情報開示請求書はどう書くか
広すぎる請求・狭すぎる請求を避ける実務
初めて情報開示請求書を作成する場合、どこまで具体的に書けばよいか迷うことがあります。相談内容がまとまっていなくても、確認すべき資料と整理の順番を押さえれば、請求書の形に近づけられます。本記事では、起案前の判断から提出後の備えまでを順に解説します。
情報開示請求書の失敗は「文章力」より「対象特定」で起きる
この章で扱う主なポイント
- 開示請求書は説得文ではなく、行政文書を特定するための書面
- 広すぎる請求は補正・探索負担・不明確化につながる
- 狭すぎる請求は必要な文書の取り漏れにつながる
- 本記事で扱う範囲は本請求・起案段階に限定する
情報開示請求書では、請求理由を長く書くことよりも、対象文書を特定できることが重要です。相談者の不満や経緯をそのまま書くのではなく、行政文書の名称、時期、部署、事業名、文書類型に整理して記載します。
開示請求書は説得文ではなく、行政文書を特定するための書面
開示請求書は、行政機関を説得するための意見書ではなく、求める行政文書を特定するための書面です。情報公開法上も、開示請求書には「行政文書の名称その他の行政文書を特定するに足りる事項」を記載することが求められます。相談者が「理由を知りたい」と話していても、そのまま書くのではなく、決裁文書、通知、照会、回答、議事録、報告書などの文書に置き換えて考えます。メールも、職務上作成・取得され組織的に用いられるものとして保有されている場合は、行政文書に該当し得ます。
広すぎる請求は補正・探索負担・不明確化につながる
請求範囲が広すぎると、実施機関がどの文書を探せばよいか判断しにくくなります。「○○に関する資料一式」とだけ記載すると、対象期間、担当部署、文書の種類が不明確になりやすいです。対象期間を置き、担当部署や事業名を入れ、決裁文書、会議資料、照会文書、回答文書などに分けて書くと整理しやすくなります。広い請求が常に不適切という意味ではなく、「探せる広さ」に整える視点が大切です。
狭すぎる請求は必要な文書の取り漏れにつながる
請求範囲を狭くしすぎると、必要な文書を取り漏れることがあります。正式な文書名が分からない段階で名称を一つに決めると、別名称で管理されている文書に届かない可能性があります。正式名称が分からないときは、通称、内容、作成部署、作成時期、事業名を組み合わせます。必要に応じて「これに関連する決裁文書」「照会・回答文書」などの文書類型も検討します。
本記事で扱う範囲は本請求・起案段階に限定する
この記事では、情報開示請求のうち、本請求と開示請求書の起案段階を中心に扱います。制度全体の抽象的な説明や、詳細な判例検討、個別事件の深い事例分析は主な対象にしません。実務上は、補正、開示決定、不開示決定、部分開示、開示実施方法の申出、審査請求の検討が続くことがあります。起案時点から提出後を見据えておくと、相談者への説明も落ち着いて行えます。
開示請求書を書く前に確認すべき3つの判断軸
この章で扱う主なポイント
- 判断軸1:求めているものは「行政文書」かを確認する
- 判断軸2:国の情報公開法案件か、自治体条例案件かを切り分ける
- 判断軸3:請求先の実施機関・保有部局を絞り込む
開示請求書を書く前に、まず「請求できる文書か」「どの制度を使うか」「どこに出すか」を確認します。この判断を飛ばすと、様式や提出先、手数料、処理期間の確認がずれやすくなります。
判断軸1:求めているものは「行政文書」かを確認する
最初に確認するのは、相談者が求めているものが行政文書として請求対象になり得るかどうかです。行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成または取得し、組織的に用いるものとして保有している文書、図画、電磁的記録などを指します。相談者は「説明がほしい」と話すことがありますが、情報公開請求で求めるのは説明そのものではなく、説明の根拠になり得る行政文書です。通知、決裁文書、会議資料、議事録、台帳、メール、報告書などに置き換えて整理します。
判断軸2:国の情報公開法案件か、自治体条例案件かを切り分ける
次に、国の行政機関に対する請求なのか、自治体に対する請求なのかを切り分けます。国の行政機関であれば情報公開法、自治体であれば当該自治体の情報公開条例や施行規則を確認します。同じ情報公開請求でも、様式、提出先、手数料、決定までの期間、本人確認や代理人確認の扱いが異なることがあります。対象機関の公式ページを確認し、手続に合わせて起案します。
判断軸3:請求先の実施機関・保有部局を絞り込む
開示請求書は、対象文書を保有している実施機関に提出します。相談者が認識している窓口と、実際に文書を保有している部署が一致するとは限りません。たとえば、文書は首長部局ではなく、教育委員会、選挙管理委員会、外局、地方支分部局などが保有している場合があります。組織図、所掌事務、行政文書ファイル管理簿、公表資料、審議会ページなどを確認し、保有部局の候補を絞ります。
起案前に集めるべき5つの公式資料
この章で扱う主なポイント
- 公式資料1:行政文書ファイル管理簿で文書名・部局名を探す
- 公式資料2:所管機関の開示請求書様式と記載例を確認する
- 公式資料3:審査基準で補正・不開示情報・存否応答拒否の考え方を確認する
- 公式資料4:標準処理期間・手数料・納付方法を確認する
- 公式資料5:開示実施申出書など提出後に必要な様式も先に確認する
起案前には、二次情報ではなく一次情報を確認します。解説記事は原典探索の入口として役立ちますが、請求書の根拠や実務判断は、法令、条例、公式様式、審査基準、窓口案内で確認するのが基本です。
文書名、作成年度、保存期間、担当課の手がかりを確認します。
請求者欄、行政文書名欄、代理人欄、押印の要否を確認します。
補正、不開示情報、部分開示、存否応答拒否の考え方を確認します。
処理期間、開示請求手数料、納付方法、受付方法を確認します。
開示実施方法等申出書、写しの交付、閲覧、納付方法を確認します。
公式資料1:行政文書ファイル管理簿で文書名・部局名を探す
行政文書ファイル管理簿は、文書名や保有部局を探すための重要な資料です。国の行政機関については、e-Govポータルの行政文書ファイル管理簿検索機能を用いて横断的に検索できます。検索するときは、相談者が使っている言葉だけでなく、行政側が使いそうな事業名、制度名、会議名、年度、担当課名でも調べます。検索結果から文書名、作成・取得年度、保存期間、担当課を確認し、請求文言に反映させます。
公式資料2:所管機関の開示請求書様式と記載例を確認する
開示請求書には、各機関が用意している様式や記載例があります。氏名、住所、法人名、担当者、請求する行政文書の名称、開示方法、連絡先など、様式ごとに記載欄が異なるため、必ず対象機関の公式様式を確認します。別機関のひな形は参考になりますが、そのまま使うのではなく、提出先の様式、手数料、提出方法に合わせて整えます。
公式資料3:審査基準で補正・不開示情報・存否応答拒否の考え方を確認する
審査基準は、開示請求書の起案前に確認したい資料です。行政文書の特定、補正、不開示情報、部分開示、存否応答拒否に関する考え方は、請求文言を作るうえで参考になります。行政文書の名称が正式名称でなくても、通称や内容から特定できる場合があります。実施機関が他の文書と区別できる程度の記載を目指します。
公式資料4:標準処理期間・手数料・納付方法を確認する
相談者に見通しを伝えるためには、標準処理期間、手数料、納付方法を確認しておきます。国の行政機関では、開示請求1件ごとに開示請求手数料が必要となる案内があり、例として書面による請求では300円、オンラインによる請求では200円とされる手続があります。ただし、手数料や納付方法は機関や手続によって異なるため、対象機関の公式案内で確認します。
公式資料5:開示実施申出書など提出後に必要な様式も先に確認する
開示請求は、請求書を提出して終わる手続ではありません。開示決定がされた後、閲覧、写しの交付、電子データでの提供など、開示の実施方法を申し出る手続が必要になることがあります。起案段階で開示実施申出書や手数料案内も確認しておくと、提出後の説明がしやすくなります。相談者が紙でほしいのか、データで確認したいのか、閲覧で足りるのかも早めに整理します。
開示請求書の全体構成は4つの欄で整理する
この章で扱う主なポイント
- 欄1:請求者情報は本人・法人・代理人の区別を明確に書く
- 欄2:請求する行政文書の名称は正式名称または特定できる表現で書く
- 欄3:請求する文書の範囲は時期・部署・事業名・文書類型で絞る
- 欄4:求める開示方法・連絡方法は提出後の手続を見据えて書く
開示請求書は、様式に沿って書けばよい部分と、実務判断が必要な部分があります。特に重要なのは、請求者情報と請求対象文書の欄です。欄ごとの役割を理解してから記入すると、提出後の補正にも対応しやすくなります。
欄1:請求者情報は本人・法人・代理人の区別を明確に書く
請求者情報では、個人、法人、代理人の区別を明確にします。個人であれば氏名と住所、法人であれば法人名、所在地、代表者名、担当者名、連絡先などを様式に沿って記載します。行政書士が代理人として関与する場合は、委任状や代理権確認書類の要否を確認します。情報公開請求は本人以外による提出も可能ですが、代理権の確認方法や委任状の要否は各機関の運用によるため、事前確認が必要です。
欄2:請求する行政文書の名称は正式名称または特定できる表現で書く
請求する行政文書の名称が分かる場合は、行政文書ファイル管理簿や公表資料に記載された名称を使います。正式名称が分からない場合は、通称、内容、作成部署、作成時期を組み合わせます。実施機関の職員が他の文書と区別できる程度に書くことが大切です。「○○事業に関する令和○年度の決裁文書」「○○会議の議事録および配布資料」など、具体的な手がかりを加えます。
欄3:請求する文書の範囲は時期・部署・事業名・文書類型で絞る
請求範囲は、時期、部署、事業名、文書類型で整理します。範囲を限定せずに「関係資料一式」と書くよりも、年度、担当課、対象事業、文書の種類を組み合わせる方が実務上扱いやすくなります。たとえば、「令和○年度に○○課が作成または取得した、○○事業の委託先選定に関する決裁文書、審査資料、照会・回答文書」と書くと、探索範囲が明確になります。
欄4:求める開示方法・連絡方法は提出後の手続を見据えて書く
開示方法には、閲覧、写しの交付、電子データでの提供などがあります。どの方法を選ぶかによって、開示実施手数料や受け取り方が変わることがあります。相談者が内容を確認するだけなら閲覧で足りる場合もありますが、後続の手続で資料として使う可能性があるなら写しの交付が必要になることもあります。連絡方法も、補正や決定通知の受領を見据えて整えます。
法定記載事項から逆算して請求文言を組み立てる
この章で扱う主なポイント
- 氏名・住所等はその後の通知・補正連絡を前提に正確に書く
- 行政文書の名称は正式名称・通称・内容を組み合わせて書く
- 行政文書を特定するに足りる事項は、他の文書と識別できる程度を目指す
- 押印・電話番号・連絡先の扱いは各機関の様式・記載要領で確認する
開示請求書は、自由に事情を書く書面ではなく、法定記載事項を満たす書面です。条文と様式から逆算して書くと、必要な情報が整理され、請求文言も安定します。
氏名・住所等はその後の通知・補正連絡を前提に正確に書く
氏名・住所等は、提出後の通知や補正連絡を受けるために重要です。法人や代理人が関与する場合は、請求者本人、法人担当者、代理人の関係を整理して記載します。行政書士として受任する場合は、誰の名義で請求するのか、代理人として記載するのか、委任状を添付するのかを対象機関の案内で確認します。補正連絡を受ける担当者も、事前に整理しておくと対応しやすくなります。
行政文書の名称は正式名称・通称・内容を組み合わせて書く
行政文書の正式名称が分かる場合は、その名称を使います。行政文書ファイル管理簿や公式ページに記載された表記を確認し、できるだけ表記を合わせると伝わりやすくなります。正式名称が不明な場合は、通称、文書の内容、作成部署、対象期間、関連する事業名を組み合わせます。正式名称と通称が両方あるときは、併記すると誤解を減らせます。
行政文書を特定するに足りる事項は、他の文書と識別できる程度を目指す
行政文書を特定するに足りる事項とは、実施機関が対象文書を他の文書と識別できる程度の情報を指します。請求者側が完全な文書名を知らなくても、特定に役立つ情報を積み上げることが大切です。対象期間、担当部署、事業名、会議名、処分名、文書類型を組み合わせ、必要に応じて添付資料で補います。文書を探す側の視点で読み返すことも有効です。
押印・電話番号・連絡先の扱いは各機関の様式・記載要領で確認する
押印、電話番号、メールアドレス、代理人欄の扱いは、機関や様式によって異なります。古いひな形や別機関の様式を参考にすると、現在の取扱いと合わない場合があります。提出前には対象機関の最新様式と記載要領を確認します。オンライン申請の場合は、電子署名や添付書類、手数料納付方法の扱いも確認します。受付される形式に合わせることが実務上のポイントです。
請求文言は5つの要素を組み合わせて作る
この章で扱う主なポイント
- 要素1:対象機関・担当部署を入れて探索範囲を明確にする
- 要素2:対象期間を入れて広がりすぎを防ぐ
- 要素3:事業名・処分名・会議名などの固有名詞を入れる
- 要素4:文書類型を「通知・照会・回答・議事録・決裁文書」などで示す
- 要素5:除外したい文書があれば誤解のない範囲で明記する
請求文言は、思いついた順に書くよりも、要素を分解して組み立てる方が安定します。対象機関、期間、固有名詞、文書類型、除外事項を確認すると、広すぎず狭すぎない請求に近づきます。
どの機関や課が関係するかを確認します。
年度、処分日、会議日、契約期間を基準にします。
事業名、処分名、会議名、通知名を入れます。
通知、照会、回答、議事録、決裁文書などを示します。
要素1:対象機関・担当部署を入れて探索範囲を明確にする
対象機関や担当部署を記載すると、実施機関が探索すべき範囲を把握しやすくなります。大きな省庁や自治体では、同じテーマに複数の部署が関係することがあります。ただし、担当部署を限定しすぎると、別部署が保有している文書を取りこぼす可能性もあります。相談目的に照らして、部署を明記するのか、「○○課その他同事業を所管する部署」とするのかを検討します。
要素2:対象期間を入れて広がりすぎを防ぐ
対象期間は、請求の広がりを調整する重要な要素です。年度、処分日、会議開催日、契約期間、事業実施期間などを基準にして設定します。期間を入れないと、実施機関が過去の文書を広く探索する必要が生じることがあります。反対に、期間を短くしすぎると、準備段階や事後報告の文書を取りこぼすこともあります。期間設定の理由は、起案メモに残します。
要素3:事業名・処分名・会議名などの固有名詞を入れる
事業名、処分名、会議名、通知名、契約名などの固有名詞は、対象文書を特定する強い手がかりになります。公式ページや公表資料に掲載されている表記を確認し、できるだけ同じ表現を使います。相談者が使っている呼び方と行政側の正式名称が異なることもあります。通称と正式名称がある場合は、必要に応じて併記します。
要素4:文書類型を「通知・照会・回答・議事録・決裁文書」などで示す
文書類型を示すと、請求対象が具体化します。代表的な文書類型には、通知、照会、回答、議事録、決裁文書、会議資料、報告書、契約書類、台帳、メールなどがあります。意思決定の過程を確認したい場合は決裁文書や会議資料、外部とのやり取りを確認したい場合は照会・回答文書が候補になります。メールは、職務上作成・取得され組織的に用いられるものかを意識します。
要素5:除外したい文書があれば誤解のない範囲で明記する
対象から外したい文書がある場合は、誤解のない範囲で除外事項を明記します。すでに公表されている資料や、相談目的と関係しない問い合わせ記録を除外することで、請求範囲を整理できることがあります。もっとも、除外事項を書きすぎると必要な文書まで外れる可能性があります。除外は相談目的に照らして慎重に行い、理由も相談者と共有しておきます。
広すぎる請求を避けるための3つの絞り込み方
この章で扱う主なポイント
- 絞り込み方1:「関係する資料一式」ではなく文書類型を分けて書く
- 絞り込み方2:「過去すべて」ではなく合理的な対象期間を置く
- 絞り込み方3:「関係資料」ではなく事業・会議・処分との関係を示す
広すぎる請求を避けるには、対象文書を無理に一文でまとめないことが大切です。文書類型、期間、行政活動との関係に分けて整理すると、実施機関にも相談者にも分かりやすい請求になります。
絞り込み方1:「関係する資料一式」ではなく文書類型を分けて書く
「関係する資料一式」という表現は便利ですが、対象が広がりやすい書き方です。実施機関にとっても、どこまでの文書を含めるべきか判断しにくくなります。実務では、決裁文書、通知、照会、回答、議事録、会議資料、契約書類、報告書などに分けて書きます。必要な文書を広く含めたい場合でも、種類を分けて列挙することで請求範囲が明確になります。
絞り込み方2:「過去すべて」ではなく合理的な対象期間を置く
「過去すべて」と書くと、文書量が多くなり、補正の対象になることがあります。対象期間は、相談目的に関連する年度、処分日、契約期間、会議日、事業期間などを基準に設定します。令和5年度の事業でも、準備が令和4年度に行われていることがあります。その場合は前後の期間を含めて設定します。期間の根拠を起案メモに残しておくと、説明しやすくなります。
絞り込み方3:「関係資料」ではなく事業・会議・処分との関係を示す
「関係資料」という表現だけでは、対象文書の範囲が曖昧になりやすいです。そこで、事業、会議、処分、契約、通知など、行政活動との関係を具体的に示します。たとえば、「○○事業の委託先選定に関する審査資料」「○○会議で配布された資料および議事録」「○○処分の理由検討に関する決裁文書」のように書きます。行政活動との結びつきを示すことで、請求文言の意味が明確になります。
狭すぎる請求を避けるための3つの広げ方
この章で扱う主なポイント
- 広げ方1:正式名称が不明なときは通称・内容・作成部署を併記する
- 広げ方2:文書名だけでなく「これに準ずる文書」を検討する
- 広げ方3:添付資料で対象文書の背景を補う
狭すぎる請求を避けるには、正式名称にこだわりすぎず、対象文書を特定するための手がかりを複数置くことが大切です。通称、内容、部署、資料を組み合わせると、取り漏れを抑えやすくなります。
広げ方1:正式名称が不明なときは通称・内容・作成部署を併記する
正式名称が分からない場合でも、請求をあきらめる必要はありません。通称、文書の内容、作成部署、作成時期、関連する事業名を併記すれば、対象文書に近づけることがあります。たとえば、「○○会議に関して、令和○年○月○日に作成または取得された議事録、会議録、議事要旨その他会議内容を記録した文書」と整理できます。文書名の表記ゆれに対応できる書き方を意識します。
広げ方2:文書名だけでなく「これに準ずる文書」を検討する
特定の文書名だけを書くと、その名称の文書が存在しない場合に、目的の情報へ届きにくくなります。そこで、相談目的に応じて、同じ内容を含み得る関連文書を検討します。ただし、「これに準ずる文書」という表現は、使い方によって範囲が曖昧になります。具体的な文書類型を挙げたうえで、「同趣旨の内容を記録した文書」と補うなど、探索しやすい表現へ整えます。
広げ方3:添付資料で対象文書の背景を補う
請求書本文だけで背景を説明しきれない場合は、添付資料を使います。公表資料、通知、ウェブページの印刷物、相談者が受け取った文書などを資料番号付きで添付すると、対象文書との関係を示しやすくなります。添付資料は、主張を強めるためではなく、対象文書を特定するために使います。第三者情報を含む資料は、提出前に必要性とマスキングの要否を確認します。
添付資料は請求理由ではなく対象特定の補助として並べる
この章で扱う主なポイント
- 添付資料に入れるものは公式ページ・公表資料・相談者資料に分ける
- 資料番号を振り、請求文言との対応関係を示す
- 不要な主張・感情的な経緯説明は添付しない
- 個人情報・第三者情報が含まれる資料は提出前に確認する
添付資料は、請求書の読みやすさを高める補助資料です。資料を多く付ければよいわけではなく、対象文書の特定に役立つものを選び、番号と説明を付けて整理します。
添付資料に入れるものは公式ページ・公表資料・相談者資料に分ける
添付資料は、公式ページ、公表資料、相談者資料に分けて考えると整理しやすくなります。公式ページや公表資料は、事業名、会議名、担当部署、日付を示す根拠になります。相談者資料には、通知書、処分通知、担当部署からの文書、メール、契約関係資料などが含まれることがあります。これらは請求対象を特定する手がかりになりますが、個人情報や第三者情報が含まれる場合もあるため、提出前に内容を確認します。
資料番号を振り、請求文言との対応関係を示す
添付資料には資料番号を振り、請求文言との対応関係を示します。たとえば、「資料1の公表資料に記載された○○事業」「資料2の通知書に記載された令和○年○月○日付け処分」といった形でつなげます。対応関係が明確になると、実施機関は請求対象を把握しやすくなります。行政書士側でも、補正を受けた場合に、どの資料を根拠に範囲を設定したか説明しやすくなります。
不要な主張・感情的な経緯説明は添付しない
添付資料には、対象文書の特定に役立つ情報を中心に入れます。相談者の不満や評価を長く記載した文書を添付すると、請求対象の整理がかえって分かりにくくなることがあります。相談者の事情を丁寧に聞くことは大切ですが、請求書に反映する際は、感情的な表現ではなく、日付、機関名、担当部署、通知番号、事業名、文書名などの事実情報に置き換えます。
個人情報・第三者情報が含まれる資料は提出前に確認する
添付資料に個人情報や第三者情報が含まれる場合は、提出前に内容を確認します。氏名、住所、電話番号、メールアドレス、病歴、家族関係、取引先情報、内部情報などが含まれていることがあります。提出に必要な情報かどうかを厳密に検討し、対象特定の不利益にならない範囲で、不要な第三者の個人情報や機密情報は必ず事前にマスキング、つまり黒塗りを施します。どの部分を残すかは相談者と確認します。
開示請求書の記載例は「基本形・広め・狭め」の3段階で作る
この章で扱う主なポイント
- 基本形:文書名・部署・期間がある程度分かっている場合
- 広めの形:文書名が不明で、関連文書を取り漏れたくない場合
- 狭めの形:特定の決裁文書・通知・回答だけを求める場合
- 修正時の考え方:補正に備えて削る部分・残す部分を分ける
記載例は、一つだけ覚えるよりも、基本形、広めの形、狭めの形に分けて考えると実務で使いやすくなります。相談目的と資料の有無に応じて、請求範囲を調整します。
基本形:文書名・部署・期間がある程度分かっている場合
文書名、部署、期間がある程度分かっている場合は、基本形で整理します。この形では、対象機関、年度、事業名、文書類型が入っているため、実施機関が探索しやすくなります。最初の叩き台として使いやすい一方、実際には対象機関の様式や行政文書ファイル管理簿に合わせて調整します。
広めの形:文書名が不明で、関連文書を取り漏れたくない場合
文書名が不明な場合は、事業の流れや行政活動との関係から広めに記載します。広めに書く場合でも、期間と担当部署を入れることが大切です。文書類型を列挙することで、単なる「関係資料一式」よりも具体的な請求になります。
狭めの形:特定の決裁文書・通知・回答だけを求める場合
特定の文書だけを求める場合は、狭めの形で記載します。狭めの請求は、目的の文書が明確な場合に向いています。一方で、正式名称や作成日が違っていると、対象文書に届きにくいことがあります。必要に応じて、通知番号、処分名、関連資料を添付し、特定の精度を高めます。
修正時の考え方:補正に備えて削る部分・残す部分を分ける
補正を受けた場合に備え、請求文言のうち、削れる部分と残すべき部分を分けて考えておきます。たとえば、対象期間は短縮できるが、文書類型は残したい場合があります。起案メモには、請求目的、対象期間の根拠、広めに入れた文書類型、除外してよい文書を記録します。補正は単なる削減ではなく、対象文書を特定するための調整として捉えます。
提出前に確認すべき6つのチェックポイント
この章で扱う主なポイント
- チェック1:提出先の実施機関・宛先に誤りがないか
- チェック2:請求対象が行政文書として特定できるか
- チェック3:対象期間が広すぎないか、狭すぎないか
- チェック4:手数料・納付方法・受付方法を確認したか
- チェック5:代理人として関与する場合の書類・権限関係を確認したか
- チェック6:国案件と自治体案件の様式差・条例差を確認したか
提出前の確認では、誤字脱字だけでなく、制度、様式、提出先、手数料、代理権の確認を行います。最初の段階で整えておくほど、受任後の実務が進めやすくなります。
チェック1:提出先の実施機関・宛先に誤りがないか
提出先の実施機関と宛先は、必ず確認します。国の行政機関でも、本省、地方支分部局、外局、施設等機関などで窓口が分かれることがあります。自治体でも、首長部局、教育委員会、選挙管理委員会など実施機関が異なる場合があります。公式ページの情報公開窓口、組織図、所掌事務、行政文書ファイル管理簿を確認し、文書を保有している可能性が高い機関に提出します。
チェック2:請求対象が行政文書として特定できるか
提出前には、請求対象が行政文書として特定できる書き方になっているかを確認します。文書名だけでなく、対象期間、担当部署、事業名、文書類型が入っているかを見ると判断しやすくなります。相談者の希望が「理由を知りたい」という表現にとどまっている場合は、決裁文書、会議資料、照会・回答文書などに変換します。添付資料がある場合は、請求文言との対応関係も確認します。
チェック3:対象期間が広すぎないか、狭すぎないか
対象期間は、広すぎても狭すぎても実務上の調整が必要になります。広すぎる場合は、補正や文書量の増加につながることがあります。狭すぎる場合は、準備段階や事後対応の文書を取りこぼす可能性があります。年度、処分日、会議日、契約期間、事業実施期間を基準にし、前後の期間を含めるか検討します。期間の理由を起案メモに残すと、補正時の説明にも役立ちます。
チェック4:手数料・納付方法・受付方法を確認したか
手数料、納付方法、受付方法は、提出前に確認します。国の行政機関では、開示請求1件ごとに開示請求手数料が必要となる案内があり、例として書面による請求では300円、オンラインによる請求では200円とされる手続があります。郵送、窓口、オンラインのどれで提出できるかも確認します。自治体案件では、写しの交付費用や郵送料の扱いも含めて確認します。
チェック5:代理人として関与する場合の書類・権限関係を確認したか
行政書士が代理人として関与する場合は、代理権の範囲を確認します。委任状、本人確認書類、法人の場合の担当者確認書類など、対象機関が求める資料を確認します。情報公開請求は本人以外による提出も可能ですが、代理権の確認方法や委任状の要否は各機関の運用によります。背景に具体的な法的紛争、たとえば裁判や示談交渉などが控えている案件では、開示請求手続への関与が弁護士法72条の非弁行為の禁止に抵触しないか、慎重に個別判断します。
チェック6:国案件と自治体案件の様式差・条例差を確認したか
国案件と自治体案件では、根拠法令や様式が異なります。国の情報公開法を前提に説明できる部分もありますが、自治体では条例、施行規則、審査基準、手数料、標準処理期間が異なることがあります。自治体案件では、当該自治体の公式ページを確認します。別自治体の記載例を参考にする場合でも、最終的には提出先の条例と様式に合わせます。審査請求に関する教示は決定通知書で確認します。
提出後に起こりやすい4つの対応を先回りしておく
この章で扱う主なポイント
- 対応1:補正を求められたときは対象文書の特定要素を追加する
- 対応2:不存在・不開示・部分開示の可能性を相談者に説明しておく
- 対応3:開示決定後は開示実施方法等の申出を確認する
- 対応4:不服申立てを見据え、請求書・添付資料・やり取りを整理しておく
開示請求書を提出した後も、補正、決定通知、開示実施方法の申出、審査請求の検討などが続くことがあります。起案段階で提出後の流れを見ておくと、相談者への説明がしやすくなります。
対応1:補正を求められたときは対象文書の特定要素を追加する
補正を求められた場合は、実施機関が何を確認したいのかを整理します。対象文書が広すぎるのか、文書名が不明確なのか、提出先が違うのかによって対応が変わります。補正では、対象期間、担当部署、事業名、文書類型、添付資料の対応関係を追加することがあります。請求範囲を狭める場合でも、相談者の目的に必要な文書まで外れないよう注意します。
対応2:不存在・不開示・部分開示の可能性を相談者に説明しておく
開示請求をしても、行政文書が存在しない、全部または一部が不開示になる、部分開示になるといった結果があり得ます。起案時点で結果を約束するのではなく、制度上の可能性として穏やかに説明します。不存在の場合は、本当に作成・取得されていないのか、別名称で保有されているのか、別機関が保有しているのかを検討します。不開示や部分開示の場合は、決定通知書の理由と教示を確認します。
対応3:開示決定後は開示実施方法等の申出を確認する
開示決定がされた後は、実際にどの方法で開示を受けるかを確認します。閲覧、写しの交付、電子データでの提供など、希望する方法により手数料や手続が異なる場合があります。相談者が資料を手元に残したい場合は写しの交付、内容確認が目的であれば閲覧で足りる場合もあります。開示実施方法等申出書の様式や提出期限、手数料を確認し、目的に合う方法を整理します。
対応4:不服申立てを見据え、請求書・添付資料・やり取りを整理しておく
不開示決定、部分開示決定、不存在通知などを受けた場合、審査請求を検討することがあります。その際、最初の開示請求書、添付資料、補正のやり取り、受付日、決定通知書、教示の記載が重要な資料になります。審査請求が関係する場合は、一般論で断定せず、必ず情報公開法、自治体条例、および決定通知書に記載された教示を確認します。国案件では、審査請求の過程で情報公開・個人情報保護審査会等への諮問が行われる仕組みを押さえます。
開示請求書で避けるべき5つのNG例
この章で扱う主なポイント
- NG例1:「関係する資料一式」とだけ書く
- NG例2:相談者の不満や評価を請求文言に入れすぎる
- NG例3:対象期間・部署・事業名をまったく入れない
- NG例4:公式様式を確認せず、別機関のひな形を流用する
- NG例5:自治体条例や個別法の差異を確認せずに断定する
開示請求書では、避けたい書き方を知っておくと起案の精度が上がります。ここでは、実務で見直しが必要になりやすい表現を、整え方と合わせて確認します。
| 見直したい表現 | 整え方 |
|---|---|
| 関係する資料一式 | 期間、部署、事業名、文書類型を加えます。 |
| 不満や評価を長く書く | 日付、通知番号、担当部署、文書名などの事実情報に置き換えます。 |
| 対象期間がない | 年度、会議日、処分日、契約期間を基準にします。 |
| 別機関のひな形を流用 | 対象機関の公式様式と記載要領に合わせます。 |
| 条例差・個別法差を見ない | 法令、条例、教示、公式資料で確認します。 |
NG例1:「関係する資料一式」とだけ書く
「関係する資料一式」とだけ書くと、対象文書の範囲が広く、実施機関が探索しにくい場合があります。相談者の目的が広い場合でも、文書類型や期間を入れることで整理できます。たとえば、「○○事業に関する資料一式」ではなく、「令和○年度に○○課が作成または取得した、○○事業の実施方針、委託先選定、契約締結に関する決裁文書、会議資料、照会・回答文書」と記載します。
NG例2:相談者の不満や評価を請求文言に入れすぎる
相談者の不満や評価を請求文言に入れすぎると、対象文書の特定から離れてしまいます。たとえば、「不当な対応の理由が分かる資料」と書くよりも、「令和○年○月○日付け通知に関する決裁文書および理由検討に関する資料」と書く方が明確です。相談者の気持ちを受け止めることは大切ですが、請求書では事実情報に変換します。
NG例3:対象期間・部署・事業名をまったく入れない
対象期間、部署、事業名が入っていない請求は、文書の探索範囲が不明確になりやすいです。起案時には、少なくとも期間、担当部署、事業名のうち、分かるものを入れます。すべてが分からない場合でも、相談者の資料や公式ページから手がかりを探します。行政文書ファイル管理簿を使うと、文書名や担当課の候補を把握しやすくなります。
NG例4:公式様式を確認せず、別機関のひな形を流用する
別機関のひな形をそのまま流用すると、提出先、手数料、代理人欄、押印、添付書類、開示方法の記載が合わないことがあります。開示請求書を作成するときは、対象機関の公式様式と記載要領を確認します。自治体案件では、当該自治体の条例、規則、様式を確認します。ひな形は参考にとどめ、最終的な書面は対象機関の公式情報に合わせます。
NG例5:自治体条例や個別法の差異を確認せずに断定する
情報公開請求では、国の情報公開法だけで整理できる案件もあれば、自治体条例や個別法の確認が必要な案件もあります。特に、審査請求や行政不服審査法に関する教示が関係する場面では、一般論だけで判断しないことが重要です。相談者には、現時点で確認できる内容と、追加で原典確認が必要な内容を分けて説明します。決定通知書を受け取った後は、教示の記載を確認します。
まとめ:開示請求書は「伝わる請求範囲」を作る実務である
情報開示請求書は、きれいな文章を作るための書面ではなく、実施機関が対象文書を識別できるように請求範囲を伝える書面です。最後に、実務で押さえたい要点を整理します。
書面の完成度は、文章の巧拙ではなく対象特定の精度で決まる
開示請求書の完成度は、表現の巧さよりも、対象文書を特定できるかどうかで決まります。相談者の話をそのまま書くのではなく、行政文書の名称、期間、部署、事業名、文書類型に置き換えることが大切です。
判断・資料・書き方・提出後を一連の流れで確認する
情報開示請求の実務は、請求書の記入だけで完結しません。求めているものが行政文書かを判断し、公式資料を確認し、請求文言を作り、提出後の補正や開示実施方法まで見通す必要があります。
迷ったときは公式様式・審査基準・窓口案内に戻る
書き方に迷ったときは、公式様式、記載例、審査基準、標準処理期間、手数料案内、窓口案内に戻ります。自治体案件では、当該自治体の条例、規則、様式を確認します。
- 情報開示請求書は、行政文書を特定するための書面です。
- 請求文言は、対象機関、期間、事業名、文書類型、除外事項を組み合わせて作ります。
- 広すぎる請求は、文書類型や期間を入れて整理します。
- 狭すぎる請求は、通称、内容、作成部署、添付資料で補います。
- 迷ったときは、法令、条例、公式様式、審査基準、窓口案内、決定通知書の教示を確認します。
相談内容がまとまっていなくても大丈夫です。まずは現在の状況を伺い、必要な手続きや確認した方がよい内容を一緒に整理します。お手元に資料があれば確認がスムーズですが、資料がそろっていない段階でも相談できます。