見守り契約の定期訪問設計
新人行政書士が一人で進める実務手順
訪問目的、頻度、訪問前連絡、入室、生活・健康・住環境・郵便物の確認、訪問拒否、連絡不能、鍵、記録、異変時対応までを受任から完了報告の順に解説します。
最初に押さえる考え方
見守り契約の定期訪問は、本人宅を訪ねて会話をするだけの業務ではありません。本人の普段の状態を基準として、生活、健康、住環境、郵便物、支払い、交友関係等の変化を把握し、本人の希望を確認しながら、必要な医療・介護・福祉・法律の相談先へつなぐ業務です。
実務上は準委任契約として設計されることが多く、受任者は契約で定めた確認を善良な管理者の注意をもって行います。ただし、定期訪問は本人の安全を常時保証するものではなく、医療、介護、家事、財産管理、身元保証又は24時間の駆け付けを当然に含むものでもありません。
この記事で到達できること
判断できる
本人の生活状況と支援体制を基に、訪問頻度と見直し条件を決められます。
実施できる
訪問前連絡、入室承諾、確認、聴取、退室、記録までを順番に進められます。
線引きできる
家事、介護、医療判断、金銭管理、法律交渉を安易に引き受けず、適切な支援先へつなげられます。
書面化できる
契約書、訪問仕様書、情報共有同意書、鍵預かり書、訪問記録へ落とし込めます。
この業務が必要になる実務場面
おひとりさまの生活変化を継続して確認する
- 一人暮らしで、親族や知人が遠方にいる。
- 転倒歴、慢性疾患、退院直後等の事情がある。
- 郵便物、請求書、支払いの管理に不安がある。
- 任意後見契約を締結しているが、まだ任意後見監督人が選任されていない。
- 緊急時に状況を説明できる人が少ない。
行政書士が唯一の訪問者になる状態は、本人にとっても事務所にとっても負担が集中します。本人の同意を得ながら、親族、地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療機関等との支援網を整えます。
おふたりさま世帯の共倒れに備える
夫婦、事実婚、同性パートナー、きょうだい等の二人世帯でも、一方が他方の介護や家計を全面的に担っている場合があります。契約者ごとに本人確認と意思確認を行い、一方の説明だけで他方の状態を判断しません。
法律上の配偶者でない相手方について、代理、相続、医療、居住等の法律問題が生じ得ます。行政書士は行政書士法上作成可能な書類の作成支援を検討できますが、個別の権利の有無や法的効果を断定せず、具体的な法律問題は弁護士へつなぎます。
親族が費用を負担する
費用負担者、契約当事者、見守りを受ける本人、報告先は別の立場です。親族が費用を負担しても、本人宅への立入りや生活情報の取得・共有が当然に認められるわけではありません。本人の理解と同意を確認し、報告条件を別紙に定めます。
他の終活契約と組み合わせる
任意後見、財産管理等委任、死後事務委任、身元保証・身元引受け、緊急時支援等と併用されることがあります。「身元保証」「緊急時支援」等は統一された法定名称ではなく、契約により責任と権限が異なります。名称ではなく条項を確認し、見守り契約だけを根拠に支払い、契約解除、医療同意、遺体引取り等を行いません。
基本知識
行政書士の業務範囲と非弁行為の回避
行政書士は、行政書士法第1条の2、第1条の3等に基づき、官公署に提出する書類や、行政書士法上作成可能な権利義務・事実証明に関する書類を作成し、その作成に必要な範囲で相談に応じます。他の法律により制限される業務は扱えません。
見守り訪問では、本人の事実と希望の聴取、書面の差出人・期限・窓口の整理、公表された一般的な手続案内の確認等を行えます。一方、契約の有効・無効、取消し、解除、返金、損害賠償、相続権等の個別具体的な法律判断や、相手方との交渉は見守り業務として扱いません。法律上の争いや法的効果の鑑定が必要な場合は弁護士へつなぎます。
| 訪問時の対応 | 進め方 |
|---|---|
| 市役所からの通知 | 差出部署、期限、問い合わせ先、一般的な提出方法を確認します。法的義務や不服申立ての判断は専門窓口又は弁護士へつなぎます。 |
| 通販・訪問販売 | 契約書、商品、請求額、本人の認識を整理し、本人と消費者ホットライン188へ相談します。行政書士が事業者と解約・返金交渉を行いません。 |
| 親族間の金銭問題 | 本人の発言と客観資料を記録し、一方当事者の代理交渉を行わず弁護士へつなぎます。 |
本人の自己決定
本人に意思決定能力があり、訪問を断る意思が明確な場合は、その意思を尊重します。拒否理由には、体調不良、外出、来客、室内を見られたくない、行政書士への不満、同居人の影響等があります。拒否のみで認知機能低下を断定せず、玄関先、電話、延期等の方法を提案します。
要配慮個人情報
病歴、障害、診療、調剤等の情報は要配慮個人情報に該当し得ます。法令上の例外を除き、取得には原則として本人の事前同意が必要です。契約時に取得項目、目的、保管、閲覧者、保管期間、第三者提供、撤回方法を明示します。
生命、身体又は財産の保護に必要で、本人の同意取得が困難な場合は、個人情報保護法第27条第1項第2号等に基づき、必要最小限の情報を警察、消防、医療機関、緊急連絡先等へ提供できる場合があります。提供先、情報、理由、時刻、結果を記録します。
訪問は監視ではない
本人が部屋を片付けていない、外出している、郵便物を見せたくないという事情だけで異常と決めつけません。確認できる場所、物品、情報を契約書・仕様書で個別に定め、訪問時にも本人の承諾を得ます。
実務の進め方
- 本人確認を行い、本人自身の希望、契約意思、費用負担者との関係を確認します。
- 生活、健康、住環境、郵便物、支払い、支援者、緊急連絡先を把握します。
- 訪問で確認する目的と、行政書士が扱わない業務を明確にします。
- 低・中・高の内部リスク区分を行い、訪問頻度を仮決定します。
- 曜日、時間帯、滞在時間、訪問前連絡、キャンセルを決めます。
- 入室、確認場所、郵便物、写真、書類持帰り、鍵の条件を決めます。
- 連絡不能、訪問拒否、異変、心肺停止が疑われる場合の対応を決めます。
- 契約書、仕様書、同意書、緊急連絡先、記録票へ落とし込みます。
- 開始後1~3か月を目安に、本人の負担と実効性を見直します。
リスク区分
| 区分 | 主な状態 | 訪問の考え方 |
|---|---|---|
| 低 | 生活が自立し、通院・支払いが安定し、他の訪問者もいる。 | 2~3か月に1回を含め、電話等と組み合わせます。 |
| 中 | 軽度の物忘れ、転倒歴、郵便物滞留、親族が遠方等。 | 月1回を基準に、電話連絡や短期的な増回を検討します。 |
| 高 | 食事・服薬の不安定、督促の反復、衛生悪化、連絡不能、虐待等の疑い。 | 月2回以上だけで補わず、医療・介護・福祉への接続と契約継続可否を検討します。 |
リスク区分は医学的診断ではありません。訪問頻度と外部支援の必要性を整理する事務所内評価です。
訪問頻度の目安
| 本人の状況 | 初期提案の例 | 併用例 |
|---|---|---|
| 自立度が高く、他の支援者もいる | 2~3か月に1回 | 月1~2回の電話 |
| 単身で親族が遠方 | 月1回 | 週1回~隔週の電話 |
| 支払い忘れ、転倒、物忘れがある | 月2回 | 週1回以上の電話 |
| 退院直後等で変化が大きい | 期間限定で週1回程度 | 医療・介護職と連携 |
| 高い危険が継続する | 見守り単独の継続を再評価 | 地域包括、医療、介護、家族会議等 |
食事や水分が継続的に取れない、身体介助なしでは生活できない、火災・徘徊・重大な転倒リスクがある、虐待や財産侵害が疑われる、24時間対応を求められる等の場合は、行政書士の訪問増加で代替しません。事務所責任者と協議し、本人へ関係機関との連携、契約変更、一時停止又は終了を提案します。
訪問前連絡
- 3~7日前に予定を確認します。
- 前日又は当日朝に最終確認します。
- 到着10~30分前に連絡します。
- 到着時に事務所名と氏名を名乗ります。
日時変更、体調、外出、同席者、確認してほしい書類、ペット等を確認します。認知機能の変化が疑われる場合は、予定表やカレンダーも併用します。
日時と滞在時間
本人の生活リズムを優先し、通院、デイサービス、食事、昼寝等と重ならない時間を選びます。夜間訪問は原則として行わず、真に必要な事情がある場合に限り、安全、業務範囲、費用、連絡体制を個別に確認します。生命・身体の緊急事態は通常訪問ではなく、警察・消防への通報を優先します。
本人の同意のない抜き打ち訪問は行いません。ただし、契約時に当日又は直前連絡とする運用へ具体的に同意している場合は、その範囲で実施します。標準滞在時間は30~60分程度とし、延長条件と追加報酬を定めます。
訪問当日の標準手順
- 前回記録と重点確認事項を確認し、危険が予測される場合は二名訪問とします。
- 玄関で本人を確認し、訪問目的を説明して当日の入室承諾を得ます。
- 本人の表情、歩行、会話、服装等を自然な範囲で観察します。
- 最近の変化、体調、生活、困りごとを本人から先に聴きます。
- 本人の承諾を得て、契約で定めた場所と郵便物等を確認します。
- 依頼事項を契約内、別契約、他機関連携に分けます。
- 次回予定、持帰り書類、退室時刻を確認します。
- 原則として当日中に記録を確定します。
ヒアリング項目
本人・契約
- 氏名、生年月日、住所
- 本人の訪問希望
- 契約当事者と費用負担者
- 親族等との利害対立
- 本人が希望する報告先
生活
- 食事、水分、買物
- 掃除、洗濯、ゴミ出し
- 入浴、睡眠、外出
- 電気、ガス、水道
- 火の消し忘れ、鍵紛失
健康
- 体調、痛み、発熱
- 息苦しさ、めまい
- 通院、服薬上の困りごと
- 転倒、けが、あざ
- 食欲、体重の変化
住環境
- 通路、段差、敷物
- 室温、換気、照明
- 臭気、ゴミ、害虫
- 食品、冷蔵庫、飲料水
- 火気、暖房器具、コンセント
郵便物・支払い
- 未開封郵便物の量
- 行政機関からの通知
- 請求書、督促、期限
- 不審な契約や定期購入
- 本人が自分で対応できるか
意思・困りごと
- 現在一番困っていること
- 手伝ってほしいこと
- してほしくないこと
- 親族等へ伝えてよいこと
- 次回訪問への希望
住環境確認の視点
| 場所 | 確認する事実 | 注意 |
|---|---|---|
| 玄関・廊下 | 通路、靴、段差、郵便物、転倒物 | 収納や私物を無断で開けません。 |
| 居間 | 室温、照明、ゴミ、臭気、暖房器具 | 「汚い」と評価せず量や位置を記録します。 |
| 台所 | 食品、飲料水、火気、洗い物 | 本人の承諾を得て確認します。 |
| 冷蔵庫 | 食品量、腐敗、期限、水分 | 契約上の根拠とその都度の同意を確認します。 |
| 寝室・浴室 | 必要な場合の転倒・生活上の危険 | 私的領域であり、明確な必要性と個別同意が必要です。 |
判断フロー
通常・軽度変化・重大な異変
| 状態 | 例 | 初期対応 |
|---|---|---|
| 通常 | 応答、会話、生活に大きな変化なし | 通常確認、次回予定、記録。 |
| 軽度変化 | 郵便物増加、食材不足、支払い忘れ、同じ話の増加 | 本人へ確認し、次回連絡前倒し、本人同意のもと連携。 |
| 重大な異変 | 反応が弱い、呼吸困難、転倒、立てない、重大な外傷 | 安全確認、119番等、緊急連絡先、時刻と状況の記録。 |
連絡不能・応答なし
- 訪問日時、変更連絡、外出・通院予定を確認します。
- インターホン、ノック、電話等を契約どおり複数回試み、時刻を記録します。
- 近隣へ確認する場合は「本日見かけたか」等の必要最小限にとどめます。
- 所定の緊急連絡先へ、連絡不能の事実と時刻だけを基本に伝えます。
- 生命・身体の危険が疑われる場合は、回数や予定時刻を待たず警察・消防へ連絡します。
- 開錠・入室は、事前同意、契約条件、緊急性を確認し、原則として警察・消防・管理会社等の立会いのもとで行います。
訪問拒否
- 本人と直接会話できるか確認します。
- 拒否理由を聴き、体調、外出、来客、不満等を整理します。
- 延期、玄関先、電話、訪問者変更、第三者同席等を提案します。
- 拒否が反復する場合は、契約方法と本人の負担を見直します。
- 同居人のみが拒否する場合は、可能な限り本人の意思を個別に確認します。
- 生命・身体への切迫した危険が疑われる場合は緊急対応へ移ります。
心肺停止又は死亡が疑われる場合
行政書士が死亡を判断しません。安全な範囲で反応と呼吸を確認し、反応又は正常な呼吸がない場合は直ちに119番へ通報し、通信指令員の指示に従います。事件性や不自然な状況が疑われる場合は110番にも連絡します。
- 救命に必要な場合を除き、本人や室内の物品をむやみに動かしません。
- 発見時刻、入室経緯、室内状況、通報時刻、指示内容を記録します。
- 緊急連絡先への連絡は警察・消防の指示と契約上の順位を踏まえます。
- 医師等による死亡確認後は、従前の見守り契約の権限を前提に遺体搬送、財産処分、契約解除等を行いません。
委任は本人の死亡により原則として終了しますが、急迫の事情がある場合には、相続人等が処理できるまで必要な応急処分が問題となることがあります。死亡後は警察等の指示に従い、現場保全と引継ぎに必要な最小限の対応にとどめます。
作成・確認する書類
| 書類 | 主な記載事項 |
|---|---|
| 見守り契約書 | 目的、訪問、報酬、個人情報、緊急対応、善管注意義務、責任範囲、変更・終了。 |
| 定期訪問仕様書 | 頻度、日時、滞在時間、前連絡、入室、確認場所、郵便物、写真、追加訪問。 |
| 情報共有同意書 | 提供先、情報、目的、通常時・緊急時の条件、期間、撤回方法。 |
| 緊急連絡先一覧 | 氏名、関係、順位、電話、対応可能時間、共有範囲、利害対立。 |
| 鍵預かり契約書 | 鍵の種類、本数、保管、持出し、使用目的、個別同意、立会い、紛失、返還。 |
| 訪問確認票 | 本人、生活、健康、住環境、郵便物、意思、次回対応。 |
| 書類預り証 | 書類名、通数、原本・写し、目的、預り日、返却予定、受領者。 |
| 訪問記録・異変報告 | 日時、入室、観察事実、本人発言、判断、連絡先、対応、次回。 |
鍵預かりの基本
鍵預かりは、紛失、不正使用、盗難、空き巣等の疑念、入室権限をめぐる重大なリスクを伴うため、安易に標準サービスとしません。受任する場合は別契約とし、鍵に本人の氏名・住所を直接表示せず、保管責任者、持出記録、複製禁止、使用条件、警察等の立会い、紛失時の錠交換費用、返還を定めます。
情報共有同意書
「関係者へ必要に応じて報告する」という包括同意だけにせず、救急搬送、契約所定の連絡不能、生活能力の著しい変化、督促の反復、消費者被害・虐待・財産侵害の重大な疑い等、報告条件を具体化します。緊急時の法令上の例外提供も条項に含めます。
文例・記載例
訪問開始
こんにちは。○○行政書士事務所の○○です。本日は定期訪問で伺いました。体調や最近の生活についてお話を伺い、確認してほしい郵便物があれば一緒に見ます。今からお部屋に入ってもよろしいでしょうか。
確認場所
台所の食品や飲料水の状況も確認した方がよいと思います。台所まで一緒に確認してもよろしいですか。冷蔵庫は開けずにお話だけ伺うこともできます。
郵便物
こちらは市役所から届いています。差出部署、期限、問い合わせ先を一緒に確認しましょう。一般的な提出方法や窓口は確認できますが、通知による具体的な法的義務や争い方の判断が必要な場合は、担当窓口又は弁護士へ相談しましょう。
支払い
支払期限が記載されています。現在の見守り契約には、私が現金を預かって支払う業務は含まれていません。ご本人が支払える方法を確認し、継続的な支援が必要であれば別の制度や契約を検討します。
契約外の家事・介護
お困りの状況は分かりました。現在の契約は生活状況の確認と相談先の整理で、掃除や身体介助は含まれていません。安全に対応できる事業者や介護の相談先を一緒に整理します。
訪問拒否
今日は訪問を希望されないとのことですね。体調に問題がないことだけ確認させてください。別日に変更する、玄関先で短くお話しする、今日は電話にする方法があります。どれがよいでしょうか。
定期訪問条項例
受任者は、原則として毎月1回、本人の居宅を訪問し、本人との面談により、生活状況、健康状態、住環境、本人が提示した郵便物及び請求書等の状況並びに困りごとの有無を確認する。確認できる居室、物品及び情報の範囲は別紙仕様書に定め、受任者は本人の承諾なく私的領域を確認しない。
本業務には、身体介護、家事代行、医療行為、服薬管理、金銭管理、相手方との法律交渉、身元保証及び24時間の緊急対応を含まない。ただし、法令上実施可能な業務について別途書面による契約を締結した場合はこの限りでない。
受任者は本業務を善良な管理者の注意をもって行う。受任者が本業務を適正に実施したにもかかわらず、訪問間隔中に発生した本人の病状急変、事故、死亡、第三者とのトラブル又は消費者被害等について、受任者の責めに帰すべき事由がない限り、受任者は損害賠償責任を負わない。前項は、故意又は重大な過失による責任その他法令上免責が認められない責任を免除するものではない。
訪問仕様書例
訪問:毎月第2火曜日、午後2時から午後3時まで。前日までに電話し、到着約20分前に再連絡する。
入室:本人が玄関を開け、当日の入室を承諾した後に入室する。
確認場所:居間及び玄関を基本とし、台所その他は必要性を説明して本人の承諾を得る。
郵便物:本人が提示した郵便物の差出人、期限、連絡先、一般的な窓口を確認する。本人の承諾なく開封しない。
報告:別紙情報共有同意書に定める救急搬送、連絡不能、生活能力の著しい変化等に該当する場合に限り、指定先へ必要最小限を報告する。
訪問記録例
日時:令和○年○月○日14時00分~14時45分
入室:本人が玄関で応対。訪問目的を説明し、入室承諾を得た。
本人の様子:自力歩行。本人から「昨日めまいがした」との発言あり。医学的評価は行っていない。
生活:本人申告では食事は1日3回。承諾を得て冷蔵庫を確認し、弁当、飲料水、野菜を確認。
郵便物:市役所通知と電気料金請求書を本人が提示し、本人自身が開封。差出部署、期限、問い合わせ先を確認。法的義務の判断及び支払い代行は行っていない。
住環境:居間床面に新聞紙約10日分。通路幅約60センチは確保。
次回:3日後に電話し、めまいと郵便物対応を確認する。
他士業・関係機関との連携
| 連携先 | 主な場面 | 行政書士が整理すること |
|---|---|---|
| 弁護士 | 契約の有効・取消し・解除、相手方交渉、損害賠償、親族紛争、虐待・財産侵害 | 本人意思、契約、経過、資料、利害関係。 |
| 司法書士・弁護士 | 成年後見等の家庭裁判所提出書類、申立てに関する法的対応 | 見守り記録を客観的な事実資料として整理。 |
| 医療機関 | 痛み、呼吸困難、発熱、転倒、急な混乱、服薬上の問題 | 診断せず、本人発言と観察事実を伝える。 |
| 地域包括・ケアマネジャー | 介護、セルフネグレクト、生活能力低下、支援拒否、虐待 | 本人同意を原則に、緊急時は必要最小限を共有。 |
| 消費生活センター | 不審請求、訪問販売、定期購入、高額商品、投資勧誘 | 本人と188へ相談。事業者との交渉は行わない。 |
| 警察・消防 | 切迫した生命・身体の危険、事件・事故、安否確認 | 住所、最終確認、異音・異臭等の具体的事実。 |
| 社会福祉協議会 | 福祉サービス利用援助、日常的金銭管理等 | 本人の生活状況と希望を整理。 |
本人同意を原則としつつ、生命・身体・財産又は重大な権利侵害の保護に必要で、同意取得が困難な場合は、法令上の例外を確認して必要最小限を共有します。
新人が気をつけたい点
| 確認が不足しやすい点 | 整える対応 |
|---|---|
| 訪問回数を先に決める | 本人の状態、他の支援、負担、費用を確認してから決めます。 |
| 室内を自由に確認する | 契約上の範囲と、その日の本人承諾を確認します。 |
| 郵便物を勝手に開封する | 原則として本人に開封してもらい、代わる場合は1通ごとに承諾を得ます。 |
| 請求書を代わりに支払う | 見守りと財産管理を分け、本人が支払える方法や別制度を検討します。 |
| 家族へ全情報を伝える | 費用負担者と報告先を分け、同意書の条件に従います。 |
| 訪問拒否を認知症と判断する | 拒否理由、会話、理解、前回との差を事実として記録します。 |
| 家事や介護を少しだけ行う | 事故と依存を避け、別サービスへつなぎます。 |
| 行政文書の法的効果を断定する | 窓口・期限・一般案内にとどめ、具体的法律判断は弁護士等へ。 |
| 消費者被害の相手方と交渉する | 本人と188へ相談し、法律交渉は弁護士へつなぎます。 |
| 合鍵があれば入室できると考える | 事前同意、目的、条件、緊急性を確認し、単独入室を原則避けます。 |
| 死亡後も見守り権限が続くと考える | 警察等の指示に従い、従前の権限で財産処分等を行いません。 |
| 「虐待」「詐欺」と断定して記録する | 疑いと客観的事実を分け、発言、日時、物品等を記録します。 |
トラブル予防策
契約範囲を見える形にする
| 通常の見守り訪問 | 別契約・他機関を検討する業務 |
|---|---|
| 定期面談、生活状況の聴取、同意範囲の住環境確認、本人提示の郵便物確認、相談先整理、契約に基づく報告 | 掃除、調理、買物、身体介護、服薬介助、現金・通帳管理、支払い代行、法律交渉、身元保証、24時間対応、ペットの世話 |
別契約とすれば何でも扱えるわけではありません。法令上実施可能か、資格、保険、責任、報酬、権限、実施体制を確認します。
立替金・預り金
書類取得費等を立て替える場合は、事前承認、1件当たりの上限、領収書、精算期限、精算書を定めます。事務所例として1件1万円以内、立替日から7日以内の精算とし、生活費や私的買物の立替えは行わない方法があります。現金を預かる場合は必ず預り証を発行します。
写真
住環境比較のため撮影する場合も、撮影目的、対象、保存場所、閲覧者、保管期間、第三者提供、削除時期・方法を説明し、本人の同意を得ます。無断撮影は行いません。
二名訪問を検討する場面
- 初回訪問、高額財産、契約認識の相違。
- 同居人との対立、暴力・威嚇・動物等の危険。
- 著しい不衛生、合鍵使用の可能性、異変発見が予想される場合。
記録
原則として訪問当日に確定します。緊急対応で完成できない場合は、時刻、発言、通報先、指示等をその場で速記し、当日中に正式記録へ反映します。やむを得ず翌日となる場合は遅延理由も残します。
免責条項
見守りは結果保証ではありませんが、免責条項を置けば故意・過失の責任が全てなくなるわけでもありません。訪問間隔中の急変等について責めに帰すべき事由がない場合の責任範囲と、故意・重大な過失その他法令上免責できない責任を分けて記載し、個別の契約書は弁護士の確認を受ける運用が安心です。
ケーススタディ|月1回訪問時に未開封郵便物が大量にあった場合
Aさんは月1回の訪問と週1回の電話連絡を利用しています。玄関脇に、電気料金、市役所、クレジットカード会社、通信販売会社等からの未開封郵便物が約25通ありました。本人は「忙しくて見ていないだけ」と話しています。
進め方
- 前月との差を確認し、視力、身体、内容理解、意欲等の事情を本人へ尋ねます。
- 本人へ「一緒に差出人と期限を確認するか」を尋ね、承諾を得ます。
- 期限、支払い、行政機関、契約、広告、不審なものに分類します。
- 原則として本人に開封してもらい、行政書士が開ける場合は1通ごとに承諾を得ます。
- 差出人、期限、金額、問い合わせ先、本人が行う対応を一覧にします。
- 市役所通知は一般的な窓口・提出方法を確認し、法的義務等の判断は専門窓口又は弁護士へつなぎます。
- 通販等は本人の契約認識、商品、金額を確認し、本人と188へ相談します。事業者との交渉は行いません。
- 行政書士は見守り契約だけを根拠に支払い、解約、返金要求を行いません。
- 本人の同意を得て、電話の前倒し、短期的な訪問増加、地域包括等への相談を決めます。
- 本人が親族への報告を希望しない場合は、緊急性と同意書の条件を確認して対応します。
対応一覧例
| 書類 | 確認事項 | 対応 |
|---|---|---|
| 電気料金 | 期限、金額、口座振替 | 本人が支払える方法を確認。 |
| 市役所通知 | 差出部署、期限、窓口 | 一般案内を確認。法律判断は行わない。 |
| カード会社 | 差出人、期限、本人の認識 | 本人が窓口へ連絡する方法を整理。 |
| 通販書類 | 商品、金額、定期購入 | 本人と188又は弁護士へ相談。 |
記録例
玄関脇に未開封郵便物約25通を確認。前回は約3通。本人は「忙しくて見ていない」と説明した。本人の承諾を得て差出人及び期限別に分類し、本人自身が8通を開封した。市役所通知は差出部署、回答期限、問い合わせ先を確認したが、法的効果の判断は行っていない。電気料金の支払い代行は行っていない。通販書類について本人が契約内容を十分に説明できなかったため、188への相談を提案した。本人は長男への報告を現時点で希望しなかった。1週間後に電話確認することで合意した。
実務チェックリスト|定期訪問設計確認
契約前
- 本人確認と本人意思
- 費用負担者との区別
- 生活・健康・支援者
- 利益相反
- 行政書士の業務範囲
訪問設計
- 目的と頻度
- 曜日・時間・滞在
- 訪問前連絡
- キャンセル・追加費用
- 試行後の見直し
入室・鍵
- 当日の入室承諾
- 確認場所の特定
- 鍵使用目的と条件
- 単独入室回避
- 立会い・使用記録
確認事項
- 生活・健康
- 住環境
- 郵便物・請求
- 消費者被害の兆候
- 本人の希望
個人情報
- 要配慮情報の事前同意
- 利用目的・保管期間
- 提供先・条件
- 緊急時例外
- 写真の保存・削除
異変対応
- 連絡不能の段階
- 訪問拒否の代替案
- 110番・119番基準
- 心肺停止時の手順
- 死亡後の権限確認
契約外業務
- 家事・介護
- 医療判断
- 支払い・金銭管理
- 法律判断・交渉
- 24時間対応
訪問後
- 当日記録
- 発言と観察の区別
- 断定表現の回避
- 次回期限・担当
- 契約変更・連携検討
確認テスト
次回への接続
次回の第7-5回では、本人の応答、表情、歩行、食事、水分、服薬、生活リズム、住環境、認知機能の変化、虐待及び消費者被害の兆候等を、平常時と比較するための安否確認項目として整理します。
訪問記録簿の詳細は第7-6回、異変発見後の対応は第7-7回、緊急連絡先は第7-8回、医療・介護機関との連携は第7-9回、任意後見開始の判断材料は第7-10回で扱います。
本記事は新人行政書士向けの一般的な実務教材です。個別案件では、最新の法令、公的制度、所属行政書士会の規則、地域・関係機関の運用、賠償責任保険の条件を確認してください。