見守り契約の安否確認項目
新人行政書士が一人で進める実務手順
健康、食事、服薬、支払い、郵便物、住環境、会話や記憶の変化、詐欺被害、孤立までを、電話確認と訪問確認に分け、受任判断から記録・連携まで実務順に解説します。
最初に押さえる考え方
見守り契約の安否確認は、本人が生存していることだけを確かめるものではありません。本人の普段の状態を基準として、健康、食事、服薬、支払い、郵便物、住環境、会話、予定管理、社会とのつながり等の変化を把握し、本人の希望を確認しながら、必要な相談先へつなぐために行います。
見守りは常時監視でも結果保証でもありません。契約で定めた日時と方法で状況を確認し、異変の早期発見と適切な連携を目指します。確認と確認の間に起きた事故、本人が伝えなかった事情、入室や現物確認を拒否した事項まで確実に把握できるものではありません。
この記事で到達できること
項目を設計できる
本人の生活状況と既往リスクを基に、毎回、定期、重点の確認項目を設定できます。
自然に確認できる
チェックリストを読み上げず、本人の尊厳を守りながら必要事項を会話に組み込めます。
変化を記録できる
客観的事実、本人の発言、担当者所見を分け、前回との違いを残せます。
適切につなげられる
行政書士の範囲を越える医療、介護、福祉、紛争対応を適切な機関へ連携できます。
この業務が必要になる実務場面
おひとりさまの生活変化を確認する
- 一人暮らしで、定期的に連絡する親族がいない。
- 親族が遠方、高齢、病気又は疎遠である。
- 転倒、入院、脱水、服薬忘れ等の経験がある。
- 郵便物や公共料金の管理に不安がある。
- 訪問販売や特殊詐欺への不安がある。
- 任意後見契約等の見直しに備えて、生活上の変化を継続記録したい。
おひとりさまでは、連絡不能時に現地へ行ける人、合鍵の保管者、かかりつけ医、管理会社、ペットの預け先、緊急時の情報提供先まで確認します。行政書士が唯一の支援者にならないよう、本人の同意を得て支援網を整えます。
おふたりさまの共倒れに備える
夫婦、事実婚、同性パートナー、きょうだい等の二人世帯でも、一方が通院、買物、調理、支払い等を全面的に担っている場合があります。一方が入院した場合に他方の生活が維持できるか、二人同時に連絡不能となった場合の対応、経済的支配や介護疲れの兆候を確認します。
二人を一括して扱わず、本人ごとに契約意思、確認項目、緊急連絡先、情報共有範囲を整理します。
親族が費用を負担する
費用負担者、契約当事者、見守りを受ける本人、報告先は別の立場です。親族が費用を負担しても、本人の生活情報を自由に取得・共有できるわけではありません。本人の理解と同意を確認し、報告条件を文書化します。
基本知識
行政書士の業務範囲
行政書士法上の中心業務は、官公署提出書類や、権利義務・事実証明に関する書類の作成等です。定期連絡や生活状況確認そのものは行政書士の独占業務ではないため、「行政書士だから当然に行える業務」と説明せず、任意契約に基づくサービスとして目的、範囲、報酬、責任を明確にします。
安否確認で把握した事実を、本人の希望に基づく契約書、同意書、官公署提出書類等の作成に活用する場合も、各業務の権限と契約を区別します。紛争性のある法律判断や相手方との交渉は弁護士へ、登記は司法書士へ、福祉サービスの包括的調整は福祉専門職へつなぎます。
法律上の能力を評価しない
「判断能力がない」「認知症である」「後見開始相当である」と断定せず、「同じ質問を15分間に4回した」「電気料金を支払ったかの回答が二転した」等と記録します。
三層に分けて設計する
| 区分 | 主な項目 | 設計の考え方 |
|---|---|---|
| 毎回 | 本人確認、体調、食事、水分、睡眠、転倒、服薬、困りごと | 電話・訪問のたびに短く確認します。 |
| 定期 | 支払い、郵便物、住環境、火の元、防犯、詐欺、交流 | 月次又は訪問時に確認します。 |
| 重点 | 転倒歴、服薬忘れ、詐欺被害歴、死別後の孤立等 | 本人固有のリスクに合わせます。 |
本人の拒否を尊重し、契約も見直す
本人は個別の質問、訪問、冷蔵庫・郵便物・薬等の現物確認を拒否できます。拒否だけで異常と決めつけず、理由、継続性、体調、同居人の影響、代替方法を確認します。
拒否が一時的であれば契約は直ちに終了しません。ただし、拒否が続き契約目的を達成できない場合は、電話への変更、確認項目の縮小、第三者同席等を協議し、改善が難しい場合は契約の変更又は解除を検討します。
安否確認項目一覧
| 分野 | 確認項目 | 向く方法 | 注意する変化 |
|---|---|---|---|
| 本人・同意 | 本人が応答しているか、今回の確認を続けてよいか | 両方 | 他人の代答、怯え、同居人が発言を遮る |
| 健康 | 現在の体調、前回からの変化 | 両方 | 息苦しさ、強い痛み、急な衰弱、説明の大きな矛盾 |
| 通院 | 受診予定、受診結果、通院中断 | 電話 | 受診忘れ、日程を繰り返し誤る |
| 服薬 | 飲み忘れ、重複服用、薬の残り | 両方 | 大量の残薬、薬の混在、自己判断の中断 |
| 食事・水分 | 回数、内容、買物、飲水 | 両方 | 食事を取らない、菓子のみ、猛暑時の水分不足 |
| 睡眠 | 睡眠時間、昼夜逆転 | 電話 | 数日眠れない、昼夜が逆転する |
| 清潔・排泄 | 入浴、着替え、洗濯、排泄上の困りごと | 訪問中心 | 強い体臭、同じ衣服、失禁増加、著しい汚れ |
| 転倒・外出 | 転倒、けが、ふらつき、買物、散歩 | 両方 | あざ、急に外出しない、帰宅できない |
| 支払い | 公共料金、家賃、税金等 | 両方 | 督促、停止予告、二重払い |
| 金銭 | 通帳・カードの所在、不審出金・送金 | 訪問中心 | 紛失反復、他人の無断管理、説明できない送金 |
| 郵便物 | 開封、整理、請求書、督促状 | 訪問 | 未開封郵便の堆積、最終通告、裁判所書類 |
| 住環境 | ゴミ、臭い、害虫、室温、転倒物 | 訪問 | ゴミの堆積、腐敗臭、空調不使用、通路閉塞 |
| 食品 | 冷蔵庫、食品量、期限 | 訪問 | 食品がない、腐敗、同じ食品の大量購入 |
| 安全・防犯 | 火の元、ガス、施錠、鍵、不審者 | 両方 | 焦げ跡、異臭、鍵紛失、知らない人を入れる |
| 理解・記憶 | 日付、予定、会話の整合、意思表示 | 両方 | 同じ質問の反復、予定をすぐ忘れる、発言の大きな変化 |
| 新規契約 | 相手、商品、金額、支払方法の理解 | 両方 | 契約事実を覚えていない、未使用品の増加 |
| 詐欺 | 不審電話、訪問者、送金、秘密の要求 | 両方 | 官公署等を名乗る送金要求、急な高額出金 |
| 孤立 | 家族、友人、近隣との交流 | 両方 | 長期間誰とも会わない、急な交流断絶 |
| 精神面 | 不安、意欲、孤独感 | 両方 | 自傷を示唆する具体的発言、著しい意欲低下 |
| 支援関係 | 医療、介護、福祉サービスの継続 | 電話 | 突然の拒否、中断、担当者変更を把握していない |
| 同居関係 | 自由に話せるか、介護負担、金銭関係 | 訪問中心 | 怯え、傷、発言妨害、金銭を取り上げられる |
| ペット | 餌、水、排泄、受診、入院時の預け先 | 訪問 | 餌切れ、悪臭、多頭化、飼育継続困難 |
| 緊急体制 | 緊急連絡先、管理会社等の変更 | 電話 | 連絡先の死亡、入院、疎遠、連絡不能 |
電話確認に向く項目
声、息づかい、ろれつ、会話速度、体調、食事、水分、睡眠、転倒、通院、服薬、外出、不審電話、交流、次回予定等です。電話だけでは住環境、食品、郵便物、衣服、残薬を直接確認できません。
訪問確認に向く項目
歩行、顔色、衣服、室温、臭い、ゴミ、転倒物、焦げ跡、冷蔵庫、未開封郵便物、不審商品、残薬、カレンダー、鍵、ペット、同居者との関係等です。冷蔵庫、郵便物、薬、通帳等は対象ごとに目的を説明し、その都度同意を得ます。
実務の進め方
- 見守り業務が任意契約サービスであり、常時監視や安全保証ではないことを説明します。
- 本人確認、契約意思、費用負担者、報告先、利益相反を確認します。
- 健康、生活、金銭、住環境、交流等の通常状態を記録します。
- 本人固有のリスクを洗い出し、毎回・定期・重点項目を設定します。
- 電話で聞く項目、訪問で観察する項目、現物確認に同意が必要な項目を分けます。
- 通常・要観察・要対応・緊急の基準と連絡先を決めます。
- 契約書、仕様書、同意書、基準状態票、確認票へ落とし込みます。
- 実施後は前回と比較し、状態変化時又は3~6か月ごとに項目を見直します。
受任前に確認すること
- 本人が見守りの目的、頻度、確認内容、費用、情報共有を理解しているか。
- 家族等の監視目的や相続上の情報収集目的ではないか。
- 24時間監視、即時駆け付け、医療・介護、包括的金銭管理を求められていないか。
- 行政書士が一人で対応できる頻度・負担・安全性か。
- 既に福祉、介護、医療の専門支援が中心となる状態ではないか。
基準状態票を作る
初回面談又は初回訪問で、声量、会話速度、歩行、食事、水分、睡眠、通院、服薬、買物、外出、支払い、郵便物処理、家族・近隣交流、住環境、本人の希望を記録します。この基準が後日の変化を判断する比較対象になります。
電話確認の標準手順
- 事務所名と氏名を名乗り、本人であることと今話せるかを確認します。
- 「前回から変わったこと」を先に尋ねます。
- 体調、食事、水分、転倒、通院、服薬を自然な会話で確認します。
- 郵便物、支払い、不審電話、交流、困りごとを必要に応じて確認します。
- 次回予定を伝え、理解状況を自然に確認します。
- 終了後、前回との違いを含めて速やかに記録します。
訪問確認の標準手順
- 前回記録と重点項目を確認します。
- 玄関で本人確認を行い、当日の入室と確認への同意を得ます。
- 歩行、表情、衣服、室温、臭い等を自然に観察します。
- 本人の自発的な話を先に聴き、その後に必要項目を確認します。
- 冷蔵庫、郵便物、薬等は目的を説明し、対象ごとに同意を得ます。
- 契約内対応、別契約、専門機関連携に分けて整理します。
- 次回予定と対応事項を本人と確認し、当日中に記録します。
確認項目を増減する場面
転倒後は歩行・室内障害物、服薬忘れ後は残薬・薬局相談、詐欺電話後は不審電話・送金、配偶者死亡後は食事・睡眠・孤立を重点化します。介護サービス等が始まった場合も、実際に支援が継続していることを確認してから重複項目を調整します。
ヒアリング項目
本人の希望
- 見守りを希望する理由
- 最も不安なこと
- 確認してほしくない事項
- 家族等への報告希望
- 連絡不能時の希望
健康・医療
- 持病、通院先、通院頻度
- 服薬管理方法
- 転倒・入院・搬送歴
- 視力、聴力、歩行
- 生活上の医師の注意
生活
- 食事、買物、水分
- 入浴、洗濯、掃除
- 睡眠、外出、ゴミ出し
- 冷暖房の使用
- ペットの飼育
金銭・郵便
- 公共料金等の支払方法
- 通帳、印鑑、カードの管理
- 支払い忘れ、二重払い
- 未開封郵便物
- 定期購入、分割払い
消費者被害
- 不審電話、訪問販売
- 不要商品の到着
- 最近の高額契約
- 送金、現金引渡し
- 秘密を求められた経験
家族・社会関係
- 定期連絡する家族
- 友人、近隣との交流
- 緊急時に駆け付ける人
- 同居者との関係
- 趣味、通いの場
本人の尊厳を守る聞き方
| 避けたい聞き方 | 整えた聞き方 |
|---|---|
| また薬を忘れたのですか。 | 薬を飲みにくい日や、うっかりする日はありましたか。 |
| 今日は何月何日か分かりますか。 | 次の通院日を予定表で一緒に確認しましょうか。 |
| 詐欺にだまされたのではありませんか。 | 最近、知らない人から電話や訪問はありましたか。 |
| そんな物は必要ありません。 | どのような説明を受け、いくらで契約されたか一緒に確認してもよいですか。 |
| 部屋が汚れています。 | 前回より床に物が増えていますが、片付けで困っていることはありますか。 |
判断フロー
| 段階 | 状態の例 | 対応 |
|---|---|---|
| 通常 | 前回との大きな変化がなく、生活状況をおおむね説明できる。 | 通常の見守りを継続し、記録します。 |
| 要観察 | 一時的な食欲低下、1回の支払い忘れ、同じ話の増加等。 | 事実を記録し、次回を早めるか、重点項目へ追加します。 |
| 要対応 | 支払い忘れの反復、会話の不整合、残薬、食品不足、督促状、不審契約等が重なる。 | 臨時訪問、再確認、本人同意に基づく専門機関連携を検討します。 |
| 緊急 | 意識混濁、呼吸困難、重大なけが、火災・ガス漏れ、自傷他害、切迫した詐欺等。 | 生命・身体の安全を優先し、119番、110番等へ必要最小限の情報を伝えます。 |
連絡が取れない場合
- 予定、通院、日時変更、電話障害の可能性を確認します。
- 契約で定めた回数・時間帯で再架電します。
- 契約上の緊急連絡先へ、連絡不能の事実を必要最小限で伝えます。
- 訪問、管理会社等への確認を契約と本人同意の範囲で検討します。
- 生命・身体への具体的危険が合理的に疑われる場合に限り、警察・消防への連絡を検討します。
複数の小さな変化を組み合わせる
会話の不整合、支払い忘れ、残薬、食品不足、外出減少が同時に見られる場合、個別の問題として処理せず、生活全体の変化として整理します。行政書士は能力を判定せず、日時、回数、数量、本人発言、前回との差を関係機関へ伝えます。
作成・確認する書類
| 書類 | 主な記載事項 |
|---|---|
| 見守り契約書 | 法的位置付け、目的、非監視・非保証、頻度、業務範囲外、拒否、緊急時、報酬、解除。 |
| 見守り業務仕様書 | 毎回・定期・重点項目、電話・訪問の方法、連絡不能時、見直し時期。 |
| 重要事項説明書 | 行政書士独占業務ではないこと、医療・介護等を代替しないこと、サービスの限界。 |
| 基準状態票 | 健康、生活、金銭、住環境、会話、交流の通常状態。 |
| 安否確認票 | 日時、方法、本人確認、同意、確認結果、前回差、事実、本人申告、所見、対応。 |
| 個人情報取扱同意書 | 利用目的、要配慮個人情報、提供先、緊急時提供、保存、廃棄、撤回。 |
| 緊急連絡先・共有同意書 | 連絡順位、提供可能情報、提供条件、変更・撤回。 |
| 再委託関係書類 | 委託範囲、守秘義務、個人情報、再々委託、事故報告、返還・廃棄、監督。 |
個人情報・要配慮個人情報の取扱い
利用目的を具体的に定める
利用目的は「見守り業務のため」だけで終わらせず、定期連絡・訪問、前回比較、緊急性判断、本人が同意した関係者への報告、医療・介護・福祉等への連携、契約履行、事故対応等まで具体化して本人へ明示します。
健康情報は原則として本人同意を得る
病歴、診療、調剤、障害等の健康情報は要配慮個人情報に該当し得ます。法令上の例外に該当する場合を除き、取得前に、取得項目、目的、保管、閲覧者、提供先、保存期間を説明し、本人の明示的同意を得ます。
第三者提供を限定する
家族、医療機関、地域包括支援センター等への提供は、関係が近いというだけでは行いません。原則として本人同意を得て、提供先、提供する情報、提供条件を定めます。
緊急時は必要最小限にする
本人の生命又は身体の保護のために必要があり、本人の同意を得ることが困難な場合は、個人情報保護法上の例外に基づき、消防、警察、医療機関等へ必要最小限の情報を提供できる場合があります。
緊急性、必要性、提供先の相当性、情報範囲を確認し、危険の内容、同意を取得できない理由、提供先、提供情報、時刻、相手方の回答を記録します。
安全管理措置
組織
責任者、取扱担当者、事故報告、点検、持出し、廃棄を定めます。
人
守秘義務、研修、退職時の権限削除、不要閲覧の禁止を徹底します。
物理
書庫施錠、机上放置禁止、持出記録、紙資料の適切な廃棄を行います。
技術
多要素認証、アクセス制御、暗号化、バックアップ、私用端末保存禁止を整えます。
再委託
再委託を行う場合は、本人への説明と契約上の根拠を確認し、守秘義務及び個人情報保護に関する契約を締結します。委託先の体制、利用目的外利用、持出し、再々委託、漏えい時報告、終了時の返還・廃棄を確認し、必要かつ適切に監督します。
文例・記載例
電話開始
こんにちは。○○行政書士事務所の○○です。△△様でいらっしゃいますか。今、5分ほどお話ししてもよろしいでしょうか。前回から体調や生活で変わったことはありましたか。
冷蔵庫の確認
食事の状況を確認するため、冷蔵庫の中を一緒に見てもよろしいでしょうか。今日はお話だけにすることもできます。
郵便物の確認
支払い忘れがないか確認するため、請求書だけ一緒に整理しますか。私信は開けません。行政書士が開封する場合は、1通ごとにご希望を確認します。
変化を伝える
できなくなったと決めつけるものではありません。ただ、先月まではご自身で確認されていた支払い、薬、食事について、今回はいくつか変化がありました。今の生活を続けやすくする方法がないか、専門の相談窓口へ一緒に相談してみませんか。
法的位置付け条項例
本契約に基づく見守り業務は、行政書士法上の独占業務ではなく、委任者と受任者との私法上の契約に基づき提供される生活状況確認サービスである。受任者は、任意後見契約、財産管理等委任契約、死後事務委任契約、官公署手続支援等の適切な実施に資する範囲で本業務を行い、医療、介護、福祉、心理支援又は警備等の専門サービスを代替しない。
非監視・非保証条項例
本業務は、別紙に定める日時及び方法により委任者の状況を確認し、異変の早期発見及び必要な関係機関への連携を図ることを目的とし、委任者を常時監視するものではない。受任者は、事故、疾病、消費者被害、孤独死その他の事態の発生防止又は結果としての安全を保証しない。
能力評価を行わない条項例
受任者が行う確認は、委任者の日常生活上の変化を観察し記録することを目的とする。受任者は、医学的診断、意思能力又は行為能力の法的判定、成年後見制度上の能力判定その他の専門的評価を行わない。
拒否と契約見直し条項例
委任者は、個別の質問、訪問又は現物確認を拒否することができる。受任者は、確認できない事項と業務上の限界を説明し、拒否の経過を記録する。拒否が継続し契約目的の達成が困難となった場合、当事者は業務内容を協議し、必要に応じて契約を変更又は解除する。
緊急時情報提供条項例
委任者の生命又は身体の保護のために必要があり、本人の同意を得ることが困難である場合、受任者は、緊急性、必要性及び相当性を確認し、消防、警察、医療機関その他の関係機関へ、危険回避に必要な最小限の情報を提供することができる。
記録例
日時:2026年7月20日14時00分。
同意:本人確認後、訪問継続、請求書、薬、冷蔵庫の確認について個別に了承を得た。
客観的事実:未開封郵便物12通。電気料金督促状2通。6月処方分の薬14包。冷蔵庫に飲料と調味料以外の食品なし。訪問目的について15分間に4回質問。
本人申告:「電気代は昨日払った」と述べたが、約10分後には「まだ払っていない」と回答。
前回差:前月までは次回訪問日を自らカレンダーへ記入していた。
所見:会話、服薬、食事、支払いの複数領域で従来との変化を確認。法律上・医学上の能力評価は行っていない。
対応:本人へ地域の相談機関への相談を提案し、了承を得た。翌日再連絡予定。
他士業・関係機関との連携
| 連携先 | 主な場面 | 伝える内容 |
|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 主に高齢者の生活機能低下、孤立、虐待、介護相談 | 日時、回数、前回差、本人希望。対象外なら他窓口を選びます。 |
| 障害福祉・保健窓口 | 若年者、障害者、精神保健、生活困窮等 | 本人の属性と課題に合う市区町村窓口を確認します。 |
| 医療機関・薬局 | 急な体調変化、受診忘れ、服薬ミス、食欲低下 | 診断せず、本人発言、残薬、観察事実を伝えます。 |
| ケアマネジャー・介護事業者 | 既存サービスの中断、生活援助、通院介助等 | 本人同意の範囲で変化と役割分担を共有します。 |
| 消費生活センター | 訪問販売、定期購入、不審請求、送金 | 契約書、相手、金額、日時、本人認識を整理します。 |
| 弁護士 | 取消し、返金、損害賠償、家族紛争、虐待者との交渉 | 紛争経過、資料、本人希望、利害関係を整理します。 |
| 司法書士 | 不動産登記、成年後見申立書類等 | 見守り記録を客観的な事実資料として整理します。 |
| 社会福祉士等 | 複合的生活課題、支援拒否、セルフネグレクト | 行政書士業務との役割分担を明確にします。 |
| 警察・消防 | 生命・身体への具体的危険、事件・事故、火災等 | 住所、最終確認、具体的危険、持病等の必要最小限。 |
新人が気をつけたい点
| 確認が不足しやすい点 | 整える対応 |
|---|---|
| 行政書士の当然業務と説明する | 任意契約サービスであることと、行政書士業務との関連を説明します。 |
| 安全を保証する | 異変の早期発見を目的とし、常時監視・結果保証ではないと説明します。 |
| 「大丈夫です」で終了する | 食事、服薬、転倒、通院、支払い等を自然に具体化します。 |
| 法律上の能力を評価する | 日常生活上の変化を事実として記録し、診断・判定をしません。 |
| 室内を自由に確認する | 冷蔵庫、郵便物、薬、通帳等は対象ごとに同意を得ます。 |
| 家族へ全情報を伝える | 本人同意、契約、第三者提供の条件を確認します。 |
| 拒否されても漫然と継続する | 代替方法を検討し、業務遂行困難なら契約を見直します。 |
| 警察が必ず確認してくれると考える | 具体的危険が合理的に疑われる場合に限って相談します。 |
| 地域包括へ一律につなぐ | 年齢、障害、生活課題に応じた窓口を選びます。 |
| 福祉・介護を抱え込む | 専門支援を代替せず、早めに役割分担します。 |
| 違和感を記録しない | 根拠となる発言、回数、数量、前回差を記録します。 |
| 再委託先へ任せきる | 契約、守秘義務、安全管理、報告、監督を整えます。 |
トラブル予防策
契約前に期待値をそろえる
- 行政書士法上の独占業務ではないこと。
- 常時監視、警備、医療、介護、家事、包括的財産管理ではないこと。
- 事故、疾病、詐欺、孤独死等を完全に防止するサービスではないこと。
- 本人の応答、同意、入室、現物提示がなければ確認に限界があること。
- 連絡不能でも住居へ当然に立ち入れないこと。
- 緊急機関の出動や結果を保証できないこと。
チェックリストを会話の裏側で使う
項目を上から読み上げると、本人が監視・尋問と感じ、項目外の話を見落としやすくなります。確認票は担当者の漏れ防止に使い、会話は本人の関心事から始めます。自由記載欄に、本人が自発的に話したこと、前回差、違和感、次回重点項目を残します。
個人情報を過剰に取得しない
「将来必要かもしれない」という理由だけで全診療情報、全財産、家族全員の情報を収集しません。業務目的に必要な範囲へ限定し、保存期間終了後は適切に削除・廃棄します。
事務所内の判断をそろえる
複数担当者がいる場合は、確認項目、段階評価、緊急連絡基準、記録様式、休日対応を統一します。担当者不在時の引継ぎと、利益相反が生じた場合の対応も決めます。
ケーススタディ|最近会話がかみ合わず、支払い忘れも増えている場合
Aさんは、契約開始後半年間、会話が明瞭で、通院日と支払日を把握していました。最近、質問と異なる回答、同じ話の反復、電気料金の支払い忘れ、未開封郵便物、残薬、食品不足が重なっています。本人は「何も困っていない」と話しています。
確認すること
- 急な体調不良、食欲低下、通院、服薬、転倒の有無。
- 買物へ行けない理由、金銭不足、身体不調、意欲低下。
- 電気料金以外の未払い、不審出金、新しい契約。
- 予定、質問への回答、同じ話の回数、前回との差。
判断
会話、支払い、服薬、食事の複数領域で変化があるため、少なくとも「要対応」とします。ただし、行政書士が認知症、意思能力の有無、後見開始相当を判定するものではありません。
対応手順
- 本人の同意を得て、請求書、薬、食品を確認します。
- 客観的事実、本人申告、前回差を分けて記録します。
- 本人へ変化を非難せず説明します。
- 本人の年齢と状況に合う医療・福祉の相談先を提案します。
- 家族への情報提供は契約と本人同意を確認します。
- 支払い代行は別の権限根拠がない限り行いません。
- 電話又は訪問を一時的に増やし、項目を見直します。
本人への説明例
できなくなったと決めつけるものではありません。ただ、先月まではご自身で確認されていた支払い、薬、食事について、今回はいくつか変化が確認できました。今の生活を続けやすくする方法がないか、地域の相談窓口へ一緒に相談してみませんか。
実務チェックリスト|安否確認項目設定
法的位置付け
- 独占業務ではないと説明
- 任意契約サービスと説明
- 専門支援を代替しない
- 常時監視ではない
- 安全を保証しない
本人・契約
- 本人確認と契約意思
- 費用負担者との区別
- 情報提供先
- 利益相反
- 拒否時の見直し
基準状態
- 健康、通院、服薬
- 食事、水分、睡眠
- 歩行、外出
- 金銭、郵便物
- 会話、交流、住環境
確認項目
- 毎回・定期・重点
- 電話・訪問の区別
- 現物確認の同意
- おひとり・おふたり
- ペット、緊急体制
個人情報
- 利用目的の明示
- 要配慮情報の同意
- 第三者提供の範囲
- 緊急時の最小限提供
- 保存・廃棄・監督
記録・連携
- 前回差
- 事実と本人申告の区別
- 所見の根拠
- 段階評価
- 適切な連携先
確認テスト
次回への接続
次回の第7-6回では、安否確認で得た情報を、客観的事実、本人申告、担当者所見に分け、前回比較、緊急度、情報提供、訂正・追記、個人情報保管まで含めて記録簿へ落とし込む方法を扱います。
異変発見時の具体的初動は第7-7回、緊急連絡先との連携は第7-8回、医療・介護機関との連携は第7-9回、任意後見契約に関する検討材料の整理は第7-10回で扱います。
本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的制度、所属行政書士会の規則、地域の運用、事務所体制及び賠償責任保険の条件を確認してください。