書を作成しますか。
行政書士業務として受任しません。家庭裁判所提出書類の作成は司法書士または弁護士へ連携し、家庭裁判所事件の代理が必要な場合は弁護士へ連携します。
問題9
客観的事実、本人発言、担当者所感を分ける理由は何ですか。
後から第三者が読んだときに、確認できた事実と担当者の評価を区別し、判断経過を再現できるようにするためです。
問題10
見守り記録で毎回必ず行う比較は何ですか。
本人自身の前回記録との比較です。新規、継続、改善、悪化等を確認し、次回確認事項へつなげます。

記録作成の7原則

1 契約範囲契約上の権限を超えない。
2 本人同意本人の意思とプライバシーを尊重する。
3 客観性確認できた事実を書く。
4 本人の言葉重要発言を残す。
5 分離事実と所感を混ぜない。
6 比較前回と比較する。
7 次の行動次回確認・連携につながる形で終える。

見守ることと、本人の生活・財産を管理することは別です。この区別を保ちながら、本人の状態変化を時系列で丁寧に記録することが、長期の見守り業務の土台になります。

次回への接続

見守り記録によって、「前回と明らかに違う」「同じ問題が繰り返される」「生命・身体・財産への影響が考えられる」といった事実を把握した場合、次に必要になるのが具体的な初動判断です。

第7-7回では異変発見時の対応、第7-8回では緊急連絡先との連携、第7-9回では医療・介護機関との連携、第7-10回では任意後見発動の判断材料、第7-11回では契約書条項を扱います。

見守り契約の設計・記録様式についてご相談いただけます相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、見守りの目的、確認方法、記録項目、既存契約、緊急連絡先など、確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でもご相談いただけます。

本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的機関の案内、所属行政書士会の規則、地域の運用、契約内容、事務所体制等をご確認ください。

公的情報

HANAWA行政書士事務所|見守り契約業務

本人の意思を尊重し、事実に基づく記録と適切な連携を大切にします。

あわせて確認したいこと

関連する手続きを確認したい方へ

記事の内容に関連して、許認可、家族の手続き、在留資格、情報開示請求などの確認が必要になることがあります。状況に近いご案内からご覧ください。

前のページに戻る